Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

ワイヤレスヘッドフォン「Sonos Aceレビュー」。AirPods Maxの最強ライバル登場か⁉︎

著者: 山本敦

ワイヤレスヘッドフォン「Sonos Aceレビュー」。AirPods Maxの最強ライバル登場か⁉︎

米国で人気のオーディオブランド「Sonos」から待望のヘッドフォン登場

Sonosというオーディオブランドをご存じですか? アメリカでSonosは今、BoseやJBLと肩を並べるほどの人気を誇っています。2000年代初頭、Sonosは当時まだ珍しかったPCとインターネットによる高品位なネットワークオーディオ再生が楽しめるミュージックシステム「ZP100」を発売しました。この製品が瞬く間に評判を呼び、以降Sonosは急成長を遂げます。

「HomePod」シリーズのほかに、サードパーティ製品としてもっとも早くAirPlay 2やApple Musicに対応したスマートスピーカはSonosの「Sonos One」でした。コンパクトな本体に6つのドライバユニットを搭載する「Sonos Era 300」は、Apple Musicが配信するドルビーアトモスによる空間オーディオをもっとも心地よく楽しめるスマートスピーカのひとつです。

そして、「Sonos Ace」はSonosが商品化した初めてのワイヤレスヘッドフォンです。「Sonosのスピーカのサウンドが気に入っている。だから外出先でも楽しみたい」という多くのユーザからの声を受けて、およそ3年の開発期間を経て本機が誕生しました。

Sonos Ace

【発売】
Sonos
【価格】
7万4800円

【サイズ】160(W)×85(D)×191(H)mm
【主なスペック】ドライバー:40mm ダイナミック、対応コーデック:aptX Adaptive/aptX Lossless/AAC/SBC、最長再生時間:約30時間、重量:約312g、カラーバリエーション:ブラック/ソフトホワイト
【URL】https://www.sonos.com/ja-jp/shop/sonos-ace
【製品貸与】Sonos

Sonos Aceはアクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載するワイヤレスヘッドフォンです。筆者は本機が6月下旬に発売される少し前から実機を入手して、WWDC24取材のためアメリカを往来する空の旅で試しました。ANCの消音効果はとても上質でした。単に騒音をビタっと止めるノイキャンヘッドフォンは、長時間使い続けるとその不自然さに耳が疲れてくるものです。Sonos Aceの場合、環境騒音がすうっと消えて、音楽に動画やゲームのサウンドが小さめな音量でもしっかりと聞こえてきます。

空の旅の道中、機内にSonos Aceを持ち込んでテストしました。アクティブ・ノイズキャンセリング機能の効果は強力、かつ上質。ノイズがすっときれいに消えます。

一方で、街歩きや地下鉄による移動の際にも本機が期待どおりの消音効果を発揮します。アウェアモード(外音取り込み)に切り替えると、再生しているサウンドの鮮やかさはそのままに、クリアな環境音が同時に聞けます。内蔵するマイクの精度も高いので、MacBookプロにつないでビデオ会議による取材やミーティングにもSonos Aceが真価を発揮します。

専用ケースにヘッドフォンを折りたたんで収納。マグネットで着脱するインナーケースにケーブルを入れてもなおコンパクトに持ち運べます。

AirPods Maxの良きライバル。ANC性能は甲乙つけがたい!

Sonos Aceは搭載する機能、そして価格帯的にもアップル「AirPods Max」の良きライバルに位置づけられると思います。筆者はAirPods Maxも普段愛用しています。ANC機能の完成度はどちらのヘッドフォンも甲乙付けがたいほどハイレベルです。外音取り込みの透明度はAirPods Maxのほうが一歩リードしているように感じますが、耳全体を優しく包み込むような装着感の心地よさはSonos Aceのほうが上手です。

ふたつのヘッドフォンにiPhone 15 Proをペアリングして、Apple Musicから同じボーカル系の楽曲を再生して聴き比べました。Sonos Aceは柔らかく温かみのあるサウンドが特徴。低音再生には厚みと力強さを感じますが、Sonosのスピーカ製品のようなアタックの鋭さはやや抑えめで、しなやかさのほうが支配的です。AirPods Maxの高い解像感、低音の切れ味の良さともまたひと味ちがいます。

USBケーブルでMacBookに有線接続すると、最大48kHz/16bitのロスレス再生が楽しめます。Apple Musicのロスレスコンテンツの高音質がよくわかります。

Sonos Aceは、良く言えばさまざまなタイプの音楽再生をソツなくこなします。もっとメリハリを効かせたサウンドを楽しみたい方は、iOS/Androidに対応するモバイルアプリの「Sonos」が搭載するサウンドイコライザを活用し、音質をカスタマイズするとよいでしょう。

Sonos

【開発】
Sonos, Inc.
【価格】
無料(アプリ内課金あり)
モバイルアプリの「Sonos」に搭載されているサウンドイコライザ。高音域と低音域をアレンジして、よりパンチの効いたサウンドにカスタマイズができます。

使い込むほどに満足度が増す、価格以上の価値

Sonos Aceには、装着しているユーザの顔の向きをセンサで判定して、コンテンツの音が聞こえてくる方向と連動させるダイナミックヘッドトラッキングの機能があり、アプリからオン/オフを切り替えて楽しめます。

Sonosのサウンドバー「Sonos Arc」にWi-Fi経由でペアリングすると、テレビに接続したサウンドバーのコンテンツの音をワイヤレスで受けて、Sonos Aceで聴くというユニークな「テレビ音声スワップ」が使えます。このときにテレビで再生するコンテンツの音声がドルビーアトモスに対応していれば、Sonos Aceで没入感あふれる空間オーディオ再生も味わえます。

さらにアプリからダイナミックヘッドトラッキングをオンにすると、コンテンツの中に入り込んだような臨場感が極まります。大きな音を出せない夜の時間帯にも、サウンドバーと同等の迫力あふれる空間オーディオ体験がヘッドフォン再生で味わえるので、とても実用的です。

ヘッドフォンの掛け心地を調整するスライダーのパーツにはステンレススチールを採用。煌びやかな金属のパーツを、マットな質感のイヤーカップとヘッドバンドと見事に調和させたプレミアムなデザインはSonosならでは。使い込むほどに満足感が押し寄せてきます。

イヤーカップとヘッドバンドの外装はマットフィニッシュ。ヒンジにステンレススチールを組み合わせて、鮮やかなコントラストを際立たせています。
イヤークッションはマグネット式で簡単に着脱交換ができます。長期間使うと劣化しがちなパーツなので、ユーザ目線でとてもありがたい仕様です。

※この記事は『Mac Fan』2024年9月号に掲載されたものです。

おすすめの記事

著者プロフィール

山本敦

山本敦

オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ITからオーディオ・ビジュアルまでスマート・エレクトロニクスの領域を多方面に幅広くカバーする。最先端の機器やサービスには自ら体当たりしながら触れて、魅力をわかりやすく伝えることがモットー。特にポータブルオーディオ製品には毎年300を超える新製品を試している。英語・仏語を活かし、海外のイベントにも年間多数取材。IT関連の商品企画・開発者へのインタビューもこなす。

この著者の記事一覧