※この記事は『Mac Fan』2025年1月号に掲載されたものです。
iPad miniが3年ぶりにアップデートを遂げた。Apple Intelligenceはまだ大半の機能が英語のみの対応だが、新しいApple Pencil Proが使えるiPad miniは、ビジネスや創作の即戦力として大きく進化した印象だ。
iPad miniは唯一無二のデジタルノート。待望の第7世代が登場した
筆者は、iPad miniを第6世代モデルから使っている。展示会や発表会の取材の際、立ったまま相手の話を聞きながらメモを取ることが多いため、ノートとして愛用しているのだ。
以前はソニーのデジタルペーパーを使っていた。しかし、書いたメモをPDFにしてMacに取り込む手順が煩雑なことと、グレースケールの画面が表現力に乏しいという課題があった。一方、iPad miniなら「Goodnotes 6」で書いたメモがiCloudで同期され、色分けや音声メモなどの添付も手軽。また、デジタルペーパーのスタイラスペンよりApple Pencilのほうがペン先の減りが圧倒的に少く経済的だ。
第6世代から約3年を経て、Appleは第7世代のiPad miniを発売した。正確な名称はiPad mini(A17 Pro)だが、本稿では新iPad miniと呼ぶことにする。
Apple iPad mini(A17 Pro):Apple Intelligence、8.3 インチ Liquid Retina ディスプレ イ、128GB、Wi-Fi 6E…
新iPad miniは、オールスクリーンデザインの8.3インチLiquid Retinaディスプレイと、トップボタンにTouch IDセンサを内蔵する生体認証システムを継続採用。またApple Intelligenceにも対応する。デザインは第6世代モデルから変わっていないが、筆者が新iPad miniを使って実感した進化は大きく2点ある。

新iPad mini、2つの強化点。Apple Pencil Proへの対応とストレージのアップグレード
ひとつはApple Pencil Proへの対応だ。なお、Apple Pencil(USB−C)は使えるがApple Pencil(第2世代)には非対応である。
Apple Pencil Proは触覚フィードバックを内蔵している。ダブルタップでツールが切り替わったことや、スクイーズ(指先で握るような操作)でパレットツールが開いたことが確かな手応えで返ってくるため、操作ミスが減った。また、スクイーズに対応するアプリだと、ツールパレットからペンの種類や太さをすばやく選べるのも利点だ。一度Apple Pencil Proの快適さに慣れると、ほかのデジタルペンには戻れない。
もうひとつは、最低ストレージ容量が64GBから128GBにアップグレードされたことだ。筆者はiPad miniをオーディオプレーヤとしても使っている。配信サイトでハイレゾ楽曲をダウンロードすることも多いので、保存先であるストレージ容量が拡大したことはうれしい。ちなみに、オプションとして用意されるストレージの最大容量も、512GBに倍増した。

A17 Proチップのパワー。GPU性能の向上でゲームもサクサク!
筆者はiPad miniではあまりゲームをプレイしないが、新iPad miniのA17 Proチップは、前モデルに搭載されたA15 Bionicよりもグラフィックス性能が約25%向上しているという。
ベンチマークソフト「Geekbench 6」でパフォーマンスを計測したところ、新iPad miniで複数回測ったスコアの平均は、CPUのシングルコアが3000ポイント前後で、マルチコアが7500ポイント前後だった。一方、前モデルはシングルコアが2100ポイント前後、マルチコアが5600前後だったので、約30〜40%パフォーマンスが向上したことになる。
GPUのパフォーマンスを測るMetalスコアは、新iPad miniが2万4000ポイント前後で、前モデルは1万9800ポイント前後と25%ほどの差が出た。実際、筆者がiPhoneでよく遊ぶアクションゲーム「Sonic Dream Team」や「Air Twister」のグラフィックもスムースに再現される。
モデルごとに異なるiPadの魅力。iPad Proとminiは“出番”が違う
新iPad miniが前モデルから「変わらずいいところ」も多い。一番はサイズと質量が変わらないことだ。筆者にとって大切な、デジタルノートとしての使い勝手が一切損なわれていない。
筆者が5月に購入した11インチのiPad Proは、iPad miniよりも1ミリメートルほど薄いが、当然ながら縦横が大きく、150グラムほど重い。作業時間が長くなると、片手で持ちながらApple Pencil Proでメモを書くのはつらい。
しかし筆者の場合、画面の大きなiPad Proは、原稿の草稿を大判のデジタルノートにまとめながら頭の中を整理するときには欠かせない。iPad miniの小さなディスプレイだとアイデアが思うように広がらないのだ。やはり、サイズの違うiPadには各々の良さがある
残念なのは前面カメラの位置。新iPad mini用の純正キーボードケースにも期待したい
ひとつ、筆者が新iPad miniに期待していた進化が実現しなかった。それは前面の超広角カメラが「横向き」でないことだ。iPadをビデオ会議のディスプレイ兼カメラとして活用している方もいると思う。従来どおり縦向きのカメラだと、デバイスを横向きにしてビデオ通話すると、顔が下からあおられた映像になるほか、カメラに視線も合わせにくい。ビデオ通話はiPad miniのポータビリティの高さが活きる用途のひとつなので、横向きのフロントカメラは欲しかった。

話題は変わるが、Apple純正のSmart Folioは、iPad miniの軽さを損なわないもっとも相性のいいカバーのひとつだ。筆者は、デジタルノートとしてiPad miniを使うにはこのカバーがベストだと思う。ただ、iPad miniで長い原稿を書きたいときもある。今はスマートフォリオをスタンドにして、別途ワイヤレスキーボードを持ち歩いている。Appleには、iPad mini専用カバー兼キーボードを商品化してもらいたいところだ。

もっとも贅沢は言えない。前世代のiPad miniの発売からしばらく間が空いていたので、ややもするとiPhoneのように「“ミニ”をやめる」という決断を下すのではないか、と筆者は心配していた。ひとまず、今後始まるApple Intelligenceの新時代を、新しいiPad miniと一緒に迎えられることを喜ぼう
Apple iPad mini(A17 Pro):Apple Intelligence、8.3 インチ Liquid Retina ディスプレ イ、128GB、Wi-Fi 6E…
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著者プロフィール

山本敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ITからオーディオ・ビジュアルまでスマート・エレクトロニクスの領域を多方面に幅広くカバーする。最先端の機器やサービスには自ら体当たりしながら触れて、魅力をわかりやすく伝えることがモットー。特にポータブルオーディオ製品には毎年300を超える新製品を試している。英語・仏語を活かし、海外のイベントにも年間多数取材。IT関連の商品企画・開発者へのインタビューもこなす。