新しい体験を再び
新iPadプロが発表されたとき、多くのアップルファンが“iPadシリーズ第2章の幕開け”を感じたのではないだろうか。iPhone Xシリーズのようなオールスクリーンを採用し、ホームボタンを廃止。側面は、初代iPadから続いていた“なだらか”なカーブから、角ばったデザインへと変わった。iPhone 4/5シリーズを彷彿とさせるシャープなデザインだが、古臭さは感じられず、むしろスタイリッシュな印象すら与える。「変えていないのは名前だけ」というアップルの紹介文に誰もが納得するアップデートだろう。
誤解を恐れずに言うと、旧モデルと比べてアウトプットできることは大きく変わってはいない。コンテンツを楽しんだり、作業を効率化したり、イラストを描いたりするなら、以前のiPadプロでも十分こなせるスペックを持ち合わせている。それでも、このデザイン変更が与えるインパクトは大きい。今までのデバイスでやってきたことでも、まったく新しい体験のように感じる。まるでiPadを初めて手にしたときのような気分を再度味わえるのである。
オールスクリーンとなったことで、コンテンツへの没入感も大きくなった。アップルはARの普及に取り組んでおり、新iPadプロもイマーシブ(没入型)メディアの重要なアウトプット先に位置づけていることがわかる。新時代にふさわしい、新時代のためのデバイスだ。
iPad Proの各部名称
FRONT
なんといってもホームボタンがなくなり、オールスクリーンになったことに尽きるだろう。ディスプレイサイズは12.9インチと11インチというラインアップだ。
RIGHT
旧モデルと同様の音量上下ボタンに加えて、Apple Pencilを付けて充電させるための磁気コネクタが中央に搭載された。また、Wi-Fi+Cellularモデルであれば、下部にnano-SIMトレイがある。
LEFT
左側面にはマイクが1つ備わっている。
BACK
背面にはカメラとSmartConnectorを搭載している。後者は、前モデルでは側面に付いており、新モデルはSmart Keyboard Folioに合わせて位置が移動した形だ。
TOP
上面には電源ボタン、2つのスピーカ、マイクを備える。旧モデルにあったイヤフォンジャックは廃止された。
BOTTOM
底面には2つのスピーカとUSB-C端子が配置されている。これまで採用してきたLightning端子はついに廃止された。
同梱物
(1)USB-C充電ケーブル(1m)
(2)USB-C電源アダプタ(18W)
(3)マニュアル
※Wi-Fi+Cellularモデルには「SIMピン」も搭載。
細部までこだわったディティール
デザインは旧モデルと比べてシャープな印象を受けるが、4つのコーナーは丸みを帯びたなめらかな仕上げだ。そのコーナーに合わせ、Liquid Retinaディスプレイのエッジが隅々に広がる。
ホームボタンがなく、狭額縁のオールスクリーン。それでいて、画面内に「ノッチ(切り欠き)」はない。Appleが言う“1枚の魔法のガラス”のような、美しい見た目となった。
オールスクリーンによって上下のベゼル幅が狭くなったが、左右の幅はほかのモデルと大差はない。片手で持ったときでも、持ち手で画面が隠れることは少ないだろう。
コンパクトな新モデル
iPadは世代を更新するごとにボディサイズが細かく変化している。新モデルでは、オールスクリーンとなったため、ディスプレイサイズでの単純比較もできなくなった。改めて現行モデルのサイズを整理しよう。
まず、最大のディスプレイサイズとなる12・9インチモデルは、2017年の同モデルと比べて、ボディサイズがひと回り以上小さくなっている。重さもWi│Fiモデルが46グラム、セルラーモデルでは59グラムも軽量化した。最初はディスプレイの大きさに圧倒されるが、手に持つと軽さを感じる。オールスクリーンの見た目も相まって、iPadというよりMacBookのディスプレイ部分を持っているような感覚だ。
ややこしいのは11インチモデルだ。2017年の10・5インチモデルと比べて、ディスプレイサイズは大きくなり、横幅も4.4ミリ増えたが、高さはわずかに減った。Wi│Fiモデルの重さはほぼ変わらないが、セルラーモデルは9グラム軽くなった。ただ、数字の細かな差異はあるものの、実際に持ち比べるとボディサイズの違いは誤差の範囲内だ。10・5インチモデルユーザなら、サイズの不満なく移行できるはずだ。
9.7インチのiPad(第6世代)と比較すると、11インチモデルはさすがに一回り大きい。しかし、Wi│Fiモデルの重さはほぼ変わらないうえ、新モデルはiPad史上最薄の5.9ミリ。むしろ11インチモデルのほうが1.6ミリもスリムだ。新モデルは、ディスプレイサイズが大きくなったからと言って、単純にボディサイズも大きいわけではないことに注意したい。
狭額縁でも問題なし
ここでひとつ疑問が生じる。オールスクリーン化したことで、手に持ったときにディスプレイ部分に指が触れ、誤動作しやすくなることはないのだろうか。
実際に使ってみると、少々親指がかかったところで誤動作は起きなかった。一方で、タッチ操作の反応が悪くなったわけでもない。アップルのタッチ操作の認識技術は以前から定評があるが、新モデルでもタッチ操作と手持ちの指の置き具合を精密に区別しているようだ。
新iPadプロには、デザインと心地よい体験を両立させるアップルのテクノロジーが詰まっているのだと再認識できる。
iPadシリーズのサイズを徹底比較
薄さ
新iPad Proは12.9インチ、11インチモデルともに、これまででもっとも薄い5.9mmとなった。この薄さを実現するために、カメラレンズ、スピーカ、アンテナなどのパーツを再設計して配置したという。
大きさ
新iPad Proは狭額縁となったので、旧モデルと同じディスプレイサイズでも、ボディサイズはひと回り小さくなった。11インチモデルは10.5インチモデルに比べて横幅が広がったが、縦幅はコンパクトになっている。
重さ
2017年発売のiPad Proシリーズと比べると、本体サイズがコンパクトになったことで重さも軽量化した。また10.5インチのWi-Fiモデルは重さが469gに対し、11インチのWi-Fiモデルは468g。画面サイズは大きくなったが、重さはほぼ変わらない。
最大ベゼル幅
オールスクリーンによって、上下のベゼルが大幅に狭まった新iPad Pro。難点があるとすれば、ベゼルの黒さによって前面に並ぶTrueDepthカメラシステムが目立ちにくく、横持ちするときに親指がかかりやすいことくらいか。
縦持ち
MacBookに匹敵する大きさの12.9インチモデルは、重さがWi-Fiモデルで631gあるため、長時間手持ちで扱うのは厳しいだろう。リーダーとしてはiPad miniのサイズ感も捨てがたいところだ。
横持ち
両手での横持ちであれば、どのモデルも扱いやすい。ホームボタンが廃止されたことで、横に持ったときにボタンを誤操作することもなくなった。とはいえ、12.9インチサイズは手持ちではなく、平面に置いて使うサイズ感だろう。
Split View表示
2つのアプリを同時に並べる「Split View」は、iPad Pro、iPad(第5世代以降)、iPad Air 2、iPad mini 4 で使える機能。しかし、iPad mini 4の画面サイズでは、視認性が落ちてむしろ使いづらい。画面サイズの大きいモデルに軍配が上がる。