ローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」を活用し、オリジナルのカスタムAppのアイデアと技術を競う「Claris FileMaker 選手権 2025」(以下、FileMaker選手権)。
本大会で審査員を務めるフリーアナウンサーの松澤ネキさんも、プロの開発者のオンラインレッスンを受けながらiPhoneで使える“自作アプリ”の開発に挑んでいます。
これまでに4回のオンラインレッスンを行っているので、その様子についてはこちらからご確認ください。

松澤ネキさん
大学卒業後、経済専門チャンネル「日経CNBC」では経済キャスターとして活動。その後「TBSニュースバード(現TBS NEWS)」にて定時ニュースから選挙中継、現地取材、事件事故の突発対応から、あらゆる報道業務を担当。2013年よりホリプロ所属。 現在は得意分野のアニメ、漫画、ゲーム等のジャンルを中心に活躍中。
[URL]https://www.horipro.co.jp/matsuzawaneki/

山下晴加さん
株式会社DBPowers システムデザイナー。2018年に参加した「FileMaker キャンパスプログラム」をきっかけに、Claris FileMakerを中心とした業務支援環境のシステム構築やカスタムApp開発のトレーニングに従事。
[URL]https://www.dbpowers.co.jp
「Claris FileMaker 選手権 2025」とは?

「Claris FileMaker 選手権 2025」は、ローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」の最新バージョンを使って開発された、オリジナルのカスタムAppのアイデアと技術を競うコンテストです。
たとえば、家族や友人の困りごとを解決するお助けアプリや、地域の課題に寄り添うアプリなど、日々の暮らしをちょっと楽しく、ちょっと便利に変えるアイデアをFileMakerでカタチにしてみませんか?
なお、2025年9月9日をもって応募受付は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。
2025年11月5日に開催される「FileMakerカンファレンス 2025」での結果発表まで楽しみにお待ちください。
キャラクターの切り替え機能を追加する
FileMakerを使ったアプリ(カスタムApp)開発もいよいよ佳境を迎えました。
5回目のトレーニングでは、アプリのホーム画面に表示する松澤さんのキャラクターを、アプリで登録した言葉の数に応じて切り替える仕組みを構築しました。登録した言葉の数が多くなるほど、松澤さんのキャラ画像が変化していくイメージです。
そのために、まず「キャラ」テーブルを新たにつくり、言葉の登録件数に応じたキャラ画像を複数個保存できるようにしました。また、ホーム画面に関連づけられたテーブルには、言葉の登録件数を数える「カウント」フィールドを追加しました。
ホーム画面では、「ポータル」というFileMakerのレイアウトオブジェクトを使ってキャラ画像を表示します。このポータルでは、「カウント」フィールドの値、つまり言葉の登録件数に応じたキャラ画像が自動的に表示される仕組みを実装。併せて、画像のサイズやレイアウトも見やすく調整しました。
さらに、ホーム画面には松澤さんが希望していた「直近の予定2件をリマインド表示する機能」を追加しました。加えて、Webビューアを使って「電卓」も組み込みます。アプリ上で「電卓」を実装するJavaScriptコードの作成にはChatGPTを活用しました。
「すごい! ちゃんと表示されて、ボタンも押せますね」(松澤さん)
この日のトレーニングの最後には、歩数を表示する機能も追加することに。これはFileMakerのGetSensor関数を使ってiPhoneの歩数データを取得し、画面上に表示する仕組みです。レイアウトには先ほどの電卓画面を流用し、山下さんの「サイズやUIの統一感を出すとよい」というアドバイスに沿ってホーム画面に歩数が確認できる機能が追加されました。

歩数でキャラが進化する⁉︎ UIデザインとFileMakerの連携
アプリ開発は、必ずしも順調に進むとは限りません。
6回目のトレーニングでは、「キャラクター画像が表示されないんです!」と松澤さんが困っている場面がありました。キャラクターごとに「言葉を◯件以上登録すると切り替わる」という情報を持たせているのですが、この時点で登録している数値の上限を超えていたことが原因でした。山下さんの指導のもと数値の上限を調整し、「ウインドウ内容の再表示」を行うことで、無事にキャラクターが表示されるようになりました。
また、歩数の表示位置がずれていた問題については、山下さんがiPhoneの画面サイズに応じてFileMakerで表示が最適化される仕組みを、シミュレーションを交えて丁寧に説明。画像サイズを調整しつつ、表示位置を固定する設定を活用することで無事解決し、松澤さんの理解も深まりました。
今回のアプリ開発で大きな目玉となったのが、「状況に応じて表示されるセリフ」の設計です。用途ごとに分類して登録されたセリフを、ホーム画面ではランダムに表示し、「歩数計」では歩数に応じて表示する仕組みをつくりました。特に「歩数計」では、「歩こう」「まだ歩ける」「よく歩きました」「すばらしい!」と応援メッセージが段階的に切り替わるようにしたことで、アプリが“応援してくれる存在”として機能するようになりました。
「こういう仕掛けがあると、頑張りたくなりますよね」(松澤さん)
「アラーム機能も入れてみたいんですけど…」という松澤さんの要望に対しては、山下さんが「FileMakerではアプリが起動していないとアラームは動作しないため、通常の目覚ましとしての利用は難しい」と説明しました。
その代替案として提案されたのが「短い秒数をカウントするタイマー」です。アラームのような特定の時間に音が鳴る仕組みではないため、アプリ起動中に使うには適した機能になります。
約2時間に及んだこの日のトレーニングでは、表示の細かな調整や、アプリを起動したときに最初に表示される画面の設定などを実施しました。
この日の学びは、単に機能を実装するだけでなく、「どのように使われるか」「どのように見えるか」といったユーザ視点を持ってアプリを設計することの大切さであり、これを実感する機会になったと松澤さん。


FileMakerで「歩数計」と「タイマー」をつくる
主要な機能が出そろい、松澤さんのアプリ開発もいよいよ大詰めです。
7回目のトレーニングは、iPhone用のFileMakerアプリ「FileMaker Go」に松澤さんのアプリを転送し、アプリでiPhone の歩数データを取得することからスタートしました。まずはiPhoneの「設定」アプリで「モーションとフィットネス」へのアクセスを有効にし、FileMaker Goが「ヘルスケア」アプリのHealthデータへアクセスできるようにします。
その後、松澤さんのアプリ上のボタンにスクリプトを設定し、歩数データを取得して保存する仕組みを実装しました。この機能は「歩数計のレイアウトへ移動するボタンを押したときにヘルスケア情報を更新する」という仕様のため、リアルタイムではなく、明示的な“更新操作”が必要となる点も実践的な学びとなりました。
続いて取り組んだのは、タイマー機能の実装です。入力された秒数を1秒ずつカウントダウンし、0秒になったらアラーム音を鳴らす仕組みをスクリプトで構築。さらに、アラームを途中で止められるように「停止ボタン」も用意し、使用中のストレスを軽減できるようにしました。また、設定した秒数を履歴として保存し、過去のタイマーを再利用できるようにしました。
「タイマーがゼロになったときに任意のMP3音源を再生することができます。たとえば、松澤さん自身が録音した応援メッセージを再生することで、よりパーソナルな通知体験が可能になります」(山下さん)
機能面だけでなく、UI(ユーザインターフェイス)の見やすさ・使いやすさにも細やかな配慮をして直感的に操作できる画面構成を目指しました。たとえば、再生・停止・アラームといった各ボタンにはiPhone風のアイコンを使用し、視覚的にも役割が伝わりやすくなるよう工夫されています。これにより、アプリ全体の“iPhoneらしさ”と完成度が一段と高まりました。
「ここまでちゃんと動くタイマーが作れるとは思わなかったです!」(松澤さん)
歩数の取得からアラーム、履歴の保存までをひととおり体験したことで、単なる機能理解にとどまらず、「実装の感覚」やアプリとしての完成像が徐々に明確になってきたようです。

“人に使ってもらうこと”を意識した設計
アプリのベース部分がほぼ完成に近づいたことを受け、8回目のトレーニングでは細部のブラッシュアップからスタート。
「最初に入れていたアイコンも悪くないんですが、たとえば“記憶”のマークがもう少し“人っぽさ”を表せるとよいと思っていて。どう思いますか…?」(松澤さん)
この意見に対し、山下さんは別のアプリで使われていたアイコンを参考にしながら、色の統一や文字との視認性、そしてアイコンそれぞれが持つ意味の伝わりやすさといった観点からアドバイスし、より完成度を高めました。
さらに、「言葉」の登録方法のUIも見直しました。
「“何を入力すればよいのか”が一目でわかるようにしたいですね」(松澤さん)
これまでは画面上に「手入力」と「写真から抽出」の両方の入力フィールドを常に表示していたのですが、ユーザが迷わないように2つのスライドパネルを切り替える方式を採用することに。これによって、画面にはどちらか一方の入力フィールドだけが表示されるようになり、入力フィールドも広くなりました。
アプリが完成に近づくにつれ、今後の運用や実際に使ってもらったあとのフィードバック対応についても話題が広がります。
「知人に使ってもらったら、“ダークモードが欲しい”といった意見もありました。そういう声にどう対応していくかも考えたいです」(松澤さん)
これに対し山下さんは「ユーザの声を取り入れてどんどん改良していけるのがFileMakerの良いところです。さらにFileMakerで作成したアプリはWeb上に公開し、QRコードなどで簡単に配布もできるので、いろいろな人に使ってもらってアイデアを集めるのも面白いかもしれませんね」とアドバイスしました。

シンプルなUIこそ、こだわりが光る
9回目のトレーニングでも、さらに UI をブラッシュアップしていきます。今回は、iPhoneで表示したときに生じていたごくわずかな“白い隙間”を解消したり、歩数計画面に「i」マークのポップオーバーボタンを追加し、「モーションとフィットネスをオンにしてください」といった案内を表示する工夫を取り入れたりしました。
今回のトレーニングのハイライトは、ユーザの誕生日にホーム画面で「お誕生日おめでとう」のメッセージと画像を自動表示する機能の追加です。まずはユーザの「誕生日」をカレンダーから入力できるプロフィール画面をポップオーバーで作成。「おめでとう」メッセージをホーム画面に配置し、「今日の日付と誕生日の“月日”のみを比較して一致する場合のみ表示する」ロジックを設定しました。
このときに表示するキャラクター画像にも特別な仕掛けがあります。通常の松澤さんのキャラ画像とは別に「イベント用キャラ画像」を用意し、設定されているイベント当日に限ってそちらを優先的に表示するように設定。
この仕組みは、「キャラ画像と共に登録されているイベント日付が本日の日付と一致したら表示、それ以外は非表示」というロジックで制御しているので、クリスマスやハロウィンなど、ほかのイベントにも応用可能です。
「なるべくシンプルに見せたいんです」という松澤さんの要望に応える形で、今回のトレーニングではボタンの配置、背景色、ラベルの表示位置など、UIのあらゆる要素が丁寧に整理されました。山下さんも、「誰が使ってもわかりやすく、使っていて楽しいレイアウトが大切です」と語ります。
実際のアプリ操作を通じて、ロジックへの理解をさらに深めた松澤さん。細部へのこだわりを持つその姿勢こそが、“シチズンデベロッパー”にとって欠かせない重要なスキルのひとつといえるでしょう。そんな松澤さんの自作アプリが、いよいよ公開間近となりました。
次回は、完成したアプリのお披露目と、11月5日に開催される「FileMakerカンファレンス 2025」での「Claris FileMaker 選手権 2025」結果発表の模様をお届けします。


Claris FileMakerを使ってみよう!

Claris FileMakerは、Appleの100%子会社であるClarisが開発したローコード開発プラットフォームです。
プログラミングの専門知識がなくても直感的な操作でオリジナルのアプリを作成できるのが大きな特徴で、世界中で130万人以上が、業務効率化やアイデアの具現化に活用しています。
「こんなアプリがあったらいいな」という想いを、FileMakerなら短期間でカタチにできるのです。
FileMakerの製品ページでは、45日間使える無料評価版(Mac、Windows版)を提供中。
こちらのページからさっそくダウンロードしてみましょう。
本記事はClaris FileMaker 選手権 2025 事務局とのタイアップです。
著者プロフィール
栗原亮(Arkhē)
合同会社アルケー代表。1975年東京都日野市生まれ、日本大学大学院文学研究科修士課程修了(哲学)。 出版社勤務を経て、2002年よりフリーランスの編集者兼ライターとして活動を開始。 主にApple社のMac、iPhone、iPadに関する記事を各メディアで執筆。 本誌『Mac Fan』でも「MacBook裏メニュー」「Macの媚薬」などを連載中。
![アプリ完成間近! 歩数連動・誕生日メッセージ・タイマー機能など“こだわり”を凝縮/松澤ネキがアプリ開発に挑戦![仕上げ編]【Claris FileMaker 選手権 2025】](https://macfan.book.mynavi.jp/wp-content/uploads/2025/10/IMG_1097-720x540.jpg)