LisaDrawの進化形
今回取り上げる「MacDraw」は、ペイントツールの「MacPaint」、ワードプロセッサの「MacWrite」とともに、初代Macintoshの先進性を世に知らしめた3大純正アプリケーションの1つだった。Macintoshの前身となったLisaの「LisaDraw」と同じマーク・カッターによって開発され、その進化形という位置づけでもあった。
MacPaintと同じくグラフィックツールに分類されるが、MacPaintがペイント系ツール、つまりドットの集合体としてのイメージを描くためのものであったのに対して、MacDrawはドロー系ツールとしてイメージを幾何学的なベクター(ベクトル)図形の集合体として扱っており、ベクターグラフィックツールとも呼ばれた。
そのため、MacDrawには描いた図形の一部を消しゴムツールで消したりできるMacPaintのような自由さはなかったものの、ファイルサイズが小さくて済むうえ、一度描かれた図形の移動やサイズ変更を容易に行うことができ、再編集が可能だった。
今ではKeynoteやPowerPointなどのプレゼンテーションツールでもベクトル図形を扱えるので、ごく当たり前の機能と思われているが、当時のパーソナルコンピュータでこれほど簡単かつ直感的にベクトル図形を使って作図できるアプリケーションはなく、それを自在に扱えることには大いに驚かされた。
LaserWriterでの印刷で威力を発揮
それでも「日常使い」という意味では、MacPaintのほうがドット単位で編集でき、モノクロながらスプレーペイント的な機能もあって表現力に勝り、使用頻度も高かった。
ところが、高解像度(300dpi)な純正レーザープリンタの「LaserWriter」が1985年に登場し、キヤノンのゼロワンショップなどで利用できるようになると、事情が変わってきた。
MacPaintの描画は、当時のMac intoshの画面解像度である72dpiで、高解像度でプリントしても斜め線のジャギーなどが拡大印刷されるだけだが、数学的に記述されているMacDrawの描画は300dpiの滑らかなイメージとなる。特にサイズの大きな文字の印刷では違いが顕著に現れるので、用途に応じてMacDrawの出番が増えていった。
やがてAppleの子会社であるClaris(当時)に移管されたMacDrawは、カラー対応に拡張されて「MacDraw Pro」へと進化したあと、統合ソフトの「ClarisWorks」に組み込まれ、さらに開発体制がAppleに戻って「AppleWorks」のドロー機能として2007年の販売終了まで生きながらえた。今やさまざまなドロー系ツールがあるが、僕の原点はやはりMacDrawなのだ。
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著者プロフィール
大谷和利
1958年東京都生まれ。テクノロジーライター、私設アップル・エバンジェリスト、神保町AssistOn(www.assiston.co.jp)取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツへのインタビューを含むコンピュータ専門誌への執筆をはじめ、企業のデザイン部門の取材、製品企画のコンサルティングを行っている。







