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僕がキャッシュレスに完全移行した理由

著者: 美崎栄一郎

僕がキャッシュレスに完全移行した理由

財布がなくなりiPhoneが残る

お金は、時代に合わせてその形を変えてきました。江戸時代に流通していた小判は、明治時代に硬貨や紙幣へと変化しました。もっと昔に遡ると、日本できちんとした通貨を作ることができなかったので、中国の明の時代の硬貨「永楽通宝」が使われていたときもあります。

さて、我々が生きている現代は、お金の形が変わる“過渡期”であると言えます。僕はすでにリアルな紙幣・硬貨を使わず、iPhoneを使ったキャッシュレス生活へと完全に移行しているのですが、その理由は、この過渡期を先取りして楽しもうと思っているからです。

その前身も含めて約150年もの歴史があるクレジットカードは、紙幣や硬貨と同じく財布に入れて持ち運んでいる人がほとんどでしょう。ですが、私の予想では、50年後には「財布を持ち歩く」という発想自体がなくなっていると思います。

では、将来どのように毎日の支払いを行うようになるのかというと…そうです、スマートフォンが財布の代わりになるはずなのです。今はカード収納付きiPhoneケースにクレジットカードを入れて持ち歩いている人もいると思いますが、この先、クレジットカードすら携帯する必要がなくなる未来がやってくると、私は予想しています。

私はApple Payなどを駆使して、iPhoneだけで支払い できるようにしています。
台湾で利用できるチャージ式のICカード「オクトパスカード」も「ウォレット」アプリに取り込めます。

SuicaのためにAppleCEOが来日

2016年10月、Apple PaySuicaが使えるようになったとき、Appleティム・クックCEOが東京に訪れてデモをしていました。当時、すでに日本では「おサイフケータイ」がSuicaに対応していたため、「なぜ今さら、ティム・クックが日本まで…?」と疑問に思ったことを覚えています。

それと同時に「グローバル企業であるAppleが、日本のローカルな交通系ICカードに対応するなんて、どういうわけ?」という疑問も湧き上がってきました。

何かAppleの戦略があるのだろうと考えを巡らせたのですが、最初はまったく理由が掴めず…。2019年にニューヨークに行ったときに、その謎が解けました。

Apple Payで地下鉄の改札を通るためのテストが数駅で行われていたのです。ニューヨークでは2021年になってようやく、すべての地下鉄やバスなどでコンタクトレス運賃決済が使えるようになりました。

日本では全国各地でSuicaが使えますが、米国では最近やっとニューヨークで使えるようになったというレベル。日本は交通系電子マネーでは最先端でした。だから、ティム・クックがわざわざ日本まで視察にやってきたのですね。

また、交通インフラは、その国、その地域で普及されているものが基本です。運用会社もバラバラですから、iPhoneだけで世界中の交通機関を利用するためには、現地で幅広く利用されているサービスを使ったほうが効率的。これがAppleの戦略だったのです。

おかげで、外国に行く前に、Apple Payの中に現地の交通系ICカードを入れることができるようになりました。

従来であれば、日本の現金を現地の通貨に両替して、切符を買うしかありませんでした。海外旅行の楽しみの一つでもありますが…正直面倒です。

ちょうど香港の交通系ICカード「オクトパスカード」を残高のある状態で1枚持っていたのですが、「ウォレット」アプリに簡単に取り込めました。これでまた香港を訪れるときには、iPhoneだけで空港から市内まで移動できます。

本連載では、過渡期であるスマートフォン決済をテーマにしていきます。まだまだ発展途上のサービスですから、iPhoneだけで済まないこともあるかもしれませんが、テクニックを駆使しつつ、皆さんの“iPhoneキャッシュレスライフ”のヒントになればと思います。

現代はまさに“お金の形”が変わっている最中。iPhoneを駆使して、日常の支払いを賢くおトクに済ませましょう!

※この記事は『Mac Fan』2022年8月号に掲載されたものです。

著者プロフィール

美崎栄一郎

美崎栄一郎

ビジネス書作家・講演家・商品開発コンサルタント。『iPhoneバカ』『iPadバカ』などの著者。新刊『脱ムダ、損、残念! 今度こそ、やめる技術』(あさ出版)が発売中。

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