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Thunderbolt 4の後継規格「次世代Thunderbolt」の技術的進化

著者: 今井隆

Thunderbolt 4の後継規格「次世代Thunderbolt」の技術的進化

画像●Apple

※本記事は『Mac Fan』2023年4月号に掲載されたものです。

– 読む前に覚えておきたい用語-

ThunderboltUSB4 Version 2.0非対称通信
Intelが開発した光インターコネクト技術「Light Peak」をベースに同社がアップルと共同開発した汎用データ転送技術。最初のバージョンが2011年2月リリースのMacBook Proに搭載され、その後バージョンアップを重ねてMacに採用され続けている。2022年10月18日に発表されたUSBの最新規格。最大40GbpsのUSB 4(Version 1.0)をベースに最大80Gbpsのデータ転送速度を実現している。また過去の全バージョンのUSBとの互換性を備えている。対応製品は本稿執筆時点でリリースされていない。USB4 Version 2.0で追加された機能の1つで、8Kのような高解像度ディスプレイを複数駆動するような用途を想定し、USBの高速伝送レーンの一部の転送方向を逆転することにより、片方向120Gbps、もう片方向を40Gbpsの非対称の通信を実現する。

USB4 Version 2.0との関係性とは?

Intelは2022年10月19日、Thunderbolt 4の後継規格となるインターフェイス「次世代Thunderbolt」の概要を発表した。しかしその規格の正式名称や詳細な仕様は明らかにされていない。なぜIntelはこのタイミングで次世代Thunderboltをアナウンスしたのだろうか。

Intelは2022年10月19日、最新のThunderbolt 4規格となる「次世代Thunderbolt」(The Next Generation of Thunderbolt)の概要を発表した。その前日には共通の技術を採用したUSB4 Version 2.0が発表されている。
画像:Intel

「次世代Thunderbolt」発表前日の10月18日、USB規格の策定と普及促進を担うUSB-IF(インプリメンターズフォーラム)が、現在のUSB4の最新規格であるUSB4 Version 2.0の発表を行った。実は次世代Thunderboltは、この新しいUSB4規格と共通の技術をベースとした規格であり、次世代Thunderboltがその上位規格となる見込みだ。

このようなUSBとThunderboltの関係はThunderbolt 3から継続しており、Thunderbolt 3はUSB 3.1の、Thunderbolt 4はUSB 4(Version 1.0)の上位規格となっている。このため今回IntelはUSB4 Version 2.0のリリースに合わせて、その上位規格となる次世代Thunderboltの発表を行ったと推測される。

次世代Thunderboltは、USB4 Version 2.0で「Optional(オプション)」となっている40Gbps、80Gbps、120Gbpsといった高速規格を「Required(必須)」とする(上記規格である)と説明している。
画像:Intel

USB vs Thunderbolt 技術的背景に迫る

もともとUSBとThunderboltはまったく別のインターフェイス規格として登場した。USBはそれまで周辺機器ごとに異なっていた複数のインターフェイス(プリンタやスキャナなどのIEEE1284パラレルポート、モデムなどのRS-232C/RS-422シリアルポート、キーボードやマウスなどのPS/2ポート、ストレージなどのSASI/SCSIポート、その他)を統合し、かつ動作中に挿抜可能なPnP(プラグアンドプレイ)機能を持たせることを目標に開発された。

最初のメジャーリリースは1996年のUSB 1.0(最大12Mbps)で、その普及にはレガシーインターフェイスを全廃した初代iMac(1998年)が大きく貢献した。USBはその後2000年リリースのUSB 2.0(最大480Mbps)、2008年リリースのUSB 3.0(最大5Gbps)へと高速化を進めた。

一方のThunderboltはIntel社が複数のチップを接続する目的で開発した光インターコネクト技術「Light Peak」がベースとなっており、その規格化にはAppleが協力しMini DisplayPortインターフェイスに統合したThunderbolt 1.0(最大10Gbps)が2011年にリリースされた。こちらはシステムのバックボーンであるPCIe(PCI Express)を外部接続することを目的に設計されており、同時にディスプレイポートも伝送できる仕様となっている。2013年には最大20GbpsをサポートするThunderbolt 2へとアップデートされた。ここまでは両規格の間で互換性はまったくなかった。

転機が訪れたのは、2015年にリリースされたThunderbolt 3である。このインターフェイスはそれまでのMini DisplayPortに代わって、USB 3.1で規定されたUSB-Cポートに変更された。この時点でThunderbolt 3はUSB規格を取り込み、さらにThunderboltの特徴であるPCIeのトンネリングとディスプレイポートの伝送をサポートした。このとき、USB 3.1ではオプションとなっていた多くの機能がThunderbolt 3では標準サポートされたことから、事実上Thunderbolt 3はUSB 3.1の上位規格となっている。同様に2020年にリリースされたThunderbolt 4では、その前年にリリースされたUSB4の上位規格となっている。

USB規格はパソコンなどのITデバイスだけでなく、スマートフォンやテレビなどのAV機器などにも広く普及を進める意図から、高性能または高機能が求められる仕様の多くはオプションに設定されている。一方でパソコンなど高性能かつ高機能なプロセッサと組み合わせて使用することが前提のThunderbolt では、USB規格のオプション仕様を含めてその機能の多くが必須に設定されている。Thunderbolt対応製品がUSB対応製品より高価なのも、より高いスペックを求められることが大きく影響していると言っても過言ではないだろう。

高速化の技術的進化とは

もともとUSBとThunderboltはまったく別のインターフェイス規格として登場した。USBはそれまで周辺機器ごとに異なっていた複数のインターフェイス(プリンタやスキャナなどのIEEE1284パラレルポート、モデムなどのRS-232C/RS-422シリアルポート、キーボードやマウスなどのPS/2ポート、ストレージなどのSASI/SCSIポート、その他)を統合し、かつ動作中に挿抜可能なPnP(プラグアンドプレイ)機能を持たせることを目標に開発された。

次世代Thunderboltの高速性を活かすアプリケーションとして、8K/HDRディスプレイのサポート、高速なバックアップ、高リフレッシュレート表示、SSDアクセスの高速化、高品位なキャプチャやストリーミングなどを挙げている。
画像:Intel

最初のメジャーリリースは1996年のUSB 1.0(最大12Mbps)で、その普及にはレガシーインターフェイスを全廃した初代iMac(1998年)が大きく貢献した。USBはその後2000年リリースのUSB 2.0(最大480Mbps)、2008年リリースのUSB 3.0(最大5Gbps)へと高速化を進めた。

一方のThunderboltはIntel社が複数のチップを接続する目的で開発した光インターコネクト技術「Light Peak」がベースとなっており、その規格化にはAppleが協力しMini DisplayPortインターフェイスに統合したThunderbolt 1.0(最大10Gbps)が2011年にリリースされた。こちらはシステムのバックボーンであるPCIe(PCI Express)を外部接続することを目的に設計されており、同時にディスプレイポートも伝送できる仕様となっている。2013年には最大20GbpsをサポートするThunderbolt 2へとアップデートされた。ここまでは両規格の間で互換性はまったくなかった。

転機が訪れたのは、2015年にリリースされたThunderbolt 3である。このインターフェイスはそれまでのMini DisplayPortに代わって、USB 3.1で規定されたUSB-Cポートに変更された。この時点でThunderbolt 3はUSB規格を取り込み、さらにThunderboltの特徴であるPCIeのトンネリングとディスプレイポートの伝送をサポートした。このとき、USB 3.1ではオプションとなっていた多くの機能がThunderbolt 3では標準サポートされたことから、事実上Thunderbolt 3はUSB 3.1の上位規格となっている。同様に2020年にリリースされたThunderbolt 4では、その前年にリリースされたUSB4の上位規格となっている。

USB規格はパソコンなどのITデバイスだけでなく、スマートフォンやテレビなどのAV機器などにも広く普及を進める意図から、高性能または高機能が求められる仕様の多くはオプションに設定されている。一方でパソコンなど高性能かつ高機能なプロセッサと組み合わせて使用することが前提のThunderboltでは、USB規格のオプション仕様を含めてその機能の多くが必須に設定されている。Thunderbolt対応製品がUSB対応製品より高価なのも、より高いスペックを求められることが大きく影響していると言っても過言ではないだろう。

次世代ThunderboltやUSB4 Version 2.0では、計4本ある高速伝送路の伝送方向を切り替えることができる。これにより非対称通信が可能になり、ディスプレイ出力のような単一方向のみの伝送路をさらに拡張することができる。
画像:Intel

著者プロフィール

今井隆

今井隆

IT機器の設計歴30年を越えるハードウェアエンジニア。1983年にリリースされたLisaの虜になり、ハードウェア解析にのめり込む。

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