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第31話 ツナゲルチカラ、ツナガルチカラ

著者: 上野美香

第31話 ツナゲルチカラ、ツナガルチカラ

テクノロジーが大好きです。毎日流れてくる新しいハードウェアやアプリケーション、サービスの情報。それによって実現する未来を想像するとワクワクします。中でもインターネットとITは、これまでの私の人生に最大の影響を与えました。その可能性は無限大です。

人に連絡をとる、調べ物をする、SNSで友だちとコミュニケーションする、音楽を聴き映画を見る、さまざまなことがインターネット上で行われる現代、ネットがない生活はほぼ考えられないというところまできています。誰でも簡単に使えるようになったインターネットとIT。自分の趣味や好きなことをのびのびと情報発信しながら注目を浴び、仕事や日常を変える人もいる一方で、ただ情報を受け取っているだけで日々何ら変化はないという人もいます。この違いはなんでしょうか。自分自身の体験からも思うことなのですが、大事なのは「つなげる力」と「つながる力」だと思います。

私もボランティアで参加していた「TEDxTokyo」というイベントでは、個人の素晴らしいアイデアや発想を世の中に広めるために、イベントの様子を動画で公開するなど情報発信することで、世界中に「TEDx」のコミュニティを作ることに成功しました。ソーシャルメディアを媒体に、「TEDx」に興味がある多くの人たちにどんどんつながることができたのです。

登山家の栗城史多さんは、世界最高峰のエベレストに挑戦しながら、自らカメラや中継機を背負い、その様子をネットで配信することで、多くの人たちの支持を得ています。有名人だけではありません。「ツイキャス」では高校生が数千人の視聴者(ファン)を持ちながら、日常の発信とネット上のコミュニティを形成しています。

自分が興味のあることや好きなことを継続的に情報発信することで、趣味趣向の似た人にそれが届き、結果としてそれまで会ったことのない人につながっていくこと。インターネット以前と以後を比べると、こうしたことが格段に実現しやすい環境になっていると感じます。

また、つながるのは人と人だけではありません。プログラムコードを公開して、その業界やある種類のソフトウェア/ハードウェアの発展と普及を後押しするために行う「オープンソース」。自分の作ったものをコミュニティや社会に還元し、その発展に貢献するという流れが盛んになってきています。テスラモーターズは自動車の心臓部ともいえる特許を公開し、電気自動車の普及に大きな貢献をしています。極めて美しい筋電義手を開発するイクシー(Exiii)は、デザインファイルとソースコードをオープンにし、誰でも3Dプリンタで義手を作って改良できるようにしました。9月に日本でサービス開始したばかりの動画配信サービス大手のネットフリックス(Netflix)も、動画ストリーミングに関するオープンソースの貢献はかなりの数だそうです。

こうした動きも、自ら積極的にコミュニティに関わっていくということに加え、コードを受け取った人たちが改良しながらさらにいいものを生み出していくという点で、人同士、人とコード(や生み出されるモノ)を「つなげる力」だと思います。

マサチューセッツ工科大学メディアラボ所長の伊藤穰一さんは、つなげるプロ。彼が今注目しているバイオテクノロジー分野はものすごいスピードで技術進化していて、いずれストリートバイオ(自宅など研究室以外で行われるバイオ関係の実験や開発)で高校生がクローンを作り出す時代が来るそうです。彼はそうした革新が起きている分野で「世界中のユニークでヘンな人」を集め、異能な人同士をぶつけ合わせています。

こうした「つなげる」試みは、特別な人に限ったことではなく、興味ある分野やコミュニティの中で皆さんにもできることではないでしょうか。そして、この誰かと誰か、誰かと何かを「つなげる力」と、コミュニティあるいは社会に貢献しようとする「つながる力」は、自分自身の人生を変える可能性を秘めています。インターネットや最新のテクノロジーは、その力を最大限に発揮するための強力な武器なのです。

Mika Ueno

ネット・IT系企業のマーケティング、広報、IRに関する業務支援を行うフリーランサー。Twitter Japan、音楽家坂本龍一氏の「skmtSocial project」を経て、現在Evernote日本法人にてマーケティングを担当。TED×Tokyoにも関わる。