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3Dプレゼンツール「Immersive Pitch」が作る“体験”がビジネスを動かす──MESON社長小林佑樹氏インタビュー

著者: 佐藤彰紀

3Dプレゼンツール「Immersive Pitch」が作る“体験”がビジネスを動かす──MESON社長小林佑樹氏インタビュー

空間コンピューティング技術を活用した体験デザインやプロダクト開発を行う株式会社MESONは、2025年3月、Apple Vision Pro用3Dプレゼンテーションツール「Immersive Pitch」を発表した。

「Immersive Pitch」は3Dプレゼンツールだ。「PowerPoint」や「Keynote」といった2Dプレゼンアプリの3D版にあたる。3Dでのプレゼンは、そこにないものを「実際に体験しているような感覚」が得られる点が2Dとの大きな違いだ。

たとえば、商談の場に持ち込めない大きさの「自動車」などの大型有形商材であったり、「映画館や球場での体験」など無形商材のプレゼンテーションを「Immersive Pitch」は得意とする。車に乗車した際の目線や、劇場から見下ろすスクリーンの見え方は2Dプレゼンで表現することが難しい。このような体験はVision Proがつくる精細な映像によって、本当の意味での“擬似体験”となる。“擬似体験”によって得られた経験が、商談を成功させる要因となりうる。

「Immersive Pitch」は従来のプレゼンと同様に1つのシナリオで完結し、体験者には操作をさせない設計になっている。VRショールームなどのコンテンツは、複数のシナリオを用意され、体験者自身が主体的に何をするかを選び取るという設計が多い。しかし、プレゼンテーションという文脈では、そうした選択させる形である必要がない。むしろ一本道で語ることで、発表者が伝えたいことを伝えやすいだろう。さらに言えば、1つのシナリオに絞り、体験者の操作が不要であることは、開発コストを抑えることにもつながる。

このほかにも、7名までの同時体験や、プレゼンターの操作はiPadやiPhoneで行えるなどの特徴を持つ。紹介動画をMESON公式がYouTubeにアップしているのでぜひ実際に見て欲しい。

MESON公式の「Immersive Pitch」紹介動画

こうした新たなプレゼンテーションツール「Immersive Pitch」はどのような背景で開発されたのか、今後どのようにアップデートされていくのかなどを、MESON代表取締役社長の小林佑樹氏に話を聞いた。

MESON社長・小林氏インタビュー

MESON代表取締役社長の小林佑樹氏。

MESONの事業と「Immersive Pitch」について

──まずはMESONの掲げるパーパスと行っている事業について教えてください。

MESONは2017年に創業し、空間コンピューティング領域に取り組んできました。私たちのパーパス「まなざしを拡げる」には、現実世界の見え方や捉え方を一変させるような瞬間を一人ひとりに提供したい、という思いが込められています。現実の見え方が固定化されてしまうと、人生の過ごし方や生き方が限定されてしまいます。そうならないよう、空間コンピューティングという技術を通じて、今まで見えなかったものや新しい過ごし方をイメージできる社会を目指しています。
事業内容としては、企業と共にリテールビジネス向けの新規事業や、アプリケーションの開発を主に行っています。お客様の先の顧客にどうやって新しい体験を届けるか、ということを重視していますが、企業の担当者の方も「今の技術を使ってどうやって新規事業やサービスを作ればいいかわからない」という方が多いので、私たちが企業の目指す方向や現状をヒアリングし、企画提案から実際の形にするまでご一緒しています。

──「Immersive Pitch」について、どのような経緯や背景で開発が始まったのでしょうか。

空間コンピュータを使ったビジネスを作りたいという思いから始まりました。Vision Proは直感的な操作が魅力ですが、一方で最初に目のトラッキングをしたり、操作方法を覚える必要があったりと、慣れないと操作が難しいという課題がありました。そこで、ユーザーが自分で操作しなくても、私たちが提供したい背景やコンテンツにたどり着ける仕組みが必要だと考えました。
この仕組みはつまり、「PowerPoint」や「Keynote」などでのツールで行えるプレゼンテーションです。このプレゼンテーションを3Dでも実現できるように開発したのが「Immersive Pitch」です。

──なぜ「3Dプレゼンテーション」に着目したのでしょうか?

前述した経緯に加えて、従来の2D資料では伝えきれなかった「空間的な情報」や「体験の流れ」を、3D空間でストーリーとして伝えることで、より深い理解や納得感を得てもらえると考えています。

──競合サービスとの違いや、MESONならではの強みは何ですか?

競合ツールは製造業向けのパーツ紹介が中心ですが、私たちはストーリー性や同時体験を重視しています。たとえば、プレゼンターが参加者の視点をコントロールしながら、全員が同じタイミングで同じ体験を共有できる仕組みを持っています。これは営業やプレゼンの現場で大きな強みになります。

「Immersive Pitch」の今後の構想、MESONが目指すもの

──将来的にプレゼンター自身でプレゼンテーション制作も可能になるのでしょうか。個人で制作をできるようにするためには何を改善すればいいのでしょうか。

現状でもUnityで作ってもらう形にすることは、できないわけではありません。しかし、将来的には企業の担当者さんなど、3Dに不慣れな人でも使えるツールにアップデートしていきたいと考えています。
そのためには、たとえば自然言語で入力した内容から作成できる仕組みや、誰でも使えるテンプレートが必要です。加えて、どんな流れで発表するのか、どこに何を配置すればいいのかというベストプラクティスを解説するドキュメントがあれば、一定のクオリティを担保してプレゼンを作れるツールとして使ってもらえると思っています。

──最後に、MESONとして「Immersive Pitch」以外にも取り組んでいきたいものがあれば教えてください。

XRカンファレンス「AWE USA 2025」に参加して、XRのユースケースというのが大まかに3パターンに収束してきていると感じました。具体的には、「AIのインターフェイスとしてのXR」「リッチメディアとしてのXR」「コミュニケーションツールとしてのXR」の3つです。
現在取り組んでいる「Immersive Pitch」は、「リッチメディアとしてのXR」に分類されますが、「AIインターフェイスとしてのXR」の領域でも何かできないかと考えています。




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著者プロフィール

佐藤彰紀

佐藤彰紀

『Mac Fan』編集部所属。ECサイト運営などの業務を経て編集部へ。好きなものは北海道と競技ダンスとゲーム。最近はXR分野に興味あり。

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