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QRコードは枯渇しないの? コードの仕組みや特徴からおさらいしよう

著者: 牧野武文

QRコードは枯渇しないの? コードの仕組みや特徴からおさらいしよう

Webサイトへのアクセスや電子決済、電子チケットなど、日常生活に定着した「QRコード」。日々、これだけ多くのQRコードを使っていたら、いつかコードが枯渇してしまわないのだろうか。

QRコードは無限に生成できるものなのだろうか。これが今回の疑問だ。

※この記事は『Mac Fan 2022年6月号』に掲載されたものです。

日常生活でQRコードは欠かせない!

日常生活でQRコードを使うことは、もはや珍しいことではない。iPhoneでは標準「カメラ」アプリで簡単に読み取れるうえ、iOS 13で「コードスキャナ」機能が強化されたことで、検出能力も非常に高くなった。

多少QRコードが小さくても、読み取り時に手ブレしていても、コードを正確にスキャンできる。これにより、Appleユーザにとって、QRコードは非常に使い勝手のよい「トリガー」のひとつになっている。

URLや地図の位置情報、連絡先の交換など、皆さんもさまざまなシーンで使っていることだろう。

そのうちのQRコードを使った電子決済においては、まったく同一のコードが使用されると混乱が生じるため、1回ごとに使い捨てるのだという。

ここで疑問が生じた。毎日大量のQRコードを消費していったら、何年後かに枯渇する日がやってくるのだろうか。

たとえば、IPアドレスはすでに枯渇しており、拡張されたIPv6という規格に移行中だ。また「090」から始まる携帯電話番号が枯渇したため、「080」、「070」が使われており、さらに「060」で始まる番号を開放する準備も進められている。

データ通信専用SIMなどでは、もともとポケベル(ポケットベル)用の番号だった「020」までも割り当てられているというのだから驚きだ。

同じように、QRコードも何年後かに枯渇するのだろうか。

QRコードのモデルとバージョンとは?

QRコードは、現在のデンソーウェーブが1994年に開発した2次元バーコードだ。同社はQRコードに関する特許を多数保有しているが、JIS/ISOといった標準規格に準拠しているQRコードであれば誰でも自由に利用できるように開放している。これによりQRコードは全世界に広まることになった。

このQRコードにはいくつかのモデル(種類)とバージョンがある。現在、一般的にQRコードというと「モデル2」を指すことが多い。

この場合、1から40までバージョンが設定されていて、それにより「セル」の数が決められている。セルとは、QRコードを構成する四角い白黒のドットのことだ。

主に電子決済などでよく使われるのは「バージョン2」の25×25=625セルのもの。この中にはさまざまな制御のために使われるセルもあり、情報を載せられるのは359セルになる。

1つのセルは「0(白)」にするか、「1(黒)」にするかの2種類なので、単純計算すると合計で2の359乗のパターンを表現できることになる。

実際にこれをiPhoneの「計算機」アプリで計算すると「1.174e108」という数値になる。後半の「e108」というのは10の108乗という意味で、この数値が108桁の数字であることを表している。

QRコードより銀河のほうが先に終わる

中国でもっともよく利用される電子決済のひとつ「WeChat Pay」は、1年間の決済で約6000億枚ものQRコードを発行しているという。

あくまで目安ではあるが、先ほどの数値を6000億で割って、QRコードが枯渇をする年数をおおまかに計算してみた。その結果、QRコードは約「1.957e96」年後に足りなくなる可能性が高いことがわかった。

しかし、そう言われても、数字が大きすぎてピンとこない読者が大半だろうから、目安をお教えしよう。

オンライン百科事典「Wikipedia」によると、銀河は誕生から10兆年(1e13)から100兆年(1e14)で新しい恒星が誕生しなくなり、寿命を迎えるという。

つまり、仮に中国人がいくら大量に電子決済をしようとも、銀河が消滅するときまでQRコードは枯渇しないのだ。

二次元コードには無数の工夫が込められている!

QRコードの詳しい技術については、デンソーウェーブのWebサイトに掲載されている。これを読むと、単に情報を白黒のドットに置き換えただけではなく、無数の工夫が込められていることがわかる。

たとえば、偶然にもコードのセルが0(白)ばかりになって、QRコードがほとんど真っ白になってしまうこともあり得る。そうなると、コードスキャナはドットの位置の区別がしづらくなり、正確なスキャンができなくなってしまう。

そのため、QRコードを作成するときは、8種類の変換用のマスクが用意されており、データを変換し、生成された8種類のQRコードを評価し、もっともスキャンがしやすいQRコードを採用しているのだという。

QRコードは傷や汚れがあっても読み込める!

また、誤った情報を訂正する仕組みを持っていて、QRコード上に多少の汚れや傷があってもデータが正しく読み取れる。ほかにも、コードの3つの隅にファインダパターン(切り出しシンボル)を置き、QRコードが斜めになっていても、スキャナが瞬時に読み取れるようにするなど、小さな工夫をたくさん凝らしている。

QRコードは何年後に枯渇するのか?01
上記QRコードにはいずれも本誌WEBサイトのURLを埋め込んでいる。たとえQRコードにマーカーで汚れを入れても、問題なく目的のサイトが表示される。ぜひ試してみていただきたい。

QRコードが世界中で使われるようになったのは、こうした技術によって高速・正確に読み取りができるという性能も寄与したのだろう。アナログ情報とデジタル情報をつなぎ合わせるような場面では、もはやなくてはならないものになっている。

QRコードは何年後に枯渇するのか?02
最近ではコードスキャナの性能が向上しているため、このようにイラストに重ねても認識可能になっている。このコードは「無料ビジュアルQRコードジェネレーター」で作成したもので、ユーザ登録は必要だが、無料で作成することができる。

QRコードをスキャンするには?

iPhoneで素早く正確にQRコードをスキャンするには、コントロールセンターから「コードスキャナ」機能を使うのが便利だ。

QRコードは何年後に枯渇するのか?03
iPhoneのコントロールセンターからコードスキャナを起動すると便利だ。もしコントロールセンター上にボタンがない場合は、「設定」→[コントロールセンター]の[コントロールを追加]欄にある[コードスキャナー]を追加しよう。

もしコントロールセンターにない場合は、「設定」→[コントロールセンター]から[コントロールを追加]欄にある[コードスキャナー]を[+]で追加しよう。

写真からQRコードを読み込むことも可能!

また、標準「カメラ」アプリからでもQRコードはスキャンできるが、活用していただきたいのが、撮影した写真からQRコードをスキャンする方法だ。あとで再度読み取る可能性があるQRコードは、写真を撮ってしまおう。

それを「写真」アプリで開き、QRコード部分を長押しすると、[Safariで開く]などのメニューが現れる。

QRコードを他人と共有したいときも、QRコードの写真を撮り、それをメッセージなどで送れば、簡単に情報の共有ができる。

QRコードは何年後に枯渇するのか?04
QRコードを含む写真を撮っておけば、「写真」アプリ上でQRコード部分を長押しすれば、情報を抽出できる。なお、対応OS/機種でないと動作しないため注意しよう。

QRコードを画面いっぱいに拡大して撮影する必要はなく、QRコード周辺の文字なども一緒に撮影することで、あとで何のQRコードだったのか忘れることもない。

なお、この機能はiOS 15以降またはiPadOS 15.1以降を搭載した対応デバイスで利用可能だ。iPhoneの場合は、iPhone XS、iPhone XR以降が対象となる。

iPhone/iPadにこのような便利な機能を追加搭載してくれたことで、QRコードはますます我々にとって欠かせない存在になっている。

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著者プロフィール

牧野武文

牧野武文

フリーライター/ITジャーナリスト。ITビジネスやテクノロジーについて、消費者や生活者の視点からやさしく解説することに定評がある。IT関連書を中心に「玩具」「ゲーム」「文学」など、さまざまなジャンルの書籍を幅広く執筆。

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