唐突だが、今回で連載が終了だ。そもそも本連載は映像などの持論紹介がテーマだった。で、担当編集者と話を詰めるうち、「いっそのことその被写体制作から始めるか」となり、オリジナルキャラ制作に勤しんだ。が、終わりはある日突然やって…とにかくだ。完成させつつ細かい手法論には入れないものの、私の基本的な行動理念の話を最後は紹介できたらと思う。
とりあえず完成…
残すところは手と足のクパチーノ君(仮)だが、樹脂粘土のモデナでサッと形にした。もっと商品っぽくするならば、例えばボディをつくった3Dプリントを利用するなど、最近はいろいろな方法論がある。アニメーションをさせたいなら、手首のところで取り替えられるようにしたり、ワイヤーアーマチュアで手をつくり、ウレタンなどで肉付けをし、可動できる構造にすることもできる。今回はひとまず形にするために固定の形を手で造形することにした。
本当かどうかは知らないが、最近の若い世代に何かオリジナルのものをつくるように指示すると、例えばフィギュアだと「オリジナル フィギュア」と検索をして、結果が出なかったらできないと答えるそうだ。まあ、この話は大げさなバズするためのネタかもしれないが、料理でもなんでも、検索して見つかったレシピどおりにつくるのは勉強のためにはいいが、それを自分好みに調整することは大事だと思う。引き出しが増えてくると、アイディアの精度も上がっていき、完成度も比例して高くなる。検索するのはテスト前のノートを見ると一緒で、自分のものにするにはまずはやってみて、そしてそれを磨き続ける努力をしないとダメなのだ。
夢を夢として終わらせない
誰しも「やってみたい」とつぶやくと思うが、本当にそれをやる人は案外少ない。逆にいえば、やればその少ない「やった組」に入る。それだけでも達成感はあるし、見られ方も、内部的な自信も変わってくる。「お金持ちになりたい」でもいいので、具体的にじゃあどうしたらいいのかをしっかり考え、実行していくことの繰り返しで、一度しかない人生を諦めずに、拡充して、そして素晴らしいコンテンツを生み出してほしい。 (了)
さまざまな材質をバランスよく組み合わせた面白さ
【サブ】オリジナルフィギュア、まずは一旦の完成
ディティールまではつくり込めなかったが、手と足が一旦の完成。いわゆる「ろくろ」ポーズをさせ、何かを熱心に伝えようとしている感じにした。足がグレーなのは、本当は灰色のニューバ◯ンス風のスニーカーとしてパーツを使いたかったが、とりあえず大まかなイメージとしてクツを形どって灰色に塗った。かなり適当につくってきたフィギュアだったが、それなりの感じに仕上がったのではないだろうか(ダメ?)。これをブラッシュアップしたり、プロトタイプとして第2号を制作したら、今回やってみて気づいた問題点などをもっと上手に処理できるはず。3Dプリントの型物部分も雑ではあるが、もっと時間をかければ商品に見えるレベルになるはずだし、ジーンズやニットなどのディティールが効いて、わりと成り立つと思う。正直、ちょっと針金が硬いので、ストップモーションは厳しめな感じだったり、課題はいろいろあるが、iPhone 4Sを埋め込んだ顔代わりのモニタ部分もハイテクな感じだし、結構楽しめた。
【サブ】ボディの土台と同じMODENA粘土で手を制作
手はバランスを考え、ニッパーで余分な針金を切り落とし、粘土をこねて手の形にする。指は葉巻状にしてから並べ、手の部分を作って合体していく。キャラクター感を出すために、あえて5本ではなく、太めの指で4本にした。かつては手が激しく動いたときに、指の数が増えて見えるという理屈で4本のキャラクターが多かったのだが、最近のフレームレートや解像度だとしっかり見えるので、どちらかといえばデザイン的な判断になる。左手を先につくったので、右手は左手と同じサイズになるように見ながら調整。写真だとちょっと飛んでしまって白く見えるが、薄く肌色に塗ってある。こだわるとしたら、それこそ指の爪や毛を植えるくらいのことをやるとまた不思議なディティールになるが、逆に気持ち悪くもなるCGでつくったキャラもそうだが、リアル感とキャラ感のバランスで、作家性みたいなのが生まれると思うので、そこはいろいろ試行錯誤して落としどころを見つけよう。
【サブ】とにかく、好きなことを実現していこう
数年前に、縁があり米・20世紀FOX社と「ウルヴァリン: SAMURAI」という映画の空撮パートを担当させていただいた。それまで(今でもだが)WEBサイトやアプリ、グラフィックデザインなどがメインの仕事で、映像もやってはいたが、報告した際に、思いのほか周りの反響が大きかった。なぜハリウッド映画を?なぜ空撮を?など幾重にも不思議だったようだ。確かにそう見えるとは思うが、そのさらに数年前から「ヘリに乗りたい」「空撮の写真撮りたい」など自分の中での欲求が生まれ、早速航空写真を撮っている友人に「ヘリ乗せて」などとすぐに行動していた結果、何回かの商業フライトに同乗させてもらったり、重ねるうちに、スチール空撮もするようになった。とにかく、諦めずにちょっとでも可能性のある道筋を走って行けば、そしてそれが「普通の人が考えない道筋」だったら、案外早い段階でなんでも実現できるはず。…などと本編は、総括として無理やり「Think different.」「やりたいことをやろう」というような感じでまとめようとしてます。それを受けてのフィギュアを、雑ですが完成させつつ、最後にウルヴァリンの話を入れてます…。
【サブの補足】
金沢に移住して1カ月ちょっとになるが、すでに3回東京出張が発生。ってことは、家族と違い僕だけまだ1カ月経っていないってこと? 金沢は過ごしやすくて気に入ってる。これから寒いけれど、これからはもっと美味しくなる季節。
【サブの補足】
2015年年内は、新規のプロジェクションマッピング、大手アプリいくつか、大手プロモーションいくつか、地域振興向けプロジェクトなど、ますます何やってるんだかわからない弊社だけど、引き続きやりたいことをやっていくよ! 短い間でしたけど、ありがとうございました!
佐分利 仁(さぶり・じん/サブリン)
企画/グラフィック/映像/WEB/アプリ開発/音楽など幅広く活躍。制作会社「メタルレッド」代表取締役クリエイティブディレクター。ハリウッド映画「ウルヴァリン:SAMURAI」の空撮などを手がける。【URL】http://metalred.com/