映画などで描かれる、「いきなりメジャーなメディアに大抜擢」というような奇跡は、残念ながら、圧倒的に恵まれた才能を持つ一部の人間限定だ。これは、ぼくが音楽アーティストのプロデュースに従事した10年間で学んだこと。
誰もが知っているようなビッグアーティストのほとんどの初出演は、深夜のマニアックなラジオ音楽番組や、音楽専門誌といった「専門メディア」である。最初にその売り込みをするのは、プロデューサーであるぼくの仕事だった。
もしも、最初からいきなり数十万を超えるようなユーザを抱えるメジャーなメディアに出演できたとしても、見過ごされてしまうか、一発屋で終わる可能性がとても高い。なぜなら、そういった大きなメディアが抱えているのは、移り気が激しく、情報をサラッとしか見ない受け身のファンがほとんどだからだ。
しかし、専門メディアは、読者や視聴者の数は少ないものの、隅々までしっかりと目を通して(聴いて)くれる熱量の高いアクティブユーザが多く存在するため、必ずなにかの反応をしてくれる。
そうして小さな出演を重ねながら、フォロワーをコツコツと増やしていく手法を「コアファンの構築」と呼び、音楽アーティストのプロデュースにおいても、ぼく自身のブランディングにおいても、非常に大事にしている。
メディア出演というのは、ただ出るだけでは意味がない。あなたの発信を受け取ったユーザからの反応を引き出し、口コミを誘発して初めて意味を成す。だから、掛け算としてSNSを活用すべきなのだ。今から10年前、ぼくは日本に登場したばかりのツイッターをフル活用していた。たとえば、自分が書く記事が公開される前に、ロケや執筆の過程などを頻繁に発信していると、その世界に興味のある人たちがリツイートしてくれたり、コメントを返してくれた。
また、専門誌の読者の中には、流行に敏感で、それを人に伝えたがるような、マイクロ・インフルエンサーが多く存在していた。その頃に、ぼくが出ていた複数の専門誌の出版部数を合計すると、4万部ほどだったと思う。その4万人の高感度な読者の中で“特に敏感な数百人”がフォローしてくれたら成功だった。小さな発信力を持つ彼らを起点に、ぼくのフォロワーはさらに増えていったのだ。
こうして、狭い専門ジャンルの中でSNSのフォロワー数がトップクラスという立ち位置を確保できると、次のステップが見えてくる。ぼくでいうと、ファッションやカルチャー誌、ビジネスメディアから声が掛かるようになった。
どんなジャンルにも必ず専門メディアは存在する。ぜひあなたも、夢中になって取り組んできた大好きな世界のマニアックなメディアを、客観的な目線で細かく研究することから始めてみてほしい。そのうえで、「どうすればそこに出られるか」という綿密な戦略を立て、企画書をつくってプレゼン行脚するなど、諦めずに行動し続けてみてほしいんだ。

※この記事は『Mac Fan 2019年11月号』に掲載されたものです。
著者プロフィール
四角大輔
作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈noiseless world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。




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