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夜空や星座をiPhoneで美しく撮影する方法

著者: 鹿野貴司

夜空や星座をiPhoneで美しく撮影する方法

夜空や星座を眺めるのは楽しいですが、その美しさを写真に収めるのは案外難しいもの。特に、ひと昔前は高価な機材や特殊な技術が必要でしたが、今はiPhoneを使えば一眼レフより手軽に天体を撮影できるのはご存じでしょうか。

天体用カメラアプリ「NightCapカメラで星の軌跡を印象的に捉えよう

撮影設定→カメラ:iPhone 13 Pro/広角カメラ、レンズ:26mm相当、絞り:F1.5、ISO:500、シャッター:30分

星の軌跡が流れている天体写真は通常、一眼レフでシャッターを数十分〜数時間開け続けて撮影しますが、かつては街明かりがあると空が昼のように明るくなってしまったので、真っ暗な場所でしか撮れませんでした。

それがデジタル時代になり「比較明合成」という技術が誕生しました。これは写真を重ね合わせる際、1画素ごとに比較して明るいほうを採用するもの。これで街明かりを必要以上に拾わず、長時間かけて星の軌跡を残すことができます。その「比較明合成」をMacやPCではなく、iPhoneで撮影しながら実現してしまうアプリが「NightCapカメラ」です。

NightCapカメラ

【開発】
Realtime Dreams Limited
【価格】
480円

使い方は簡単。iPhoneを三脚などで星空に向けて固定し、「星の軌跡」モードにしてシャッターを押すだけです。星は1時間に15度動くので、露出時間は30〜90分がよいでしょう。ちなみにこのアプリはiPhoneのバッテリ消費も少なく、フル充電であればiPhone 13 Proの場合はバッテリが切れることなく、下の写真を撮影できました。

メニューは日本語に対応しているので安心して使えます。星印のアイコンをタップすると撮影モードを切り替えでき、真っ暗な場所なら「光跡モード」でも軌跡は撮れますが、少しでも明かりがあれば「星の光跡モード」を選びましょう。

なお、撮影のポイントはレンズを向ける方角。軌跡は北極星を中心に同心円を描くので、北に向けるのがベストです。東西では斜めの軌跡となり、南では左右に弧を描きます。また、満月では夜空が明るく、相対的に軌跡が暗くなりがち。上の写真は半月の頃ですが、撮影条件としては新月が理想です。

iPhoneであれば安いテーブル三脚やスマホホルダで固定すれば十分ですが、三脚は価格に比例して使い勝手が向上するもの。この撮影時、筆者はLeofotoの「Leofoto MT-03(三脚部分)」「LH-25(雲台部分)」を利用しました。スマホホルダとマジックアーム、専用ケースのセットは実売価格3万円弱ですが、テーブル用三脚ながら耐荷重は約5kg。一度使うと手放せない一品です。

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「星モード」を使って満天の星空をくっきり写そう

撮影設定→カメラ:iPhone 13 Pro/広角カメラ、レンズ:26mm相当、絞り:F1.5、ISO:7616、シャッター:10秒

iPhoneの純正「カメラ」アプリでも「ナイトモード」を使えば30秒まで露光できるので、軌跡を描かない通常の星空撮影であればある程度くっきり写せます。ただしこの場合、空を必要以上に明るく写そうとしてしまい、空の色味がグレーになりがちです。

このようなときは、テクニック1でご紹介した「NightCapカメラ」の「星モード」を使うのがおすすめ。撮影時はiPhoneを三脚に固定してセルフタイマーを使うと、シャッターを押したときにカメラが揺れて写真にブレが生じるのを防ぎやすいです。また画角に関するコツは、星空と一緒に山の稜線や木々などを写すこと。星空だけを写してしまうと、ポツポツと点が見えるだけで何を撮った写真かわかりにくいのです。

「NightCapカメラ」では、セルフタイマーの撮影時間を1秒・3秒・5秒・10秒と細かく選択できます。揺れをしっかり吸収しつつサッと撮影するには、3秒か5秒を選ぶのがおすすめ。

「Lightroom」でレタッチすれば完成度がさらにアップ!

撮影設定→カメラ:iPhone 13 Pro/ワイドカメラ、レンズ:26mm相当、絞り:F1.5、ISO:1000、シャッター:10分

「NightCapカメラ」のような便利なアプリを使っても、星空は想像どおりのトーンで写らないことも多々あります。さらに星の軌跡など長時間におよぶ撮影では、星と一緒に飛行機や人工衛星の光跡が横向きの線で写り込んでくることもあるでしょう。

そこで、ちょっとしたレタッチをしてみましょう。上の写真は「NightCapカメラ」で撮影した写真に写っていた横向きの光跡3本をiPhone版「Lightroom」で消し、さらに明るさや色合いも調整したものです。

Lightroom

【開発】
Adobe Inc.
【価格】
無料 (App内課金あり)

「Lightroom」は多くのカメラマンが愛用するRAW現像ソフトですが、そのiPhone版はなんと基本無料。高度な撮影機能に加えて、無料でもさまざまな補正機能を利用できるので、ぜひ一度使ってみるのがおすすめです。

冒頭の写真をレタッチする前の写真。横向きの光跡は、飛行機や人工衛星などの光です。この線が入っているのもリアルですが、星にフォーカスしたい場合はレタッチで消してみましょう。
写真を読み込んで開いたら、下部のメニューから[修復]を選び、ブラシのサイズを調整して消したい部分を指でなぞるだけでOK。星の軌跡を残しつつ、不要の光跡を消すことができました。

著者プロフィール

鹿野貴司

鹿野貴司

写真家。2021年よりカメラグランプリ選考委員を務める。カメラのことから写真のことまで、幅広く執筆活動も行っている。近著『いい写真を撮る100の方法』(玄光社)。

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