喜び、怒り、悲しみ、楽しみ。アップルの年次開発者会議「WWDC 2013」での発表を受けて、今皆さんはどんな気持ちでしょうか。基調講演の映像はすでにアップルのWEBサイトで公開されていますし、発表内容の詳細に関しては多くのメディアが報じていますので割愛しますが、OS Xマーベリック、iOS 7、新MacBookエア、新Macプロなど盛り沢山の内容に、喜びや楽しみを感じている人が多いのではないでしょうか。
かくいう編集部も、ここ半年新製品らしきものが発表されていなかっただけにほっと胸を撫で下ろすと同時に「喜」と「楽」を感じていますが、さてさて、これだけのネタをいかに次回8月号で皆さんにお届けするか…。新しいMacプロくらいのインパクトが欲しい? 目下それを目指して、奮闘努力している最中です。
話はやや逸れますが、海外におけるWWDC 2013の報道では、フィル・シラー上級副社長がMacプロお披露目後に放った一言が、多くの記事の見出しを飾っています。
“Can’t innovate anymore, my ass.”
簡単に訳せば、「これ以上、革新的なものは作れないぜ!」や「こんな革新的なものはないだろう!」になるのでしょうが、”my ass”(”ass”という上品でない言葉)を付け加えたあたりが、会場の爆笑を誘うと同時に、アップルのイノベーションの力を再度世に強く知らしめるうえで力強いものでした。もちろん、超訳することもなく、その意味は「(おまえらに)こんな革新的なものが作れるのか」という他社(グーグル? マイクロソフト?)への挑発と紙一重なわけです。実際に新Macプロのあのフォルムやエンジニアリングは革新的と呼ぶに相応しいものですし、「アップルにはもう革新が望めないのでは」という根拠なき危惧を払拭することにも見事に成功したと思います。価格をまだ発表しないところも、アップルのうまさですね。
ただ個人的には、新製品の話題よりも、基調講演の冒頭と末尾に流されたビデオのほうが印象的でした。特に、”We start to confuse convenience with joy, abundance with choice.”という一文が。アップルは「人が『便利さ』と『喜び』、『豊富さ』と『選択』を混同し始めている」といっている、というのが私の理解です(ちなみに、confuse A with Bは、AをBと混同すると習った覚えがあります)。例えば、iPhoneは「便利」だから使うのでしょうか、それとも「喜び」を与えてくれるから使うのでしょうか。便利な機能が盛り沢山のスマートフォンのほうが本当にいいのでしょうか?
また、形や色が豊富なスマートフォンはたくさんありますが、そこから選ぶことが本当に「自由で正しい選択」なのでしょうか? そんな問いをアップルは私たちに投げかけているのだと思います。
「豊富さ」と「選択」に関しては、個人的に居酒屋でメニューを選ぶときや、ショップで洋服を買うときなどに感じていることで妙に納得していたりするのですが、このまま続けるとフィロソフィカルな面倒な話になりそうなので、続きは次号特集にゆずることにします。ほかにも、「Macプロは激速らしい」とか、「編集部に届いたAirMacエクストリーム/タイムカプセルがすごい」とか、「AirMacエクスプレスはac対応じゃないの?」とか書きたいことはいろいろありますが、このあたりも次号へのフックとさせてください。