2030年に向けた助走の始まり
2023年9月のスペシャルイベントで、AppleはApple Watch Series 9/Ultra 2とiPhone 15/15 Plus/15 Pro/15 Pro Maxを発表した。それぞれ性能的にも機能的にも進化しているが、同社が今回もっともアピールしたかったことは、SEモデルを含めた現行Apple Watch製品のすべてが、特定のウォッチバンドとの組み合わせで、100%カーボンニュートラルを実現したことだろう。
新製品発表について伝えた日本のメディアが、その点にあまり触れていなかったことは残念だが、世界的に見れば、性能や機能よりも、カーボンニュートラルだからApple Watchを選ぶという消費者はそれなりの数に上ると思われる。ティム・クックCEOも、この製品が、2030年にビジネスのあらゆる領域でニュートラルを実現するというAppleの目標を、7年先取りしたマイルストーンである点を強調していた。
今回取り上げるMacBook Air(Late 2018)も、一見すると見慣れたデザインのレギュラーアップデートモデルに思えるが、実はこれこそが、筐体素材に100%再生アルミを採用した最初のApple製品だった。それ以前にも、水銀フリーのLCDスクリーンを採用するなど、環境負荷低減に向けての取り組みは行われていたが、2030年の目標に向けての大きな一歩が、このモデルで踏み出されたのだ。
一方で…環境に優しい分製造コストは高い
再生アルミ筐体のMacBook Airが発表されたとき、Appleは、新規採掘のボーキサイトの鉱石からアルミニウムを精錬するよりも、二酸化炭素の排出量を50%低減できることを明らかにした。
再生アルミといっても、巷で不要となったアルミ製を回収して作られるわけではなく、ユニボディの切削加工時に出る削りかすを集めてリサイクルしたものである。そのため、回収にかかる費用や、使われていた製品ごとのアルミの質のバラツキなどを心配する必要はなかったが、それでもコスト面では鉱石から精錬して作るアルミを利用するよりも割高になるとのことだった。
にもかかわらずAppleが、もっとも売れているノートMacであるMacBook Airから再生アルミ筐体の採用に踏み切ったのは、それだけ多くの製品を送り出していることに対する社会的責任があり、世界トップランクの企業として持続可能な未来へのコミットメントを行うためといえた。
キープコンセプトに見える筐体も、中身とともに完全に一新されている。実は、MacBook Airは、このとき初めてRetina Display、Touch ID、USB-C、そして第3世代バタフライキーボードを搭載するに至り、当時のユーザが待ち望んでいた仕様がすべて盛り込まれた理想の1台だったのである。
この原稿を書きながら、ふと思い立って中古市場での価格を調べてみると、MacBook Air(Late 2018)はIntel CPU時代の製品でありながら、約5万8000円から6万5000円と意外なほどの高値で取引されていた。2017年モデルでは、その6割以下の価格に急落するので、Late 2018モデルは今も十分魅力的ということなのだろう。
※この記事は『Mac Fan』2023年11月号に掲載されたものです。
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著者プロフィール
大谷和利
1958年東京都生まれ。テクノロジーライター、私設アップル・エバンジェリスト、神保町AssistOn(www.assiston.co.jp)取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツへのインタビューを含むコンピュータ専門誌への執筆をはじめ、企業のデザイン部門の取材、製品企画のコンサルティングを行っている。







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