初めて訪れているオーストリアでこの原稿を書いている。首都ウィーンの街の中にある「ビオホテル」と呼ばれる、食事とリネンがすべてオーガニックという、ちょっと特殊な宿泊施設に1週間弱ほど滞在している。
ビオホテルとは、オーストリア発祥のウェルネスホテルの概念で、厳格なルールを遵守することでその認証を得られ、ビオホテルと名乗ることができる。隣国のドイツとオーストリアを中心に、スイス、イタリア、スペインなど周辺の欧州諸国に徐々に広まった。現在では全世界で100を超えるほどに増えている。ちなみに、日本にも3つある。
さて、ウィーンでのぼくの移動手段は公共自転車、そして地下鉄と路面電車トラムだ。この2つの列車に関しては、初めて訪れるぼくのような外国人でも、簡単に乗ることができる。
すべて数字で割り振られていて路線を間違いにくいうえに、街の中心部を網の目のごとく網羅する。結果、どこへ行くにも歩く距離が短く済み、タクシーに頼る場面がほぼないのだ。ちなみに、Uberも何度か試してみたが、すべて3〜4分以内に登場。英語を話せない人が多かった点を除くと、Uberが普及する他の都市と比べても、かなりの高得点をつけられる。旧西側ヨーロッパは、ほぼすべての国を旅してきたが、Uberと列車を合わせた交通網の利便性において、この街は欧州トップクラスと感じた。
さらに、「シティバイク(CITYBIKE)」と呼ばれる市が運営する公共自転車が素晴らしかった。
まず、他の街の公共自転車で多く採用されている「事前のWEB登録」が不要な点がいい。クレジットカード1枚持って、自転車がずらっと並ぶ街のターミナルの端末で、画面に沿って申し込みをすると、即使えるようになる。しかも、その手順が簡素で、わずか1〜2分で完了。ぼくのこれまでの経験上、これはどの都市に比べても早い。
ただし、日本語の案内はなく、そういった意味では、日本語で登録作業ができる、公共自転車の先駆けであるパリの「Velib」が1歩リードするかもしれない。だが、簡単な英単語をクリックするだけで済むのでご安心を。
もっとも驚いたのが、自転車ターミナルの多さである。「どこで返却しようか」と悩まなくて済むことが何より楽だった。これも欧州随一と言えるだろう。ぼくはこれまで、ベルリン、コペンハーゲン、パリ、ロンドン、マドリッドなどで、同様の公共自転車を使ってきたが、ウィーンはどの街よりも使いやすかった。
前述の列車やUberを総合すると、ウィーンは、過去訪れた欧州の大都市ではナンバーワンのモビリティであった。
最近では、欧州のほとんどの主要都市に、公共バイクがある。大都市の交通渋滞と排気ガスによる大気汚染を緩和すべく、各国が本気で動き始めているのだ。そして、実際に大半の都市で、大きくその効果が出ているという。(次号へ)

※この記事は『Mac Fan 2018年9月号』に掲載されたものです。
著者プロフィール

四角大輔
作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈noiseless world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。