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iPhone×Leicaのカメラアプリはアリ? ナシ? Leica歴30年越えのライターが「Leica LUX」を試した結論

著者: 松山茂

iPhone×Leicaのカメラアプリはアリ? ナシ? Leica歴30年越えのライターが「Leica LUX」を試した結論

Leicaが作ったiPhone向けカメラアプリ

私は、著者プロフィールに「Leicaと猫が好物」と決まって書くぐらい、Leicaというカメラを好んでいます。そのため、LeicaがiPhoneアプリ「Leica LUX」を発表したというニュースに飛びつかないはずもなく。速攻でインストールして撮りまくっています。

本記事では、その実力を明らかにするために、「Leica LUX」、iPhoneの「カメラ」アプリ、そして実際のLeicaのカメラで撮った写真を比較していきます。

Leica LUX | Pro Photo Capture

【開発】
Leica Camera AG
【価格】
無料(アプリ内課金あり)

知らない方のために説明すると、Leicaはドイツのカメラブランドです。その歴史は古く、ライカカメラジャパン株式会社の公式サイトの情報によると、起源は1849年に精密光学機器を製造していたドイツ・ウェッツラーの光学研究所にまで遡ります。

同社がはじめてのカメラを発売したのは、なんと1914年のことでした。今から110年も前のことです。

ちなみにLeicaという名前は、当時の経営者の名前であり、社名でもあった「Ernst Leitz(エルンスト・ライツ)」の「CAMERA」=「LEITZ CAMERA」の略とのこと

一時、経営不振から他社の傘下になるなど紆余曲折ありましたが、2009年にカメラ部門のLeica Camera AG、顕微鏡部門のLeica Microsystems、測量機器部門のLeica Geosystemsに分社化され、現在は、Leica Camera AGからデジタル方式のレンジファインダカメラやミラーレスの一眼レフカメラなどが発売されています。

カメラ好きの父親に「ドイツの技術は世界一! Leicaのカメラは世界一!」と幼少のころから刷り込まれてきた私は、社会人になった記念にLeica M3を購入。その後、M2やM4、M6とわたり歩き、デジタルになってからはM9にチェンジ。現在はレンジファインダの「Leica M10-P」とミラーレスの「Leica SL2」を愛用しています。

無料トライアルで全機能を試せちゃう!

本題に戻りましょう。「Leica LUX」は日本のApp Storeからダウンロードできるものの、対応言語は英語とドイツ語のみ。といってもユーザインターフェイスは一般的なカメラアプリと同じなので、iPhoneユーザならおそらく問題なく使えるでしょう。最近のLeicaのカメラやレンズで採用しているフォントが使われているので、Leicaユーザはニヤリとすること間違いありません。

なお、アプリは無料でダウンロードできますが、すべての機能を使うには課金が必要です。無料のままだと、露出やピント、ホワイトバランスをマニュアルで調整できないほか、シミュレートできるレンズが1種類だけで、Leica独自のカラーサイエンスによるカラーグラデーションとフィルムプリセットを組み合わせた「LEICA LOOK」も、利用できるのが5種類に限られます。

そのため、Leica LUXを味わい尽くすには課金が必須なのですが、月額1000円もしくは年額1万円という価格設定は躊躇してしまうのが本音です。気になる方は、2週間のトライアル期間をぜひ活用してください。

「Leica LUX」アプリを起動するとPRO版(課金)を勧められますが、右上の[×]をタップすれば無料で利用できます。ただし、すべての機能が使えるわけではありません。

“Leica風”を手軽に楽しむ「P MODE」

Leica LUXでは、オートで撮影できる「Automatic Photo Mode」と、代表的なLeicaレンズをシミュレートできる「Aperture Mode」が使えます。まずは「Automatic Photo Mode(P MODE)」を試してみましょう。標準アプリの「カメラ」と異なるのは、撮影に使うレンズをiPhone 15 Proなら13/24/48/77mmから選択できるところです。

ちなみに、iPhone 15だと13/24/48mmが、iPhone 15 Pro MAXだと13/24/48/120mmが利用できます。

iPhoneを横位置にしたときのアプリの画面。シャッターボタンの下に表示されている[P MODE]は、「Automatic Photo Mode」であることを表しています。ここをタップすると、モード変更や各種設定が可能です。
シャッター横の[24mm]をタップすると、撮影に使用するレンズを切り替えられます。iPhoneのモデルによって、選択できるレンズ内容は異なるので注意。

ピントと露出は自動調整ですが、指定したポイントにフォーカスと露出を合わせることができます。さらに、マニュアル操作でホワイトバランスやISO感度、シャッタースピードの変更も可能です。また、ピントが合っている部分を赤く表示するフォーカスピーキングも用意されています。

画面をタップすると緑の枠が現れ、その位置にフォーカスと露出が合います。
露出の補正は、スライダーを調整して行いましょう。
映像が表示されるエリアの左端にある半透明のバー(上図の赤い囲み)を左にスワイプすると(横位置の場合)、マニュアル操作に切り替わります。
マニュアル操作では、ホワイトバランスを切り替えたり、ISO感度やシャッタースピードをスライダーで変更したりすることが可能です。
フォーカスもスライダーで調整できます。[P MODE]→[Focus Peaking]をタップすればフォーカスピーキングが有効になり、ピントが合った部分を赤く表示してくれます。
スライダーの下にある[LEICA STD]をタップすると「LEICA LOOK」が選択できます。スタンダードをはじめ、ビビットやナチュラル、エターナル、モノクロなど11種類が選べます(無料版だと5つのみ)。

と、これだけでもカスタマイズ性に優れたLeica風の写真が撮れるアプリとして優れているのですが、「Leica LUX」の醍醐味は、Leicaレンズのシミュレートができる「Aperture Mode(A MODE)」にあります。

Leicaレンズをシミュレートする「A MODE」

A MODEに切り替えると、代表的なLeicaレンズが選べます。

シャッターボタン下の[P MODE]をタップし、モードを「PHOTO」から「APERTURE」に変更すると[A MODE]に切り替わります。

使えるレンズはiPhoneのモデルによって異なり、たとえばiPhone 15シリーズだと下記のとおり。いずれもLeicaを代表するレンズで、レンジファインダMシリーズ用の現行モデルとして販売されています。

iPhone 15 Pro

iPhone 15 Pro Max

シャッター横のレンズの名称部分(上図の場合は「75NTX」)をタップして、使用するレンズを選びましょう。

P MODEでは露出補正だった部分がA MODEではF値のスライダーに変わり、絞り優先での撮影スタイルに切り替わります。A MODEではマニュアル操作は使えないので、単純にLeicaレンズをシミュレートして撮影を楽しむモードといえるでしょう。

露出補正ではなく、レンズの絞り値をスライダー操作で変更できます。実際のLeicaレンズと同じように、F値による被写界深度の違いを体験することが可能です。

Leicaらしい写真とは?

Leicaレンズの特徴は、秀逸な描写と美しいボケ味と言われています。ただ、今やiPhoneの標準「カメラ」アプリでも、ポートレートモードを使えばボケ感のある写真を撮ることが可能です。では、各アプリで撮影した写真にはどんな違いが現れるのでしょうか。

端的にいうと、Leica LUXでは、自然なボケ感をシャッターを切るだけで表現できました。iPhoneで「カメラ」でアプリで撮影した場合、あとから「編集」機能で被写界深度を調整することがあると思いますが、Leica LUXではその必要性を感じません。

上が「カメラ」アプリ、下がLeica LUX(Summilux-M 35 f/1.4)で撮影した写真。「カメラ」だとアジサイの花以外が全体的にボケているのに対し、Leica LUXの場合は花と近しいレイヤーの葉も明瞭に写すため、より奥行きを感じられます。

ちなみにこれらの写真を「写真」アプリで開くと、Leica LUXで撮影した写真はポートレートモードで撮影されたことになっています。しかし、何故か被写界深度はオフになっていました。「カメラ」アプリで撮影したポートレート写真とは異なる処理が施されているようです。

本物のLeicaレンズとの違いは?

では、実物のLeicaカメラで撮った写真とはどのような違いがでるでしょうか。本来であれば、Leica LUXでシミュレートしているレンズの実物を用意したいところですが、もっとも安価なAPO-Telyt-M 135 f/3.4でも約66万円、Summilux-M 28やM 35だと100万前後、Noctilux-M 75にいたっては200万する高級レンズです。残念ながら私はそんな高価な現行レンズを所有していません。

そこで、フィルム時代のLeica M3から使い続けているSummicron 1:2/35mmを使って、Leica M10-Pで撮影した写真と比較してみました。このレンズは1969年から1979年まで製造されたオールドレンズですが、開放ではきれいにボケ、絞るとキリッとシャープに写る今でも十分通用するレンズです。

上から、「カメラ」アプリ、Leica LUX、Leica M10-Pで撮影した写真です。いずれも美しく撮れていますが、やはり圧倒的に目を引くのは3枚目でしょう。これはさすがに大きな差だと言わざるを得ません。

Leica LUXはアリ? Leica党の結論

実際のLeicaカメラで撮影した写真とは大きな差があるとはいえ、決して期待はずれのアプリというわけではありません。「カメラ」アプリとは異なるボケ感や味を楽しめ、美しい写真が撮れるのはもちろん、Leicaの代表的なレンズをシミュレートできることは、それらに手が届かないLeica好き(私も含め)にとって最高の体験です。

今後、シミュレートするレンズは増えていくようなので、それを踏まえて課金を検討するのもいいでしょう。私はひとまず無料期間を楽しんで、追加で1カ月くらいは課金して、より手軽なLeicaとして使ってみるつもりです。

撮影した写真は、そのまま保存できるだけでなく、Leica LUXのロゴ、絞り値とシャッタースピード、ISO、使用したモードとレンズの情報入りの画像としても書き出せます。絵画における額縁のように、写真の印象がさらに締まる気がします。

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著者プロフィール

松山茂

松山茂

東京の下町・谷中を拠点として日々カメラと猫を愛でながら暮らすフリーライター。MacやiPhone、iPadを初代モデルから使ってきたのが自慢。

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