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ハードウェアの構造、仕組みを知ろう!

第93回 キーボード(1/2)

著者: 吉田雷

第93回 キーボード(1/2)

登場時から変わらぬ姿 だがその進歩は止まらない

キーボードは、ユーザの文字入力や操作のコマンド(命令)をMac本体に伝えるための入力デバイスです。機械としての完成度は高く、内部構造はMac登場以来ほとんど変化ありません。時代によって接続方法がUSBになったり、ブルートゥースなどのワイヤレス方式が追加されたり、環境光に合わせてキーのバックライトを点灯させるといった機能が増えましたが、その基本となる役割は共通です。

また、iPhoneやiPadなどタッチインターフェイスを備えた機器ではソフトウェアで表示されるキーボードで文字入力しますが、この英語キー配列自体はタイプライター時代から大きく変化していません。

ほかにも手書きのタッチペンやシリ(Siri)による音声入力など、さまざまな入力方法は存在しますが、物理的なキーを備えたキーボードは文字入力の確実性やコマンド操作の効率性に優れていることから、現在もすべてのMacで標準採用されています。機器同士の互換性も高く、サードパーティ製品はもちろんウィンドウズ用のキーボードもそのまま利用できます。

とはいえ、各言語向けのキー配列やOS独自の特殊なキー配置など、細かなバリエーションは非常に多くあります。また、人間が直接触れて操作するデバイスのため、それぞれのユーザの好みやこだわりがもっとも現れやすい機器でもあります。こうしたキーボードの特徴やキー配置のカスタマイズも含め、総合的な視点からキーボードのメカニズムを解説します。

【アップル知りたいキーワード 】

Mac標準の「キーボード」にはどんな種類があるの?

デスクトップMacやノートMacで標準搭載されるキーボードは、キー配列や接続方法が異なる複数のモデルがあります。まずはその基本的なバリエーションから見てみましょう。

 

MacBookに搭載される新キーボード

MacBookに搭載されるキーボードはMacのキーボードとしては久しぶりの新設計となっています。基本的な構造はこれまでのキーボードと大きな差はありませんが、薄型ボディに合わせてキーストロークが大変浅くなっているため、操作感はこれまでと異なります。

 

キータッチが変わった!

現行のアップル製キーボードはMacBookに採用されたキーボードとキータッチが異なります。より薄型となったMacBookに合わせ、独立したキートップを内部で支える「パンタグラフ」機構を改良し、キーの端を押しても正しく認識されやすくなっています。

 

接続方法は有線と無線

Macのキーボードには、MacBookシリーズに標準搭載されたキーボードのほかに、USBでの有線接続モデルとブルートゥースによるワイヤレス接続モデルがあります。ブルートゥース接続の場合、現行モデルではキーボードに乾電池を搭載し電源としています。

 

数字入力に便利なテンキー

USB接続の「アップル・キーボード」(【価格】税別5800円)は、数字と小数点、四則演算記号を独立させた「テンキー」が搭載されています。キーボードのサイズは大きくなりますが、経理作業など数字入力を頻繁に行う人には便利なモデルです。テンキー部分だけが独立したサードパーティ製品もあります。

【ハードウェア図鑑】キーボードと文字入力の仕組み

Macのキーボードの基本的な構造は全モデルほぼ共通です。指で押し下げたキーはどのようにデータとしてMacに伝わり、記号や文字を判断しているのかといった仕組みの基本を確認します。

 

キーボードの構造

キーボードは多数のキー(スイッチ)で構成されています。キートップの下にはキーごとにゴム製のカップ(ラバーカップ)があり、キーを押すことでフィルム基板上の電極同士を接触させます。これにより電気信号を発生させ、押されたキーの種類をキーボードエンコーダが判定しています。キートップとラバーカップの間にはパンタグラフという支持構造があり、キーの端を押しても、キー全体が沈むよう工夫されています。現行のアップル・ワイヤレスキーボードは電池から電源を供給しています。

 

押したキーを判断する仕組み

キーボード内部の各キー(スイッチ)は基板上で格子状に接続されています。キーボードエンコーダは格子横向きの「入力ライン」に電流を流します。その延長線上にあるキー(図の例では「A」)が押されたときに、縦向きの「出力ライン」と回路がつながります。電流がエンコーダに到達することで(図の例では「①」)、「A」というキーが押されたと判断します。押されたキー情報はエンコーダ内で処理し、「キースキャンコード」をUSBやブルートゥース経由でMacに送信しています。

 

押されたキーの内容を認識する仕組み

キースキャンコードを実際に解釈し、押されたキーの内容を認識するのはMacの役割です。「AppleKeyboardLayouts.bundle」というファイルが受け取ったスキャンコードをキーボード配列ごとに解釈するための辞書になります。たとえば、JIS配列でキーコード「0x9」が送られたときには[v]キーが押されたと認識します。[コマンド]キーなどには「装飾コード」があり、「0x100108」+「0x9」というキーコードがセットで送られたときには[コマンド]キー+[v]キーが押されたと認識されます。

【もっと教えて】

iPad用として販売されているブルートゥース接続のキーボードをMacに接続して利用できますが、「ホーム」ボタンなどiPad固有の機能は使えません。また、アップル・ワイヤレス・キーボードはiPadやiPhone、アップルTVにブルートゥースで接続して使用できます。

【もっと教えて】

キーボード最上部にある[F1]~[F12]キーはデフォルト設定では[Fn]キーと同時押しの際にキーコードを送信しています。キー単体ではディスプレイの輝度やボリュームなどの特殊機能を呼び出します。なお[電源]キーはキーコードを送信せず、直接Macの電源管理機能にアクセスしています。