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「Appleは“成功の象徴”だった」──令和の虎CHANNELを制作するSuneight竹内社長に聞く | Appleと人と。

著者: 山田井ユウキ

「Appleは“成功の象徴”だった」──令和の虎CHANNELを制作するSuneight竹内社長に聞く | Appleと人と。

Apple/Apple製品に魅了された人物にフォーカスを当てる連載「Appleと人と。」


登録者数約120万人を抱えるYouTubeチャンネル「令和の虎CHANNEL」の制作で知られるSuneight。業界黎明期である2013年に創業して以来、動画マーケティング領域で数多くの企業を支援してきた。そんな同社の代表を務める竹内亢一社長は、かつてミュージシャンとして活躍し、27歳で動画業界に転身したというユニークな経歴の持ち主だ。社内のマシンをMacで統一するなど大のApple好きでもある竹内社長に、これまでの半生とApple製品への想いを伺った。

ミュージシャンから会社経営者へ。激動の半生

──まずはこれまでのご経歴とSuneightを創業するに至った経緯から伺います。

少しさかのぼりますが、僕は子どものころから目立ちたがり屋で自己顕示欲の塊だったんです。今42歳ですが、当時目立つといえばヤンキーか音楽をやるかという時代で。そこで小学6年生からギターを始めたんです。音楽番組「ミュージックステーション」に出演していたX Japanに憧れて、自分もビジュアル系バンドを組んで活動していました。

それで音楽をずっとやっていくなら、三重県の田舎じゃなくてやっぱり東京だろうと思いまして、中学を卒業した15歳で上京したんです。今思うとよく親も許したと思いますが、僕の一世一代のプレゼンが親を動かしたのかもしれません(笑)。

上京して12年間、ずっとバンド活動に明け暮れていました。23歳くらいからは音楽でご飯を食べていけるようになり、世界ツアーなども行っていました。ちょうどそのころ、音楽業界に転機が訪れて。iTunesの登場です。

──ミュージシャンにとっては大きな転換点ですね。

そうですね。CDが売れなくなったことで新しい戦略を立てる必要が出てきました。そこでひらめいたのが映像、つまりMVを付加価値にするということです。今でこそ当たり前ですが、当時は斬新なやり方でした。もちろん、CDを出すたびにMVを制作していたらものすごくお金がかかりますが、僕たちはツアーバンドだったのでオフショットが大量にあったんです。これを編集してMVにしようと考えました。で、どこで公開するかを考えたとき、無料で使えるYouTubeが目の前にあったわけです。

中学卒業後に上京し、12年間ミュージシャンとして活躍していたという竹内社長。iTunesの登場など激動の時代を駆け抜けた。

──だんだんと現在につながってきましたね!

MVとYouTubeを活用しながら音楽活動を続けていたのですが、27歳のときにバンドを解散することになりました。僕は30歳を超えてバンドをやるつもりはなかったので、次の道を模索したのですが、それまでずっと音楽しかやってこなかったので社会人経験もゼロなわけです。地元に戻ることも考えましたが、就ける仕事がない。幸いレコード会社などから声もかけてもらったのですが、今さら裏方としてミュージシャンをサポートするのは未練が残ると思いました。そこで自分に何ができるか考えたとき、手元に残っていたのが「映像」だったんです。

──MVを制作していた経験がここで活きたわけですね。

当時、YouTubeは今ほど有名ではなく、専門の映像制作会社もありませんでした。ただ僕はミュージシャンとしての活動の中でYouTubeを通ってきていたので、これから必ず時代がくると確信していました。そこでYouTube専門の動画マーケティングを始めたのです。

──今でこそYouTubeは誰もが知るサービスになりましたが、当時は企業に提案するのも大変だったのではないですか?

そうですね。ただ当時からYouTubeに注目していた会社はあって、そこにご提案をしました。その結果、クライアントの売上が一気に伸びていったんです。それで周りの会社の社長さんたちに口コミで広がって、そこからは営業をかけることもなく、仕事が途切れない状態が続きました。2013年にはSuneightを起業し、現在も事業は順調に成長しています。

──現在はSuneightのような動画マーケティングを手がける企業も増えてきました。Suneightの強みはなんでしょうか。

どの会社よりも早く動画マーケティングを始めたからこそ蓄積できた「データ」です。競合他社は当社ほどデータを持っていないので、動画マーケティングをする場合も仮説を立ててやってみることしかできないんです。しかし、マーケティングとは統計学です。質の高いデータを膨大に所有している当社は、仮説ではなく過去のデータをもとに確実なマーケティング戦略を立てることが可能です。この部分は他社にはない圧倒的な強みだと自負しています。

Suneightが制作を務める「令和の虎CHANNEL」は登録者約120万人の大人気チャンネル。Suneightはそのほかにも多数の人気チャンネルを手がけている。

起業と同時にMacを購入、それ以来Apple一筋

──これまでの歴史がよくわかりました。そんな竹内社長とApple製品の出会いについてお聞きします。

Apple製品を買ったのは実は起業したとき(2013年)なんです。ミュージシャンだったころや個人事業主だったころはお金もなかったのでWindows PCを使っていたのですが、法人化したときにMacに入れ替えました。買ったのは27インチのiMacで、当時46万円くらいしましたね。なぜMacにしたのかというと、僕がやっぱり目立ちたがりだからです(笑)。なんでも見た目から入る性格なので、起業するならかっこいいMacにしたいなと。たしか起業届を出すよりも先にMacを買ったんじゃないかな。当時のMacは高価だったので、「これで俺は退路を断つぞ」という気持ちもありました。そこからはもうMac一筋で、会社では経理などどうしてもWindowsが必要な部署を除いて、全員Macで統一しています。今思うと、Appleは自分の中で「成功の象徴」だったような気がします。

Suneightは一部の部署を除いて業務マシンをMacで統一している。ずらりと並んだMacは壮観だ。

──Macを使ってみていかがでしたか。

やっぱり最初は少し操作に戸惑いましたね。でも、1週間も触れていれば慣れました。

──Macの良さはどんなところだと思いますか。

機能でいうとスペースキーでファイルの中身を確認できる「クイックルック」は便利ですね。特に映像制作ではPhotoshopやIllustratorのようなソフトが必要になるので、そのファイルをクイックルックでサッと確認できるのは大きいです。また気持ち的なところだと、やはりMacはビジュアルがいいので、使っていてモチベーションが高まります。クリエイティブな作業ってこのモチベーションがすごく大事なんです。ちなみに僕らの世界でよく飛び交う質問に「PCはS/M/Lの何を使ってるの?」というものがあります。「M」はMacのことで、これを聞かれたときは「Mです」と誇らしい気持ちで答えていますよ。

──その他のApple製品は何をお使いでしょうか。

プライベートを含めるとiPhone、iPad、MacBook Pro、iMac Proと、ほぼApple製品でそろえていますね。実は数年前までスマホだけはAndroidを使っていて、その理由が「防水」でした。ただ、iPhoneも数年前から耐水仕様になったので、すぐに買い替えました。

竹内社長はiPhoneやiPad、MacBookProなどさまざまなApple製品を使用している。意外にもiPhoneは数年前にAndroidから買い替えたのだとか。

──「これは欠かせない」という周辺アクセサリはありますか。

僕らの仕事でいうならiPhoneの外付けマイクでしょうか。今やiPhoneは企業のYouTube動画を撮影するのに十分な画質を持っています。むしろより向上させるべきなのは音質なので、「iPhone+外付けマイク」が最適解だと考えています。

──今後の動画業界についてはどのように考えていらっしゃいますか。

今後も動画業界はまだまだ成長を続けるでしょう。AIなどの新しい技術も登場しているので、そこをどう乗りこなしていくかがポイントになりそうです。また映像の形も拡大していくと見ています。たとえばApple Vision Proが日本でも発売となりましたが、あれがもっと小型化するなりして生活に溶け込んでいけば、街中の広告を一人ひとりに違った内容で見せることだって可能になります。

──ファンゆえのApple製品へのリクエストなどはありますか。

見た目のバリエーションがもう少し多くてもいいとは思います。多様性の時代ですし、最近のMacの見た目は洗練されすぎているので、僕みたいなユーザのために無骨なモデルも出してくれるとありがたいですね。あとはカスタマイズ性や拡張性がもう少し高いとうれしいです。

著者プロフィール

山田井ユウキ

山田井ユウキ

2001年より「マルコ」名義で趣味のテキストサイトを運営しているうちに、いつのまにか書くことが仕事になっていた“テキサイライター”。好きなものはワインとカメラとBL。

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