ナミビア北部に住むヒンバ族は、今でも伝統的な生活をし、女性たちは赤土とバターを全身に塗って半裸で生活している。アフリカを旅し始めていた僕らはその話を聞き、ぜひとも彼女たちに会ってみたいと1日半かけて車で移動した。
目的の街に入るなり、彼女たちの姿が目に飛び込んできた。腰巻きを着け、全身を赤く塗っている。そして頭は、泥で固めたドレッドヘア。街には普通の格好をした人も大勢いるが、ヒンバ族の女性たちがたくさん歩き回るその様子は迫力があった。その姿を思わずじっくり見てしまう。格好良い。
そんな女性たちの手元が気になった。皆、赤字で「OK」と書かれたビニール袋を持っている。彼女たちの来るほうへ歩いてみると、その先に「OK」の看板が掲げられた巨大なスーパーマーケットが現れた。店内には、行儀よくレジに並ぶヒンバの女性たち。入り口では赤ちゃんを背負った半裸の赤いオバさんが、OKビニール袋を下げて携帯電話に向かって話している。彼女たちの買うものを覗いてみると、そこにあったのは缶詰やインスタントラーメンだ。同じものを僕たちも買おうとしていたので、思わず笑ってしまった。
どんな辺鄙な場所に行っても、このヒンバ族と同じように現代の文明を感じた。やっぱり人は便利が好きだ。スピードの差はあれど、世界は同じ方向に進んでいる。旅をしていると、そんなことをよく思う。
鈴木陵生(Ryosei Suzuki)
映像作家。2011年より夫婦で世界一周を始める。旅の様子を発信する映像サイト「旅する鈴木」が、平成26年度文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に。2014年11月、DVD&Blu-ray「World TimeLapse」(KADOKAWA)をリリース。【URL】 http://ryoseisuzuki.com
【PS】
女性の髪型やファッションばかりが注目されるヒンバ族。では男性はどうなのかというと、普通でした。「オレはヒンバだ」と声をかけてきたニイちゃんは、イカしたTシャツに短パンでお土産を売りさばいて去って行きました。