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Macintosh Plusの典型的な故障場所とその修理方法/今井隆の「Think Vintage.」

著者: 今井隆

Macintosh Plusの典型的な故障場所とその修理方法/今井隆の「Think Vintage.」

Macintoshの実用性を飛躍的に高め、本格普及の狼煙を上げた名機「Macintosh Plus」。これまで、モデルの詳細、ロジックボードのアーキテクチャ、そのほかコンポーネント、そして筆者の修理と改造歴について、連載「今井隆の『Think Vintage.」」で解説してきた。今回は筆者のMacintosh Plusの故障とその修理、そして延命のために施した些細な改良(改造)について紹介しよう。

煙を上げて故障したMacintosh Plus

筆者のMacintosh Plusは購入後5年以上現役で活躍していたが、その後IIcxやQuadraなどの高性能でカラーが扱えるMacを購入する中で、徐々にその使用頻度が低下していった。

さらに1994年以降、Power Macintoshの登場やインターネットの普及によってMacの使い方自体が変わってくると、モノクロで小さな画面のMacitosh Plusの出番はほとんどなくなってしまっていた。それでも最初に購入したMacとして手放すのは忍びなかったこともあり、時折電源を入れてはノスタルジーに浸っていた。

そんなMacintosh Plusが故障したのは、2010年の冬のこと。電源を入れたところ、「パンッ!」というイヤな音とともにリアカバーのスリットから白煙があがった。さすがにこの状況で使い続けるのは危険と判断、その後はオブジェとしての余生を送っていたのだが、この連載を始めるにあたって修理を行った。

故障箇所はすぐに見つかった。AC電源回路に使われているC38というMPコンデンサ(メタライズドペーパーコンデンサ)が割れ、電解液がアナログ基板上に漏出していたのだ。

MPコンデンサは経年劣化によって絶縁抵抗が低下すると、内部短絡による発熱で電解液がガス化、内圧が上昇してケースが破裂する。Macitosh Plusだけでなく、モノクロディスプレイ一体型のコンパクトMac(128K、512K、SEなど)では共通のトラブルで、製造から30年以上が経過していることもあって故障リスクが高い。

Macintosh Plusのアナログボード上にあるXコンデンサ「C38」とYコンデンサ「C33」および「C37」。場所は背面のACコードインレットのすぐ後ろにあり、金色のコンデンサ本体を透明樹脂でコーティングしてある。
Macintosh Plusのアナログボード上にあるXコンデンサ「C38」とYコンデンサ「C33」および「C37」。場所は背面のACインレットのすぐ後ろにあり、金色のコンデンサ本体を透明樹脂でコーティングしてある。

C38の役割は「Xコンデンサ」と呼ばれ、AC電源のライン間に挿入されてノーマルモードノイズ対策に使われる。コンピュータ内部には多くのスイッチング回路(CPUを含む)があり、それらのノイズが電源ラインを通じて他の機器に悪影響が及ぶのを抑制するための部品だ。

電源ラインノイズは日本ではVCCI、米国ではFCCによって「雑音端子電圧」として上限が規定されており、この基準を満たすためにMacの電源部にはノイズフィルタ回路が構成されている。

Macintosh PlusのアナログボードのAC電源入力回路図(実機ベースでトレース)。Xコンデンサ「C38」はノーマルモードノイズ、Yコンデンサ「C33」および「C37」はコモンモードノイズを取り除く役割を果たす。
取り出したMPコンデンサ3個。左の完全に割れているのがXコンデンサ「C38」で、発煙と破裂音の正体だ。右の2つのYコンデンサ「C33」および「C37」はまだ故障に至っていないが、同じ年月を経ているので予防的に交換した。
取り出したMPコンデンサ3個。左の完全に割れているのがXコンデンサ「C38」で、発煙と破裂音の正体だ。右の2つのYコンデンサ「C33」および「C37」はまだ故障に至っていないが、同じ年月を経ているので予防的に交換した。

MPコンデンサは現在のデバイスにはほとんど使われておらず、かつ同じものと交換しても故障リスクが下がらないため、筆者はMPP(メタライズドポリプロピレン)フィルムコンデンサと交換した。

コモンモードノイズ対策用の「Yコンデンサ」C33およびC37にもMPコンデンサが用いられていたため、こちらも予防的にMPPフィルムコンデンサに交換している。修理はこれで完了だ。

交換後のC38、C37、C33。形状は異なるがいずれもMPPフィルムコンデンサで、本来取り付けられていたコンデンサと同一特性の部品を選定している。これで今後10年以上は同じ場所で故障は起きないはずだ。
交換後のC38、C37、C33。形状は異なるがいずれもMPPフィルムコンデンサで、本来取り付けられていたコンデンサと同一特性の部品を選定している。これで今後10年以上は同じ場所で故障は起きないはずだ。




予防的延命処置(改造)

Macintosh Plusに限らず、あらゆる電子機器は時間が経てばいつか必ず故障する。そして機器を構成する部品の中には、故障しやすい部品とそうでない部品がある。その中でも経年劣化することが予めわかっている部品の代表例が、バッテリや電解コンデンサなどの「消耗部品」だ。

中でも電解コンデンサは部品メーカーがその耐用年数(保証寿命)を規定している場合が多い。一般的には、「メーカー指定の定格範囲内」で用いた場合で10年程度だが、高リップル環境や高温環境での使用はコンデンサの短命化に直結する。

電解コンデンサの寿命は一般的に10年程度とされるが、環境次第ではもっと短命になることもある。写真の電解コンデンサは約15年間連続稼働した機器の電源回路に搭載されていたもので、すでに頭頂部が膨張して防爆弁が開き電解液の漏出が始まっている。これらのコンデンサが容量抜けを起こしたことで、この機器は動作しない状態になっていた(コンデンサ交換後は正常に動作した)。
電解コンデンサの寿命は一般的に10年程度とされるが、環境次第ではもっと短命になることもある。写真の電解コンデンサは、約15年間連続稼働した機器の電源回路に搭載されていたもの。すでに頭頂部が膨張して、防爆弁が開き電解液の漏出が始まっている。これらのコンデンサが容量抜けを起こしたことで、この機器は動作しない状態になっていた(コンデンサ交換後は正常に動作した)。

Macintosh Plusなどの古いMacのように30年以上を経過した機器では、電解コンデンサが保証寿命を超えているのは間違いなく、あとはマージン(余裕)分のみで動いていることになる。したがって今後も使い続けるのであれば、すべての電解コンデンサを(予防)交換するのが定石だ。

一方で劣化することが事前にわかっているなら、電解コンデンサにかかるストレスを低減して延命することは可能だ。さらに電解コンデンサが劣化(容量抜け)しても、安定動作するように改良することもできる。

電解コンデンサは低い周波数の電圧変動を吸収する能力は高いが、高い周波数の電圧変動を吸収する能力は低い。スイッチング回路の塊であるコンピュータの電源電圧の安定化には、電解コンデンサだけでカバーするのが難しく、回収できなかった高周波ノイズは電解コンデンサの寿命を縮める。ちなみに、現在は電解コンデンサの改良が進み、高い周波数のノイズも吸収できるものが増えている。

対策としてはスイッチング回路(ロジックボード上の部品)の近くに、高周波ノイズを吸収するためのコンデンサを追加すればよい。このような用途にはフィルムコンデンサやセラミックコンデンサが適している。中でも積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor)は容量と高周波特性の両面において最適なコンデンサで、現在ではAppleデバイスのすべての電源回路に採用されている。

筆者のMacintosh Plusには、早い時期からロジックボードとアナログボードの両方にMLCCを追加してあり、その効果かどうかはわからないが、電解コンデンサの膨張や液漏れが発生したことは一度もなかった。

Macintosh Plusのロジックボードうら面には、筆者によってMLCC(水色のコンデンサ部品)が追加されている。取り付け場所はノイズ発生源であるCPUの電源ピン、メモリSIMMの電源部、そしてアナログボードからの電源を受け取るコネクタ部の3カ所。大きいMLCCは1μF(105)、小さい方が0.1μF(104)となっている。同様の処置はアナログボードにも施してある。
Macintosh Plusのロジックボード裏面には、筆者によってMLCC(水色のコンデンサ部品)が追加されている。取り付け場所はノイズ発生源であるCPUの電源ピン、メモリSIMMの電源部、そしてアナログボードからの電源を受け取るコネクタ部の3カ所。大きいMLCCは1μF(105)、小さい方が0.1μF(104)となっている。同様の処置はアナログボードにも施してある。

次回はその後登場したMac(ADB接続)とは異なる、Macintosh Plus独自のキーボードとマウスについて解説しよう。

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著者プロフィール

今井隆

今井隆

IT機器の設計歴30年を越えるハードウェアエンジニア。1983年にリリースされたLisaの虜になり、ハードウェア解析にのめり込む。

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