Leicaが作ったiPhone向けカメラアプリ
私は、著者プロフィールに「Leicaと猫が好物」と決まって書くぐらい、Leicaというカメラを好んでいます。そのため、LeicaがiPhoneアプリ「Leica LUX」を発表したというニュースに飛びつかないはずもなく。速攻でインストールして撮りまくっています。
本記事では、その実力を明らかにするために、「Leica LUX」、iPhoneの「カメラ」アプリ、そして実際のLeicaのカメラで撮った写真を比較していきます。
知らない方のために説明すると、Leicaはドイツのカメラブランドです。その歴史は古く、ライカカメラジャパン株式会社の公式サイトの情報によると、起源は1849年に精密光学機器を製造していたドイツ・ウェッツラーの光学研究所にまで遡ります。
同社がはじめてのカメラを発売したのは、なんと1914年のことでした。今から110年も前のことです。
ちなみにLeicaという名前は、当時の経営者の名前であり、社名でもあった「Ernst Leitz(エルンスト・ライツ)」の「CAMERA」=「LEITZ CAMERA」の略とのこと。
一時、経営不振から他社の傘下になるなど紆余曲折ありましたが、2009年にカメラ部門のLeica Camera AG、顕微鏡部門のLeica Microsystems、測量機器部門のLeica Geosystemsに分社化され、現在は、Leica Camera AGからデジタル方式のレンジファインダカメラやミラーレスの一眼レフカメラなどが発売されています。
カメラ好きの父親に「ドイツの技術は世界一! Leicaのカメラは世界一!」と幼少のころから刷り込まれてきた私は、社会人になった記念にLeica M3を購入。その後、M2やM4、M6とわたり歩き、デジタルになってからはM9にチェンジ。現在はレンジファインダの「Leica M10-P」とミラーレスの「Leica SL2」を愛用しています。
無料トライアルで全機能を試せちゃう!
本題に戻りましょう。「Leica LUX」は日本のApp Storeからダウンロードできるものの、対応言語は英語とドイツ語のみ。といってもユーザインターフェイスは一般的なカメラアプリと同じなので、iPhoneユーザならおそらく問題なく使えるでしょう。最近のLeicaのカメラやレンズで採用しているフォントが使われているので、Leicaユーザはニヤリとすること間違いありません。
なお、アプリは無料でダウンロードできますが、すべての機能を使うには課金が必要です。無料のままだと、露出やピント、ホワイトバランスをマニュアルで調整できないほか、シミュレートできるレンズが1種類だけで、Leica独自のカラーサイエンスによるカラーグラデーションとフィルムプリセットを組み合わせた「LEICA LOOK」も、利用できるのが5種類に限られます。
そのため、Leica LUXを味わい尽くすには課金が必須なのですが、月額1000円もしくは年額1万円という価格設定は躊躇してしまうのが本音です。気になる方は、2週間のトライアル期間をぜひ活用してください。
“Leica風”を手軽に楽しむ「P MODE」
Leica LUXでは、オートで撮影できる「Automatic Photo Mode」と、代表的なLeicaレンズをシミュレートできる「Aperture Mode」が使えます。まずは「Automatic Photo Mode(P MODE)」を試してみましょう。標準アプリの「カメラ」と異なるのは、撮影に使うレンズをiPhone 15 Proなら13/24/48/77mmから選択できるところです。
ちなみに、iPhone 15だと13/24/48mmが、iPhone 15 Pro MAXだと13/24/48/120mmが利用できます。
ピントと露出は自動調整ですが、指定したポイントにフォーカスと露出を合わせることができます。さらに、マニュアル操作でホワイトバランスやISO感度、シャッタースピードの変更も可能です。また、ピントが合っている部分を赤く表示するフォーカスピーキングも用意されています。
と、これだけでもカスタマイズ性に優れたLeica風の写真が撮れるアプリとして優れているのですが、「Leica LUX」の醍醐味は、Leicaレンズのシミュレートができる「Aperture Mode(A MODE)」にあります。
Leicaレンズをシミュレートする「A MODE」
A MODEに切り替えると、代表的なLeicaレンズが選べます。
使えるレンズはiPhoneのモデルによって異なり、たとえばiPhone 15シリーズだと下記のとおり。いずれもLeicaを代表するレンズで、レンジファインダMシリーズ用の現行モデルとして販売されています。
iPhone 15 Pro
- Summilux-M 28 f/1.4 ASPH.
- Summilux-M 35 f/1.4 ASPH.
- Noctilux-M 50 f/1.2 ASPH.
- Noctilux-M 75 f/1.25 ASPH.
iPhone 15 Pro Max
- Summilux-M 28 f/1.4 ASPH.
- Summilux-M 35 f/1.4 ASPH.
- Noctilux-M 50 f/1.2 ASPH.
- APO-Telyt-M 135 f/3.4
P MODEでは露出補正だった部分がA MODEではF値のスライダーに変わり、絞り優先での撮影スタイルに切り替わります。A MODEではマニュアル操作は使えないので、単純にLeicaレンズをシミュレートして撮影を楽しむモードといえるでしょう。
Leicaらしい写真とは?
Leicaレンズの特徴は、秀逸な描写と美しいボケ味と言われています。ただ、今やiPhoneの標準「カメラ」アプリでも、ポートレートモードを使えばボケ感のある写真を撮ることが可能です。では、各アプリで撮影した写真にはどんな違いが現れるのでしょうか。
端的にいうと、Leica LUXでは、自然なボケ感をシャッターを切るだけで表現できました。iPhoneで「カメラ」でアプリで撮影した場合、あとから「編集」機能で被写界深度を調整することがあると思いますが、Leica LUXではその必要性を感じません。
ちなみにこれらの写真を「写真」アプリで開くと、Leica LUXで撮影した写真はポートレートモードで撮影されたことになっています。しかし、何故か被写界深度はオフになっていました。「カメラ」アプリで撮影したポートレート写真とは異なる処理が施されているようです。
本物のLeicaレンズとの違いは?
では、実物のLeicaカメラで撮った写真とはどのような違いがでるでしょうか。本来であれば、Leica LUXでシミュレートしているレンズの実物を用意したいところですが、もっとも安価なAPO-Telyt-M 135 f/3.4でも約66万円、Summilux-M 28やM 35だと100万前後、Noctilux-M 75にいたっては200万する高級レンズです。残念ながら私はそんな高価な現行レンズを所有していません。
そこで、フィルム時代のLeica M3から使い続けているSummicron 1:2/35mmを使って、Leica M10-Pで撮影した写真と比較してみました。このレンズは1969年から1979年まで製造されたオールドレンズですが、開放ではきれいにボケ、絞るとキリッとシャープに写る今でも十分通用するレンズです。
Leica LUXはアリ? Leica党の結論
実際のLeicaカメラで撮影した写真とは大きな差があるとはいえ、決して期待はずれのアプリというわけではありません。「カメラ」アプリとは異なるボケ感や味を楽しめ、美しい写真が撮れるのはもちろん、Leicaの代表的なレンズをシミュレートできることは、それらに手が届かないLeica好き(私も含め)にとって最高の体験です。
今後、シミュレートするレンズは増えていくようなので、それを踏まえて課金を検討するのもいいでしょう。私はひとまず無料期間を楽しんで、追加で1カ月くらいは課金して、より手軽なLeicaとして使ってみるつもりです。