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A19 Pro最強のライバルが出現/Qualcomm Snapdragon 8 Elite Gen.5の脅威

著者: 今井隆

A19 Pro最強のライバルが出現/Qualcomm Snapdragon 8 Elite Gen.5の脅威

Androidスマートフォン向けチップセットメーカー「Qualcomm」。同社は、9月23日からハワイでプライベートイベント「Snapdragon Summit 2025」を開催した。そこで発表したスマートフォン向けアプリケーションプロセッサ「Snapdragon 8 Elite Gen.5」の実力を探っていこう。 画像:Qualcomm

“最速のモバイルCPU”を名乗る「Snapdragon 8 Elite Gen.5」

「Snapdragon 8 Elite Gen.5」は、その名が示すとおりスマートフォン向けプロセッサの最上位モデルである「Snapdragon 8」の第5世代モデルだ。そして「Elite」の名を冠するのは、そのCPUコアに独自設計の「Oryon」を採用していることを意味している。

Oryonがスマートフォン向けプロセッサに採用されたのは、「Snapdragon Summit 2024」で発表された第4世代の「Snapdragon 8 Elite」が最初で、この時搭載されたのは第2世代Oryonだった。

今回「Snapdragon 8 Elite Gen.5」に搭載されたのは、最新の第3世代Oryonになる。Qualcommはこの第3世代Oryonを“最速のモバイルCPU”とアピールした。

Qualcommは2025年9月にプライベートイベント「Snapdragon Summit 2025」を開催。そこで、「Snapdragon 8 Elite Gen.5」のCPUを“最速のモバイルCPU”とアピールした。
画像:Qualcomm
「Snapdragon 8 Elite Gen.5」のCPUコアにはQualcomm独自開発の第3世代Oryonが採用されている。それはSnapdragon 8 Eliteが搭載する第2世代Oryonに対して、シングルコア性能で20%、マルチコア性能で17%勝るとしている。
画像:Qualcomm
CPUコア以外でも「Snapdragon 8 Elite Gen.5」ではGPU、NPU、DSPなどの性能が底上げされているとする。また3nmプロセスで製造されていることも明らかにされた。
画像:Qualcomm

ちなみに、スマートフォン向けプロセッサ「Snapdragon 8 Eliteシリーズ」および、Windows PC向けプロセッサ「Snapdragon X Eliteシリーズ」の心臓部であるOryon CPUコアのルーツは、Qualcommが2021年に買収した半導体設計企業Nuviaにある。

そのNuviaを2019年に設立したジェラード・ウィリアムズ氏は、それまで9年間にわたってAppleシリコンのチーフアーキテクトを務めてきた人物で、A7からA12XまでのすべてのAppleシリコンのCPUコア開発を主導してきた経緯がある。

つまりAppleシリコンとQualcommのEliteシリーズの高性能CPUコアは、同一のアーキテクトに源流を持っていると言えるだろう。

合わせてチェックしたいSnapdragonの解説記事

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ところで、この“最速のモバイルCPU”というキャッチに見覚えはないだろうか。

Appleは2025年9月10日のSpecial Eventで、iPhone 17 ProおよびiPhone Airに搭載された「A19 Pro」を“最速のスマートフォンCPU”とアピールした。

だとすれば、「Snapdragon 8 Elite Gen.5」のCPUコアはA19 Proを凌ぐ性能を有するのだろうか。

AppleはiPhone 17シリーズ/iPhone Airの発表の場で、A19 Proが搭載する高性能CPUコアはスマートフォン向けのプロセッサとして史上最速であることをアピールしていた。
画像:Apple




シングルコア性能はA19 Proと互角。マルチコア性能は最強

「Snapdragon Summit 2025」の会場では、「Snapdragon 8 Elite Gen.5」を搭載したリファレンスデザインのスマートフォンが設置されており、実際に操作することができたという。

そこで実施されたGeekbench 6.5のベンチマーク結果が複数のメディアで公表されており、それによればシングルコア性能でA19 Proと互角、マルチコア性能では約20%上回ると報告されている。この結果を見る限りでは“看板に偽りなし”といえるだろう。

リファレンスデザインモデルはあくまでQualcommの設計見本であり、実際に販売されるスマートフォンが必ずしも同等の性能を発揮することを示すものではない。しかし充分な冷却性能と電力供給が実現すれば、近い性能が出せるはずだ。

Qualcommの直近3世代のSnapdragon 8と、A18シリーズおよびA19シリーズを搭載するiPhoneのGeekbench 6スコア比較。シングルコア性能ではSnapdragon 8 Elite Gen.5とA19 Proは互角だが、マルチコア性能ではコア数が2基多いSnapdragon 8 Elite Gen.5のスコアがもっとも高い。

「Snapdragon Summit 2025」では「Snapdragon 8 Elite Gen.5」を搭載する製品を計画しているスマートフォンメーカーも公表された。

そのうちXiaomiは、すでに「Xiaomi 17」シリーズへの搭載を正式に発表しているほか、ASUS、OPPO、Samsung、Sony、ZTEなどのメーカー名も紹介されており、いずれもフラグシップモデルへの採用を検討していると考えられる。

いずれにしても、来年にはiPhone 17 Proに匹敵する性能のAndroidスマートフォンが数多く市場に現れるのは間違いない。

「Snapdragon Summit 2025」のセッション「Product Announcements Keynote」では、2025年1月にリリースされたSamsungのGalaxy S25がSnapdragon 8 Eliteを採用したことが紹介された。さらに、次世代モデルに同Gen.5が搭載される可能性も示唆された。
画像:Qualcomm

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著者プロフィール

今井隆

今井隆

IT機器の設計歴30年を越えるハードウェアエンジニア。1983年にリリースされたLisaの虜になり、ハードウェア解析にのめり込む。

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