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“Appleと共鳴する”「Twelve South」のアクセサリ開発秘話。共同創業者が語る「製品づくりの哲学」

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“Appleと共鳴する”「Twelve South」のアクセサリ開発秘話。共同創業者が語る「製品づくりの哲学」

Apple製品向けアクセサリメーカー「Twelve South」の共同創業者でCCOのアンドリュー・グリーンさんに、製品づくりのこだわり、新製品についてお話を伺いました。

アンドリュー・グリーン

Twelve South(トゥエルブサウス)
共同創業者兼CCO

アンドリュー・グリーンさん

使う楽しさと美しさを両立させたアクセサリ

──Twelve Southを創業したきっかけを教えてください。

Appleユーザにフィットするアクセサリが存在しないことを課題と感じ、2009年に妻とともに起業しました。“自分たちが心から欲しいと思えるものをつくる”というAppleユーザとしての視点が出発点です。

──社名の由来は何ですか?

前職の「Griffin Technology」があったテネシー州ナッシュビルの通りの名前に由来しています。また、12種類ほどの少数でも優れた製品を届けたいという想いも込めたダブルミーニングになっています。

──“自分たちが心から欲しいと思えるもの”とは、たとえば?

この分野には、ユーザが不便に感じていながら誰も気づいていない“ブラインドスポット”が存在します。私たちは、それを見つけ出していち早く形にすることを大切にしています。たとえば、最初に開発したのはMacBookシリーズ用の縦型スタンド「BookArc」でした。当時は市場に存在しなかったアイデアだったのです。

Twelve South BookArc
「Twelve South BookArc」(価格:9400円)は、限られたデスクトップのスペースで大型のディスプレイを使う際に、MacBookを縦置きにして、外部出力ディスプレイの裏側にすっきりと収納できるアルミニウム製スタンドです。

──製品のデザインにおいて心掛けていることはありますか。

所有すること自体に喜びを感じられるような美しいデザインであることも重視しています。たとえば「HiRise」や「BookBook」といったシリーズも、単なるアクセサリではなく、Apple製品の世界観と調和するデザインが特長です。こうした“美しさの追求”こそが、他社との差別化につながります。

Twelve South HiRise Pro for iMac
iMacや小型のディスプレイを4段階の高さで調整できる「Twelve South HiRise Pro for iMac」(価格:2万4800円)は、小物を収納できるストレージを備え、背面にケーブルを通せるなどデザインと機能性の両立を体現しています。
Twelve South BookBook for iPhone
「Twelve South BookBook for iPhone」(価格:9400円)は、MagSafe充電に対応したiPhoneシリーズ用本革レザーケースです。ヴィンテージ洋書風のデザインと、ディスプレイスタンドに変形できる機能性が備わっており、同社の人気シリーズです。




Apple製品の進化を先読みした製品

AirFly Pro 2

【発売】
フォーカルポイント
【価格】
8400円
【URL】
https://focal.co.jp/products/twelve-south-airfly-pro-2

──今回、日本でも販売が始まった「AirFly Pro 2」について教えてください。

AirFlyシリーズは、Bluetoothに対応していない機器に接続することで、AirPodsなどのワイヤレスイヤフォンで音声を楽しめるアダプタです。ニッチな製品ですが、今ではApple Storeでも取り扱われる、弊社の代表的なプロダクトのひとつになりました。日本国内では正規代理店フォーカルポイントのオンラインストアでも購入できます。

──具体的には、どのようなシーンで活用できますか?

たとえば、飛行機の座席に設置されたエンターテインメントシステムは、有線ヘッドフォン/イヤフォンを使うのが一般的でした。しかし、AirFlyを3.5mmイヤフォンジャックに接続するだけで、すぐにAirPodsで快適に音楽や映像を楽しめます。

AirFly Pro 2
長距離フライトやジムのランニングマシンなど、有線でしか接続できない環境でもAirPodsなどのワイヤレスイヤフォンが接続できます。

──さまざまな環境でワイヤレスオーディオを楽しめるのですね。

はい。AirFly は「送信モード(TX)」と「受信モード(RX)」の両方に対応していますので、たとえばiPhoneの音楽をカーオーディオのスピーカから楽しむこともできます。今回の第2世代モデルでは、最新のBluetooth規格やオーディオコーデックに対応したことで、接続の安定性や低遅延性、音質がさらに向上しました。

AirFly Pro 2
Bluetooth 5.3の採用により、低遅延で安定した接続が可能です。また受信モードでもaptX HD、aptX、AAC、SBCに対応します。

──動画視聴やゲームでは「音ズレ」が気になるので、うれしい改善ですね。

持ち運びの際に邪魔にならないコンパクトサイズながら、バッテリ駆動時間は前モデルの最大16時間から25時間へと延長されました。これで長時間の移動やドライブでも安心して利用できます。私たちの製品は常にApple製品の技術進化を先読みし、それに最適化したソリューションをいち早く形にしてきました。日本の皆さんが、Twelve Southの製品を“選ぶ理由”をしっかり理解し、受け入れてくださっていることを誇りに思います。

AirFly Pro 2
AirPodsやその他のワイヤレスイヤフォンを最大2台まで同時に楽しめる「デュアルペアリング機能」を新たに搭載しています。
AirFly Pro 2
充電ポートはUSB-Cを搭載し、1回約2時間のフル充電で最大25時間以上のバッテリ動作が可能です。

スティーブ・ジョブズとの出会いと今も続くAppleとの特別な関係

アンドリュー・グリーンさんとスティーブ・ジョブズとの出会いは、2002年3月に東京で開催された「Macworld Expo」まで遡ります。当時、グリーンさんはGriffin Technologyで働いており、「PowerMate」というノブ型USBコントローラのデモを行っていました。その場に立ち寄ったジョブズとの会話を、グリーンさんはこう振り返ります。

「スティーブはその場で15〜20分ほど私たちと話をしてくれました。彼は製品に強い関心を示し、ホイールインターフェイスの可能性について語ってくれたのです。とてもインスピレーションを与えてくれる人物で、直接会話できたことは私のキャリアにおいて大きな出来事でした。彼は率直でありながら、プロダクトの本質を見抜く鋭い洞察力を持っていました。Macの操作をUSBノブで制御するというアイデアに対して『それは未来的だ』と言ってくれたこと、そしてMacとの連携に強い関心を示したことを今でも鮮明に覚えています」

歴史的な瞬間を共有したこの体験は、現在のTwelve Southのものづくりにも影響を与え続けているとグリーンさんは語ります。その後も同社はAppleと密接な関係を築いてきました。

「AppleとTwelve Southには3つの特別な関係があります。1つ目は、私たちの製品が世界中のApple Storeで展示されていること。2つ目は、Appleから製品開発のパートナーとして依頼を受けることがあること。そして3つ目は、Apple自身がTwelve Southの良き顧客であり、Apple Park(本社)でも私たちのHiRise Proなどが実際に使われていることです」。

スティーブ・ジョブズと製品のデザインについても語り合ったグリーンさん、「まるで長年の仲間のように、熱量のある対話ができたのは幸運でした」(写真はMacworld Expo Tokyo 2002時のもの)。

著者プロフィール

栗原亮(Arkhē)

栗原亮(Arkhē)

合同会社アルケー代表。1975年東京都日野市生まれ、日本大学大学院文学研究科修士課程修了(哲学)。 出版社勤務を経て、2002年よりフリーランスの編集者兼ライターとして活動を開始。 主にApple社のMac、iPhone、iPadに関する記事を各メディアで執筆。 本誌『Mac Fan』でも「MacBook裏メニュー」「Macの媚薬」などを連載中。

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