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夢のメガネ型デバイス「Even G2」実機レビュー。目の前に文字が浮かび、検索、翻訳、道案内も。Appleの元社員が手掛ける最新AIプロダクトの使い勝手は?

著者: 村上タクタ

夢のメガネ型デバイス「Even G2」実機レビュー。目の前に文字が浮かび、検索、翻訳、道案内も。Appleの元社員が手掛ける最新AIプロダクトの使い勝手は?

グラス型デバイスに必要とされるのは、どのような機能だろうか。スマートフォン、スマートウォッチに続く次のフロンティアとして、現在多数の企業から数多くのVR・AR系デバイスが登場している。

筆者はこの分野についてとても興味深く感じており、Vision Pro、Meta Quest 3、Ray-Ban Meta、XREALEven G2を所有し、いずれも日常的に使っている。今回はその中でも、一番日常的に利用しているEven G2をご紹介しよう。

Even G2とR1
Even RealitiesのEven G2と、リング型コントローラのR1。

各社から登場するグラス型デバイス。Even G2を含む、各製品の機能性と違い

それぞれのデバイスは、仕組みも目的も違う。たとえばAppleのVision Proは、視界を完全に覆いつつ、外部カメラで撮影した映像を目の前のディスプレイに正しい位置で表示する手法を採用している。しかし、これには非常に高い処理能力が必要なため、結果としてコストがかさむ。Meta Quest 3もこれに近い仕組みだが、AR的機能に関してはVision Proほどの精度はない。

一方XREALは、基本的には「サングラス型ディスプレイ」と呼ぶべき製品だ。最新のモデルは表示されるグラフィックを空間に固定できるが、Vision ProやMeta Quest 3ほど空間を精密に把握する能力はない。

そして、Ray-Ban Metaはカメラやスピーカとしての機能を持っている。筆者は最新のMeta Ray-Ban Displayを所有していないが(試したことはある)、右目側にディスプレイを備え、情報を表示する機能も獲得している。

これらに対して、Even G2が表示する情報量は一番少ないといっていいだろう。

ディスプレイは緑色の単色。初代モデルEven G1の640×200ピクセルより性能が向上したとはいえ、640×350ピクセル。日本語テキストでいえば、わずか10行ほどが表示されるだけだ。

Even G2の表示イメージ
カメラで撮影するのは難しいが、実際に撮ってみるとこんな感じ。もちろん、肉眼では文字は端までちゃんと見えている。

しかし、日常世界に情報がオーバーレイされるのであれば、これで十分。イメージとしてはドラゴンボールのスカウター。普段はただのメガネであり、必要に応じて情報が表示されるという感じだ。




Even G2の仕様と機能性。リング型コントローラ「R1」の登場ほか、前Even G1からの進化は?

筆者が海外サイトから購入したEven G1も、基本的な仕様は同じ。ラウンド形状のAタイプとスクエアなBタイプがあり、Even HAOによって文字を目の前に表示する。両目に表示されるので、文字は遠近感を持って空間に表示され、背景から浮き立って見える。

Even HAOの構造
ウィル・ワンCEOに描いてもらったEven HAOの構造。テンプル部分から投射して、レンズの中をジグザグに屈折しながら表示されるのだそうだ。

Even G2になって性能が向上したうえに、正式に日本で購入できるようになった。銀座と名古屋に店舗を構えるJUN GINZAにて、実際に試してから購入することもできる。視力矯正が必要な人にとって、実店舗でのサポートはありがたいポイントだろう。なお、処方箋があればオンラインでも度付きレンズの購入は可能だ。

さて、Even G2はわずか37g。IP65等級の防水・防塵性能も持っているので、本当に日常的に利用できる。筆者は普段メガネをする習慣がないので、つい外してしまうが、いつもメガネを利用している人なら、そのメガネの代わりに度を入れたEven G2を常用することもできるだろう。

Even G1は機能の立ち上げ時などにスマホを使う必要があったが、G2は空間にレイヤー状に浮かび上がるメニューが採用された。そのため、ツルの部分のタッチ操作で機能を立ち上げられる。また、同時に発売されたリング型コントローラ「R1」により手元での操作が可能となった。

リング型コントローラR1
リング型コントローラのR1。タッチセンサを内蔵している。

Even RealitiesのCEOは元Apple Watch開発メンバー。Evenシリーズに流れるAppleの思想

実は、このEven Realitiesを率いるウィル・ワン(Will Wang)CEOは、Apple出身だ。Appleの考え方をよく知っている。そういう意味でも、このデバイスはMac Fanの読者の方にフィットすると思う。

Even Realities CEO
ウィル・ワンCEOは中国出身。Appleのほかにも、AnkerやOPPOに在籍した経験を持つ。

彼はApple Watchの開発メンバーのひとりで、完成度を大きく上げたApple Watch Series 3と4に取り組んでいたという。彼によると「Appleもグラス型デバイスを開発しており、2029年に発売すると思う。それまでに市場で確かな立場を築いておくのが我々の目標だ」とのこと。Appleがどんなデバイスを出してくるのかはわからないが、Even G2もある意味Appleの思想の影響を受けたデバイスだと考えていいだろう。




ワンCEOが考えるEven G2の現在地。革新、課題発見、課題解決。そして実用的なデバイスへ

話が少し逸れてしまったが、Even G2で何ができるかをご紹介しよう。

ほかのグラス型デバイスのように、視界を奪うディスプレイを表示するのではなく、グリーンの文字情報を視界に追加表示して日常生活を便利にするのがEven Realitiesのコンセプトだ。つまり、普段の視界が見えており、普通に生活ができて、その上に必要な情報が追加されることに意味がある。

機能面においては、初代Even G1から削除された機能もあれば、追加された機能もある。そういった意味でもまた模索中のデバイスだといえるだろう。ワンCEOによると「Apple Watchも初代はいろいろと課題が多かったが、Series 3と4で多くの課題を解決し、方向性を見い出し実用的なデバイスになった。Even G2もそういうステップの製品だと考えている」とのこと。

まず、一番基本的な機能として「ダッシュボード」が挙げられる。

頭を少し上に向けると、目の前にダッシュボードが表示される。日付、時間、天気、気温などの基本的な情報に加え、ニュース、株価、予定、タスク、ヘルスケア情報にアクセス可能だ。これらの表示は、ツルの部分のタッチパネルか、R1を使って操作できる。

また、スマホに来た通知の一部をEven G2に表示することもできる。

Even G2 深度の表現
Even G2では深度を表現できるようになった。メニューや通知、Even AIは手前側にポップアップする。

Even G2の実用的な注目機能。限られた表示領域だからこそ、AIが活きる

会話

今回加わった機能の中で特筆すべきは「会話(Conversation)」機能だろう。

たとえば、ミーティングの際にこの機能を立ち上げておけば、会話をリアルタイムでテキスト化して要約まで作成してくれる。会話の中に「LLM」「OECD」などの難しい単語や、聞きなれない固有名詞(人物名やグループ名など)が出てきたら、それを自動的に選択・検索して、概要を文字情報で説明してくれる。

Even G2 会話機能のイメージ
英語版のConversation(会話)機能。下2行に現在の話が出て、上に出ている項目をクリックすると、その単語の解説が展開する。もちろん、日本語設定でも動作する。

Even AI

また、「Even AI」という独自のAIを装備しており、「Hey Even ! グラス型デバイス市場の現況について教えて」と質問するだけで、文字情報で質問に答えてくれる。一般的なテキストでやりとりする生成AIのような感じで、こちら側の問いかけは音声で、Even AIの回答は文字情報として返ってくる。デバイスの性質上、あまり長い文章は読みにくいが、ハンズフリーで簡単なやりとりができるのは便利。

「会話」や「Even AI」は、生成AIがある時代からこその機能で、利便性は非常に高い。独自AIだが、おそらく巨大AI企業のLLMを組み合わせて自社サーバで動かしているものと思われる。後述の翻訳機能なども含め、AI機能が追加の定期的な課金などなしに使えるのはありがたい。

原稿提示

続いて便利なのは「原稿提示」機能。以前は、「テレプロンプター」と呼ばれていた機能で、あらかじめ入力しておいたテキストを表示できる。たとえば、人前で話す時などにこの機能を使うと、音声をAIで聞き取って、読むのに合わせて文字送りしてくれる。簡単に言えば「カンペ」を表示してくれる機能だ。

とりわけ、YouTubeなどの収録時には便利で、カメラ目線で長文の原稿を「読む」ことができる。人前でのプレゼンテーションにも使ってみたが、こちらはアドリブを入れにくかったり、万が一フリーズしたりした時(まだ時折起こる)に、読み手がパニックになってしまうので、まだまだ難しい印象だ。

ライブ翻訳

また、ライブ翻訳機能も便利。外国語の動画を見たり、講演を聞いたりするときに、グラスに日本語の文字が表示される。会話の時に使えるかというと、状況次第というところ。たしかに、相手の言うことが日本語で表示されるのは便利だが、会話の途中にそれを読み取るというのはなかなか難しい。

サポートなしでもだいたいの会話はわかるが、一部難しい用語がわからない…というような状況なら、その難しい用語の翻訳だけ読めばいいから、かなり便利に使えると思う。そもそも、こちらの発話を日本語にした場合、英語(もしくはほかの言語)の翻訳はスマホに表示されるので、それを見せることになる。便利かどうかは、相手との関係性、状況次第というところだろう。

Even G2 ライブ翻訳機能
ライブ翻訳機能のスマホ側の表示のキャプチャ。同等の内容がEven G2にも表示される。左がApple Eventの動画を見ているところ。右はとある楽曲を聴いてみたところ。歌詞もちゃんと翻訳された。

海外製品の発表会では、一般に我々日本人メディアと、発表企業の登壇者の間を通訳の方が仲介してくれるのだが、Even G2の日本での発表会では、我々の日本語の質問を、そのままワンCEOが読み取って英語で回答(それを通訳の方が日本語に訳す)していたのが驚きだった。使い慣れれば、このように人前でもEven G2を活用できるのかもしれない。

私もEven G2をかけてワンCEOと話してみたが、両者がEven G2を使っていれば、お互い自国語を話すだけで(ワンCEOの本来の自国語は中国語だと思うが)、かなり会話が成立した。そうなると利便性が飛躍的に向上する。目指す未来はここだろう。

クイックリスト

「クイックリスト」は、Even AIで入力するToDoリストだ。これは案外使いやすい。思い出したことをその場で音声入力できるので、入力忘れがないのがうれしいところだ。

ナビゲート

そして「ナビゲート」は、ナビのルート表示が目の前に表示されるという機能。便利なようだが、車で使うのは難しそうだし、自転車はなかなかナビを見る余裕はない。徒歩で使うにしても、目の前にずっとナビゲーションが表示されるのは少々目障りな気がする。

スマホやスマートウォッチを見るヒマがないほど、複雑な屈曲路なら、グラスに表示されているアドバンテージはあると思うが、通常のルートだと表示されていることの煩わしさのほうが勝る。地図もオリジナルのものらしく、あまり見やすくないという点も課題だ。

Even G2 ナビゲート機能
ナビゲートはある意味誰もが夢に描いていた機能だが、歩行時はEven G2の表示が揺れるので、決して見やすいわけではない。




実用性はあるものの、まだ完全ではないEven G2。ただし、魅力は本物

リング型コントローラ「R1」は、使ってみると操作上のメリットは大きい一方、少し太めのリングを人差し指につけなければならないというのが少々煩わしい。キーボード入力時に邪魔に感じることもあり、筆者はつい外して、操作するときだけ装着することが多くなってしまった。

Even G2は非常に未来的で、ほかにない魅力が詰まったデバイスだ。ただ、まだ洗練されていない部分もあるにはある。R1での操作には慣れが必要だし、スマホでほかのアプリを立ち上げ過ぎて、「Even」アプリが下の層に潜ってしまうとEven G2上の表示が滞ることがある。

おそらく、デバイスへの負荷を軽くするために、多くの処理をスマホ側で行っているのではないだろうか? もう少し、スマホの状態に影響されずに確実に動作してくれると利便性が高まると思うのだが…。

そのことさえ理解しておけば、現時点でもかなり実用的で、同ジャンルの製品と比較しても実用性は高いと思う。興味ある方はぜひ試してみていただきたい。

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編集:Mac Fan編集部
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著者プロフィール

村上タクタ

村上タクタ

Webメディア編集長兼フリーライター。出版社に30年以上勤め、バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴ飼育…と、600冊以上の本を編集。2010年にテック系メディア「ThunderVolt」を創刊。

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