ヨーロッパの中央に位置するチェコ共和国に、非公認のApple Museumがある。旧共産圏から民主国家へと進んだ歴史を持つ同国は、「自由」な文化の象徴としてポップカルチャーを好み、Appleやスティーブ・ジョブズもそうしたシンボルとして受け取られているようだった。
“非公認”ながら本格派
国際列車でプラハ中央駅に到着したのは深夜23時。オレンジ色の街灯に照らされた旧市街の石畳を進むと、突如アップルロゴが飾られた建物が現れる。ロゴはよく見ると6色のリンゴであり、ここがアップルストアや販売店ではないことに気づく。これが世界最大級の「私設」アップル博物館(Apple Museum Prague)との初遭遇であった。
翌朝改めて赴くと、この博物館は観光客向けの“キッチュ”なものではなく、ポップカルチャーへの啓蒙とリスペクトを伝えるための本格的な文化施設であることが判明した。ゲートをくぐると1976年のアップル創業からスティーブ・ジョブズが亡くなる2012年までの歴史が壁一面のパネルに掲げられ、稀代のイノベーターの功績が称えられている。傍らにスティーブ・ウォズニアックが創業資金のために売却したHPのプログラム電卓「HP−65」が展示されているのも、心憎い演出だ。
また、窓際にはジョブズが乗っていたオートバイ「BMW R60/2」があり、基調講演でお馴染みのイッセイミヤケのハイネックやニューバランス「992」も展示されていた。さらに、初代のApple Iが今にも動かせそうな状態でケース内に鎮座している。
文化保存と未来への視座
階段を上がったフロアでは、いよいよアップルプロダクトの歴史を一望できる。初代Macintoshやその後の一体型Macの数々、モバイルデバイスの系譜も展示され、自分が過去に使っていた製品を探してみるのも楽しい。NewtonなどのPDAや教育市場向けのeMateなど、Mac以外のマニアックなアイテムにも唸らされる。
また、現代に続く歴代のiPodやiPhoneも並び、決して過去だけを懐かしむのではなく、ジョブズの足跡を通じてこれからのアップルに目を向けた展示であることに勇気づけられた。
米国とは程遠い場所ながら、どこにも負けない“アップル愛”を感じられるこの博物館。もしプラハを訪れる機会があれば、必ず立ち寄ってほしいスポットだ。
Apple Museumの雰囲気は、WEBサイトから69チェコ・コルナ(約334円)でバーチャル体験できる。【URL】http://www.applemuseum.com/en/