最近、友人が寮を出てアパート探しを始めました。アメリカの主要不動産サイト「Trulia」や「Zillow」などで候補を探してみたものの、とにかく高い。家賃が高騰するロサンゼルスの場合、海沿いより人気は劣る内陸部のアパートでも家賃は30万円~です。
結局、家賃がまだ安いエリアにアパートを見つけ、ルームメイト数名と暮らし始めました。このような“co-living”(共同生活)は、昔から特に学生などを中心に人気。住宅危機(住宅数の不足や家賃高騰)によって、今後このトレンドはますます強まることが予測されています。
家賃がピンキリの日本では、シェアハウスなどの共同生活は金銭的理由もさることながら、ソーシャルな側面を重視したライフスタイルのひとつとして選ばれることも。一方、アメリカの場合はより切実で、金銭的理由が圧倒的に多い印象。成人人口の約32%(または7900万人)が、恋愛関係や身内ではない他人とともに生活しているそうです。
従来、そして未だにアパートやルームメイト探しは、オンライン三行広告の「クレッグズリスト」が多用されていますが、中には詐欺などもあり、相手を信用するかの判断は利用者に委ねられてきました。そこで登場したのが、信頼性や透明性に重きを置いた代替サービスです。
“「Tinder」 (表示された異性を左右にスワイプすることで手軽にデートできる人気アプリ)の不動産版”と評されることもある「Roomi」の創業は2013年。2018年8月時点のユーザ数は240万人で、アパート掲載件数は50万件でした。起ち上げから5年間で50万件のリスティングは多いとは言えません。
でも、これこそ、Roomiが入居希望者に対して持つ魅力です。安全性と透明性を基盤とすることで、賃貸人がアパートを掲載するハードルが高く、信頼できる選び抜かれたリスティングだけが掲載されます。同社のCEOであるアジェイ・ヤーダブさんは、ユーザに優れた利用体験を提供するために「地球で一番信頼できるコミュニティをつくりたい」とコメントしています。
Roomiに部屋を掲載するには、借用書、十分な枚数の写真、アンケート回答、プロフィール、本人写真などの提供が必要。審査が厳しいため、掲載が申請されたアパートのうち、約20%は不合格に。入居希望者は、予算や希望入居日といった基本情報に加えて、きれい好き・早起き・社交的といったライフスタイルにまつわる項目に回答。これらをもとに、Roomiのアルゴリズムが部屋をマッチングしてくれます。
希望すれば、追加15ドルで第三者機関を通したバックグラウンドチェック(身元調査)が可能。そのほかに、アプリ内メッセージや支払い機能も。毎月ルームメイトに家賃を催促することなく、アプリ内で自動支払いができます。サービスの基本利用料は無料ですが、アプリ内の決済には手数料が発生します。
アメリカとカナダのほか、ロンドンとバルセロナを含む世界20都市でサービス展開するRoomi。国外の類似サービスを買収することで、着々とグローバル化しています。
「Bedvetter」や「Common」、「Nesterly」などは、どれもアメリカ国内のRoomiの類似サービス。マサチューセッツ工科大学の卒業生が起ち上げたボストン発のNesterlyは、家に空き部屋がある高齢者と地元の学生をマッチング。高齢者に収入源を提供し、家主の生活を手伝う(買い物や犬の散歩等)ことで学生は安い家賃で暮らすことができます。
こうしたサービスが、住居にまつわる切実な課題に対して適確に応えることで、今後も“co-living”が加速しそうです。
Yukari Mitsuhashi
米国LA在住のライター。ITベンチャーを経て2010年に独立し、国内外のIT企業を取材する。ニューズウィーク日本版やIT系メディアなどで執筆。映画「ソーシャル・ネットワーク」の字幕監修にも携わる。【URL】http://www.techdoll.jp