グラフィックデザイナーという位置から、さまざまなアーティストの音楽に携わらせてもらっているが、僕は十代の頃、音楽を挫折してグラフィックデザイナーになった過去がある。だからか自分が関わっているアーティストに対して、自然と若かりし頃の自分が成し遂げたかった姿を重ねてしまう部分もあり、それが音楽に関わる仕事をするうえでさまざまな気持ちや意識をブーストさせデザインに良い影響を与えてくれている。
そんな音楽に夢中だった頃の自分が愛用していたのが、アナログシンセサイザーの「MS-20」だった。
90年代後半、デジタル音源のシンセが広く普及し当たり前の時代だったが、テクノ・ハウス等のクラブミュージックでは太い音圧とツマミやパッチで直感的な操作ができるアナログシンセが再評価されビンテージ楽器として価値が高騰していた。当時高校生だった自分にはとても手が出せるような代物ではなかったが、通っていた学校の吹奏楽部が倉庫を整理していた際に古い楽器として処分しようとしていたところを運命的に発見し、譲ってもらったのだった。