2024年4月4日に、国民的な人気を誇る対戦型アクションパズルゲーム「ぷよぷよ」シリーズの新作「ぷよぷよパズルポップ」がリリースされた。

本作はAppleのゲーム向けサブスクリプションサービス「Apple Arcade」の専用タイトルとしても話題を集めているが、その狙いはどこにあったのか? 株式会社セガで「ぷよぷよ」シリーズの総合プロデューサーを務める細山田水紀(ほそやまだ・みずき)氏に話を聞いた。
世界に向けて開発した完全新作の「ぷよぷよ」
──まずは「ぷよぷよパズルポップ」のコンセプトを教えてください。
「ぷよぷよパズルポップ」は、ぷよぷよが持つ「連鎖する爽快感を楽しめる」という魅力を、はじめて遊ぶ人や世界中の方々に体験してほしいという想いから開発しました。そのため、今までのぷよぷよシリーズのポイントをしっかり押さえたうえで、可能な限りコンテンツを詰め込んでいます。
単純な「移植」ではなく、新しいストーリーやキャラクター、多彩なモードやルールを搭載することで、「新作の家庭用ゲーム」と同じレベルの完全新作としてリリースすることを目指して準備を進めました。

──たしかに、本作は多彩なルールやモードで遊ぶことができるなど、とにかくボリュームたっぷりの内容です。その意図を教えてください。
まず、家庭用ゲーム機向けの新作タイトルと同じボリュームのものを、最新のiPhone、iPad、MacといったAppleデバイスで遊んでほしいという狙いがあります。
正直にいうと、もっとスピードを重視してリリースする方法もあったのですが、「『ぷよぷよ』はこういうゲームです」と世界に向けて発信するには、“体験版”的なものではなく、徹底して作り込む必要があったんです。はじめて遊ぶ方やぷよぷよファン、ユーザの満足度を上げるためにはどうすればいいか考えた結果、完全新作と言えるフルボリュームで展開することにしました。




──現状でもボリューム満点ですが、まだまだアップデートによる追加コンテンツが控えているんですよね?
はい。なので、タイトルとしてはリリースできましたが、まだ「完パケ」できていない状態なんですよ(笑)。でもこれには、ゲームをリリースするスタイルが変わってきていることも影響しているんです。
──どのように変わってきているのでしょうか?
たとえば、ソーシャルゲームなどでは、リリース後のアップデートによるコンテンツ追加は一般的ですが、従来の家庭用ゲームは「作品をリリースして終わり」といったものが多かったですよね。
今ではDLCでコンテンツをあとから追加するタイトルも多くありますが、「ぷよぷよパズルポップ」でも、ユーザの皆さんの反応を見ながら対応したり、進化させたりするという、少し実験的なスタイルに挑戦したかったんです。
Apple Arcadeは世界への窓口
──今作は「Apple Arcade専用タイトル」というのも大きなトピックです。大人気タイトルであるぷよぷよの新作を、Apple Arcadeで配信するに至った経緯を教えてください。
前提として、弊社は2004年にMac版の「ぷよぷよフィーバー for macintosh」をリリースしたり、2013年にiPhone/iPod touch/iPad用の「ぷよぷよ!!クエスト」を配信したりしていました。そのため、「ぷよぷよ」のゲームの面白さや日本での高い認知度、そしてファンの多さについて、Appleから高く評価していただいていたのです。
そのうえで、ぷよぷよというゲームを世界に向けて発信したいと考えたときに、Apple Arcadeというプラットフォームは非常に魅力的でした。
──具体的にどのような点が?
たとえばモバイル向けタイトル「ぷよぷよ!!クエスト」は、日本以外でも、アジアの一部地域といった国外にも配信していますが、全世界で同時にサービスを展開しようとすると、開発やコストの面などのさまざまな要因から、弊社単独で進めるのは非常にハードルが高いと考えています。
その点、Apple Arcadeというプラットフォームであれば、開発段階からAppleのメンバーと対話をしながらスムースにグローバル市場にリーチでき、協力しつつ弊社がやりたいことを実現できるという、まさにWin-Winの関係でご一緒させていただくことになりました。
──たしかに、グローバル市場へのアプローチを考えると、Apple Arcadeは魅力的なプラットフォームですね。
おかげさまで「ぷよぷよパズルポップ」は米国のApp Store「トップ Arcadeゲーム」のランキングでも一時10位以内に入ることができました。しかし、これを自社だけで独自に実現しようとすると、多額の宣伝費をかけて広告を展開しなければなりません。
これは、Apple Arcadeというプラットフォームで配信したからこそ成し得たことだと思います。
── 一方で、Apple Arcadeでしか遊べないというのは、デメリットにもならないでしょうか。
たしかにそういった面もありますね。でも長い目で見れば、今回のApple Arcadeでぷよぷよをはじめて知った人もいると思いますし、将来的にほかの家庭用ゲーム機向けなどに展開されるものや、今後のぷよぷよシリーズのさまざまな展開を行った際、いろいろなゲーム機やサービスでプレイした経験がある人が多いほうが皆ハッピーになれるはずなんです。
そういう意味でも、Apple Arcadeでグローバルにアプローチしてユーザやファンを獲得することは、現時点では多少デメリットはあるかもしれませんが、将来的にはポジティブな要素のほうが多いと考えています。
昔からのコアなぷよぷよファンが楽しめる仕掛けも
──本作では、iPhoneのディスプレイをタッチして操作します。この操作方法について、ユーザの反応はいかがでしょうか?
元々コントローラでプレイした人が圧倒的に多いと思いますので、タッチ操作を使ったプレイに関しては、賛否両論あるだろうなと開発段階から予測していました。
もちろん、タッチ操作はプレイしづらいという声もあるのですが、反対に操作しやすい、遊びやすいという評価もいただいています。これには、「ぷよぷよ」があらゆるゲーム機やデバイスに移植してきた経緯や、iPhone自体のハードウェアの進化も深く関係しています。昔のデバイスでは実現できなかった操作感を味わえるようになっていますから。
設定で操作方法をカスタマイズしたり、外付けコントローラを使えたり、オートプレイ機能に対応していたりと、いわゆるゲームが苦手な人もスムースに遊べるような仕様も多数ご用意しています。とはいえ改善の余地はまだまだあると思うので、ユーザの皆さんの声を取り入れて、ブラッシュアップしてきたいですね。

──ユーザの皆さんに、特に注目してほしい部分はありますか?
いろいろありますが、たとえばキャラクターの誕生日やバックボーンの設定など、これまで外に出していなかった情報もゲーム内に盛り込んでいます。
あるキャラクターの誕生日に起動すると「おめでとう!」とお祝いする要素があったり、あるキャラクター同士が出会った日を教えてくれたり…。ファンにも刺さるような内容を散りばめているので、注目してほしいですね。




──では、最後にぷよぷよファンに向けてひと言お願いします。
まず、対象のAppleデバイスを購入するとApple Arcadeの3カ月無料体験が付与されますし、すでにApple Musicなどに加入されている方は、Apple Musicも含まれるサブスクリプションサービス「Apple One」に変更すれば、ほかのAppleサービスを利用しながらお得にゲームを楽しめるので、ぜひ一度プレイしてみてほしいですね。
それに、本作は利用規約として「プレイ動画規約」というものを公開しており、「ネタバレ」と書いてもらったらYouTubeなどで動画として公開してOKとしています。なので、実際にプレイしなくても、ゲーム実況配信者の動画などを見て一緒に盛り上がってもらえるとうれしいです。
ぜひ一緒に、「ぷよぷよ」最新作がアップデートで進化していく過程を楽しんでもらえればと思います。

著者プロフィール

毛内達大
エディター/ライター。IT・テクノロジー専門の月刊誌で編集者として従事。現在はフリーランスとして、紙・Webメディア問わず複数の媒体にて、インタビュー記事や導入事例など多ジャンルの記事を編集・執筆。