2023年3月、Sonosはワイヤレススピーカの新モデル「Sonos Era 300」と「Sonos Era 100」をリリースした。「Era 300」は、ドルビーアトモスによる空間オーディオに対応した注目機だ。空間オーディオ対応楽曲が増える中、その使い心地をレビューする。
Sonos Era 300
Sonos Era 100
空間オーディオに感動
2020年にリリースされたiOS 14から実装された「空間オーディオ」は、前後左右から音が聞こえてくるような感覚が楽しめ、まるで映画館のように、四方から包み込まれるような臨場感を味わうことができる3Dオーディオ機能だ。
当初は「Apple TV+」や「iTunes Store」の対応ビデオで利用できたが、2021年6月にApple Musicの楽曲が対応を果たしたことで、普及に拍車がかかった。私もAirPods Proを使ってはじめて「空間オーディオ」対応楽曲を聴いたときに、大きな衝撃を受けたのを覚えている。
それからずっと密かに抱いてきたのが、「空間オーディオをスピーカで体験したい」という欲求だった。文字どおり“音に包まれる”感覚を味わってみたい…。決してオーディオマニアではないが、空間オーディオには、そう思わせるだけの魅力があった。
そんな私の想いを知ってか知らずか、ワイヤレススピーカ分野のパイオニアであるSonosが空間オーディオ対応スピーカをリリースするというのだから、レビューしない手はない。それが、3月に発売されたワイヤレススピーカ「Era 300」だ。
部屋に合ったチューニング
まずは本体のデザインに触れよう。「Era 300」のサイズは260(W)×160(H)×185(D)ミリで、重量は4・47キログラム。カラーはブラックとホワイトで、いずれもマット仕上げだ。バッテリを搭載しない据え置き型スピーカなので、ある程度のスペースは要する。
その分、左、中央、右、そしてハイトチャンネル専用のパワフルな6つのスピーカを搭載しており、同社のラインアップでは、サウンドバー以外の製品ではじめてドルビーアトモスによる空間オーディオの対応を果たしている。
セッティングは「Sonos アプリ」から簡単に行える。本体を電源につなぐと、「Sonos アプリ」がスピーカを検出し、システムに追加する。あとはアプリの指示に従ってネットワークに接続し、アプリ上で設定したい部屋にスピーカを追加するだけだ。
セッティング後にぜひ設定したいのが、Sonos製品のほとんどのモデルが対応している「Trueplay」だ。いわゆるサウンドの最適化機能で、部屋の壁、家具、そのほかの壁からの音の反射を測定して、スピーカの設置場所に適した音質に調整してくれる。
チューニング方法は2種類あるが、アップルユーザはぜひ「高度なチューニング」を選んでほしい。iPhoneやiPadなどのマイクを使用して、部屋の中を歩き回りながら、より正確にカスタマイズされたチューニングを行ってくれる(アンドロイド端末はクイックチューニングのみ対応)。
イヤフォンとは別次元
「Era 300」はBluetoothやWi-Fi、AirPlay 2経由で、音楽をストリーミング再生できる。注意すべきは、BluetoothとAirPlay 2は空間オーディオには対応していないということだ。
たとえば、「ミュージック」アプリで空間オーディオに対応した楽曲を再生し、AirPlay 2で「Era 300」にストリーミングしても、それは「空間オーディオ」にはなっていない(もちろん、AirPlay 2再生でも、素人の耳では驚きのサウンドクオリティだが…)。
執筆時点で「Era 300」から空間オーディオ対応楽曲を再生するには、「Sonos アプリ」か、「Amazon Music」アプリ(アマゾンミュージックHDの登録が必要)を使う必要がある。少々厄介だが覚えておこう。「Sonos アプリ」上でApple MusicやAmazon Musicを紐づければ、あとは同アプリ上で楽曲にアクセスできる。[再生中]画面にドルビーアトモスのロゴが表示されていれば、空間オーディオで再生されているサインだ。
肝心の「Era 300」による空間オーディオサウンドは、正直、イヤフォンでの衝撃を遥かに上回るものだった。文字だけで伝わらないのが悔しいのだが、ぜひ多くの人に味わってほしい。たとえば、個人的に何度も何度も聴いてきた宇多田ヒカルの「First Love」を流してみたところ、これまで“聴こえなかった音”が味わえた。ヘビロテした曲こそ、新たに空間オーディオで聴くのがおすすめだ。
次のステップはホームシアター化
なお、現状「Era 300」の空間オーディオは、ホームシアター向けのドルビーアトモス音声を再生することはできない。同社のサウンドバー「Arc」や「Beam(Gen 2)」などを使うことで、はじめてドルビーアトモス対応ビデオを視聴できる。「Arc」を使ってドルビーアトモス対応の映画「トランスフォーマー」を視聴する機会があったのだが、映像込みの空間オーディオは、また“別次元のスゴさ”だった(語彙が追いつかないほど…)。
さらに「Era 300」を「Arc」などと組み合わせれば、高度なマルチチャンネル再生も実現する。いつの間にか、部屋中がSonos製品であふれている予感…。
※本記事は『Mac Fan』2023年7月号に掲載されたものです。
著者プロフィール
笹本貴大
『Mac Fan』編集長。1989年生まれ、東京都青梅市出身。ベビーテックに興味あり! FP3級、世界遺産検定3級、名探偵コナン検定1級。 Xアカウント:@ssmt_tkhr