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モバイルボヘミアンとは〈前編〉/四角大輔の「Mobile Bohemian 旅するように暮らし、遊び、働く」 【第3話】

著者: 四角大輔

モバイルボヘミアンとは〈前編〉/四角大輔の「Mobile Bohemian 旅するように暮らし、遊び、働く」 【第3話】

博多天神の、大好きないつものカフェでこの原稿を書いている。

ぼくが年の半分以上を過ごす、ニュージーランド〈湖畔の森〉から戻ったのは一昨日のこと。帰国の目的はイベント出演で、10日間という短期間の滞在だ。

この〈森の生活〉をベースとするライフスタイルも、早くも7年目に突入。日本での滞在日数が年々減ってきていることもあり、帰国というより〈来日〉といったほうがしっくりくるようになってきた。

日本では、拠点のある東京がホームだが、幼少のころから大都市が苦手ということもあり、ここ数年は自然豊かでコンパクトな地方都市で過ごす時間が増えてきた。その中でも、特にここ福岡が一番のお気に入りで、仲間が多いこともあり、国内外でもっとも頻繁に訪れる街になっている。

大きすぎず、海へも山へも近い。食事が美味しく、人々は温かく、行政がリベラル。カフェのレベルも高く、ストリートや都市空間がとても独創的。旅生活を営むぼくにとって、暮らしながら仕事をしたいと思える〈クリエイティブ・タウン〉の基準を、ほぼすべて満たしている。さらに、LCC(格安航空会社)の乗り入れが多いうえに、空港が街に隣接しているといった、Mobile Bohemianにとっては必須の条件〈イージーアクセス〉も兼ね備えている。

さて、連載3回目となる今回のテーマは、当シリーズのタイトルにもなっている、ぼくの肩書きのひとつ〈Mobile Bohemian〉について。よく質問を受ける、〈ノマド〉や〈デュアルライフ〉との違いを解説しながら、2回に渡って書いてみたい。

ぼくがレコード会社を退社し、アーティストプロデューサーの職を辞したのは2009年末。2010年1月より、南半球と北半球を年に何度も行き来する移動生活を開始した。その頃は、ニュージーランドと日本という2つの国の往復がメインだったので、〈デュアルライフ=二重生活〉と称されることが多かった。

ただ、ぼくは当時からプロフィールに〈ノマドライフ=遊牧民的生活〉という言葉を使っていた。ノマドという言葉が市民権を得るようになった〈ノマドワーカー・ブーム〉は、2012年あたりだったと思うが、それ以前はまったく理解されなかった。

ちなみに、ぼくはときどき〈ノマドワーカー〉と呼ばれることがあるが、実はこれには違和感を感じている。なぜなら、ぼくが主張してきたノマドの概念は、ワークスタイル限定ではなく、あくまでライフスタイルが軸のものだからだ。日本の場合、メディアの煽りによって、「ノマド=オフィスを持たずカフェで仕事をする人」という、偏った印象が刷り込まれてしまっている。これは、ぼくのノマド哲学に合致しない。

では、当時の移動パターンが2国間の行き来が基本だったにも関わらず、デュアルライフではなく、ノマドライフという言葉を好んで使っていた理由は何か。それは、「国境」という概念が自分にはしっくりこないからだ。ぼくの〈移動生活思想〉は、国単位ではなく都市単位。山や川や大地を、少し飛び越えただけで人びとの暮らしはがらりと変わる。文化は国ではなく街単位で存在する。そうした旅の感覚を表現するには、ノマドのほうがしっくりきたのである。

iPhone 6sプラスで撮影。

※この記事は『Mac Fan 2016年2月号』に掲載されたものです。

著者プロフィール

四角大輔

四角大輔

作家/森の生活者/環境保護アンバサダー。ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない生き方を構築。レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録。Greenpeace JapanとFairtrade Japanの日本人初アンバサダー、環境省アンバサダーを務める。会員制コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。ポッドキャスト〈‪noiseless‬ world〉ナビゲーター。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『人生やらなくていいリスト』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『バックパッキング登山大全』など著書多数。

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