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実力診断① Design/Display/Camera

実力診断① Design/Display/Camera

【Design】高級感はそのままに新サイズで登場

カラフルな6色の仕上げにも注目

唯一の厚さ8ミリ超え

iPhone XRは、価格だけを見ると「iPhone XS/XS Maxの廉価版」という位置づけになってしまいますが、その高級感のあるデザインはiPhone XS/XS Maxに引けを取りません。

XRのデザインで特徴的なのが、なんといってもiPhone 5cを彷彿とさせるカラフルなカラーバリエーション。ホワイト、ブラックといった定番色から、ブルー、イエロー、そしてスマートフォンでは珍しいコーラル(珊瑚色)が登場しました。さらに、これまで限定色扱いだった(PRODUCT)REDが、始めからラインアップに追加されています。

背面はワイヤレス充電対応のガラス仕上げで、7層にわたる着色プロセスが深みのあるカラーを実現。側面は背面と同色のアルミニウムフレームが使われており、酸化皮膜処理によって一体感のある仕上げとなっています。ポップなカラーバリエーションですが、安っぽさを一切感じさせないデザインはさすが林檎印といったところです。

一方、6.1インチという新たなサイズ感は、人によって感想が分かれそうです。iPhone XS/XS Maxをはじめ、現行モデルがすべて7ミリ台の薄さを保つなか、唯一iPhone XRだけが8ミリを超える厚みがある点も気になるポイントかもしれません。実際に触ってみるとその差はわずかですが、気になる人にとっては操作性に影響が出る可能性もあります。そもそもiPhoneは両手使いが前提でポケットに入れることが少ない人は、iPhone XRを選んでも問題ないでしょう。

6色のカラーバリエーション

カラーバリエーションはブルー、ブラック、コーラル、ホワイト、イエロー、(PRODUCT)REDの6色を用意。従来のモデルと同様、(PRODUCT)REDカラーを購入すると、購入金額の一部が「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)」に寄付されます。

iPhone XRの各名称

FRONT

BACK

SIDE1

SIDE2

BOTTOM

TOP

縦横のサイズ比較

iPhone XRの高さは150.9mm、幅は75.7mm、ディスプレイサイズは6.1インチです。iPhone XSより大きく、iPhone XS Maxより小さい新サイズなので、どんなユーザでも新鮮な操作感が得られるでしょう。

薄さ・重量の比較

iPhone XRの薄さは8.3mmと、現行モデルの中で唯一、8mmを超えるモデルとなりました。人によってはこの厚みが気になるかもしれません。ただ、重さはiPhone XS Maxより14g軽い194gです。

底面の比較

底面はLightningコネクタ、スピーカ、マイクとおなじみの仕様です。しかし、iPhone XS/XS Maxには底面にもアンテナラインが入っていますが、XRにはなく、スピーカの穴が左右対称に配置されています。

アルミニウムフレームの質感

iPhone XS/XS Maxがステンレスフレームを採用している一方で、iPhone XRはアルミニウムフレームを採用しています。アルミニウム素材でも高級感を損なうことなく、それぞれのカラーにマッチするように注意深く仕上げられています。

[CHECK]iPhone XRのデザインで不便な部分は?

iPhone XやXSより大きいサイズのiPhone XRを実際に触ってみると、片手のみの操作はやや厳しい場面もあるかもしれません。片手でサクサクと使いたい場合は、片手入力キーボードや画面を引き下げて使う「簡易アクセス」機能の併用が必須です。

また、新しいサイズということは、旧モデル向けのケースなどは使い回せないということでもあります。カメラホールに余裕のあるiPhone X用ケースであれば、iPhone XSとの互換性があるものもありますが、iPhone XRを購入した場合はケースを完全に新調する必要があります。

XRはポップなカラーデザインが特徴的なので、いっそシンプルなクリアケースにして、本体のカラーリングを楽しみたいところ。しかし、10月19日の予約開始時点では、Apple純正のiPhone XR向けケースがApple Storeでは用意されていません。一方で他社製ケースは数種類確認できたので、発売後にアクセサリの選択肢が増えることを期待しましょう。

標準的な男性の手では、片手で操作するのも不自由ないサイズ感です。一方、写真のように女性の手では、片手での操作が厳しく感じられました(写真左がiPhone XR)。片手でサクサクと操作したい人には不向きのモデルかもしれません。

ケースで主張するのではなく、本体カラーで個性を演出したくなる仕上がりのiPhone XR。とはいえ、Apple純正のケースが原稿執筆時点(2018年10月19日)でまったく用意されていません。今後の発表に期待しましょう。

【Display】新開発「Liquid Retina」ディスプレイ

スペックの差ほどの違いはある?

6.1インチの迫力

iPhone XRとXS/XS Maxとの大きな違いの1つが、ディスプレイです。XRでは、XやXS/XS Maxの有機EL(OLED)ではなく、iPhone 7や8と同じIPS方式の液晶パネルが採用されました。名称は新たに「リキッドレティナHD(Liquid Retina HD)」と命名され、液晶ディスプレイのオールスクリーン化を実現しています。

画面サイズは6.1インチと従来のプラスシリーズより大きく、ノッチ(切り欠き)のあるデザインはXやXSシリーズと同じ。ベゼル幅はややiPhone XRのほうが広くなっているものの、ホームボタンのあるモデルを使用している人にとっては、6.1インチのオールスクリーンは迫力ある映像体験となります。

また、コンテンツを自動的に広色域で表示する高度なカラーマネジメントによって、正確な色味を美しく映し出します。周囲の環境に合わせて、画面上のホワイトバランスを調整する「トゥルートーン(True Tone)」にも対応。スクリーンを押し込んで操作する「3Dタッチ」は非搭載ですが、本体を長押しすることで擬似的なクリック感を提供する「ハプティックタッチ(Haptic Touch)」が代替機能として用意されています(詳細は95ページ)。

解像度やコントラスト比などのスペックで比較すると、やはり有機ELディスプレイを搭載するモデルに分がありますが、実機を見るとスペック表ほどの大きな違いは感じられません。新型iPhoneで唯一の液晶ディスプレイモデルではあるものの、最上位モデルにこだわらないのであれば、iPhone XRでも十分に美しい映像体験が味わえるはずです。

新開発のLiquid Retina HDディスプレイ

iPhone XRには、新しく開発された「Liquid Retina HD」ディスプレイを搭載。Appleの革新的なエンジニアリングによって、ディスプレイをボディの隅々まで行き渡らせることに成功しました。

ディスプレイのサイズ比較

従来のPlusモデルよりも本体サイズは小さいものの、ディスプレイサイズは一回り以上大きくなっています。iPhone XRなら、今Plusシリーズを使っているユーザでも迫力ある映像体験が味わえるはずです。

ディスプレイのスペック比較

iPhone XRは、iPhone XS/XS Maxに比べてディスプレイの解像度とピクセル密度が低く、コントラスト比にも大きな差があります。しかし、ピクセル密度が低いぶん消費電力が抑えられます。

オールスクリーンモデルのメリット/デメリットって何?

iPhone XRの6.1インチディスプレイは、これまでのiPhoneシリーズになかった新たなサイズと解像度です。さらにボディの隅々までディスプレイが広がるオールスクリーンを採用しています。iPhone XとXSの5.8インチよりも一回り大きく、iPhone XS Maxの6.5インチよりも小ぶりなサイズ感ですが、いまいちピンとこない人も少なくないでしょう。

ホームボタンのあるモデルと比較すると、画面上での情報量の差は歴然です。オールスクリーンによってディスプレイの縦サイズが伸びたため、特にWEBブラウジングではページが上下に広がり、より読みやすく感じるでしょう。PC向けのWEBページやPDFファイル、Microsoft Office系のアプリでも、一画面に表示される情報量がグッと増えます。iPhoneで仕事をする機会が多い人にとって、iPhone XRの大画面化やオールスクリーンによる縦長化はメリットが大きいはずです。

ただ、上下にスクリーンが広がるということは、操作する領域も上下に伸びるわけで、片手での親指操作は厳しくなります。指の長さは変えられないので、両手使いに変えたり、スワイプして画面が下がる「簡易アクセス」機能を有効活用しましょう。

表示される情報量が増える

液晶ディスプレイながらオールスクリーン化を実現したiPhone XRでは、WEBページやPDFファイルなどの表示量も増加します。iPhoneで頻繁に仕事のメールを確認したり、書類をチェックしたりする人にとっては大きなメリットになるでしょう。

「簡易アクセス」機能をフル活用

オールスクリーンでは、表示量が増えるメリットがある一方で、操作感にももちろん影響が出てきます。そんなときは画面下半分をスワイプして「簡易アクセス」機能を使いましょう。

iPhone XSシリーズと比べて画質はどのくらい劣るの?

iPhone 8シリーズと同様、IPS方式の液晶パネルを採用したiPhone XRですが、ディスプレイは「Liquid Retina HD」ディスプレイと新しくなりました。Appleの公式サイトには、「業界の中でもっとも先進的なLCD」「もっとも正確な色を映し出します」などと表現されています。LCDとは「Liquid Crystal Display」、つまり液晶ディスプレイのことで、業界最高の色精度を持ち、広色域のカラーマネジメントに対応します。

一方でiPhone X/XS/XS Maxに採用されているのは、有機ELパネルの「Super Retina HD」ディスプレイ。有機ELは画素が自ら発光するため、液晶と違ってバックライトがいりません。そのため、デバイスの薄型化、軽量化が容易で、電力消費を抑えることも可能。漆黒を表現できるため、液晶と比べるとコントラスト比も圧倒的に優れています。

この2つのディスプレイを比べてみると、やはりSuper Retina HDディスプレイのほうが黒がよく表現されており、映像や写真が非常に美しく映し出されています。しかしながら、XRのLuquid Retina HDディスプレイも引けを取らないほどきれいな印象です。自分が現在iPhone 8ユーザで、ディスプレイのクオリティにすでに満足しているならXRを、今以上にとにかくコンテンツを美しく楽しみたいという人は、XS/XS Maxを選択したほうがよいでしょう。

コントラスト比が違う

iPhone XR(Liquid Retina HDディスプレイ)とXS Max(Supre Retina HDディスプレイ)で動画を比較して見ました。写真ではわかりにくいですが、Super Retina HDディスプレイ(有機EL)は漆黒を表現できるため、液晶と比べるとコントラスト比も圧倒的に優れています。徹底的な映像美にこだわるなら、iPhone XS/XS Maxをおすすめします。

8シリーズと同等の美しさ

iPhone XRとiPhone XS Max、そしてRetina HDディスプレイのiPhone 8で写真を表示して比較してみました。XR/8と比べると、XS Maxは黒の部分までしっかり表現されています。しかしながら、XR/8でも見事に美しく色が表現されているため、8シリーズで満足しているユーザはXRでも十分でしょう。

【Camera】XSシリーズと遜色ないカメラ性能

唯一の弱点はズーム機能か?

レンズの数が異なる

XR とXS/XS Maxのカメラのもっとも大きな違いは、レンズの個数です。XS/XS Maxは広角と望遠のデュアルレンズでしたが、XRは同じ性能の広角レンズのみと1つ少なくなっています。

しかし、意外なことに、カメラの性能には大きな差がありません。被写体の背景をぼかす「ポートレートモード」や、ボケ具合を撮影後に変更できる深度コントロール、明部と暗部をより精細に写す「スマートHDR」が使用できます。

それらの最新機能を実現するのが、A12バイオニックチップや高速なセンサなどを活用した最先端のカメラシステムです。特に、これまでのポートレートモードでは、2つのレンズを組み合わせることで写真の深度(奥行き)を取得し、被写体と背景を区別していました。しかし、新たなカメラシステムによって、シングルレンズでもポートレートモードなどが使えるようになったのです。

一方で、XRには望遠レンズがないため、画質の劣化しない光学式ズームに非対応だったり、デジタルズームが最大5倍にとどまったり(XS/XS Maxは最大10倍)と、ズーム機能に一部制限がかかります。ポートレートモードに照明のエフェクトをかけられる「ポートレートライティング」も、XS/XS Maxより2つ少ない3つのエフェクト数です。

裏を返せば、スペック上でのカメラ性能の違いはその程度だということ。iPhone Xには深度コントロール機能がなく、スマートHDRにも非対応なので、XRのカメラはデュアルレンズのXよりも高性能なカメラといえます。

「カメラは徹底的にこだわりたい」「ズーム機能を頻繁に使う」といった人には、XRは不向きでしょう。しかし、出費を抑えつつ高性能なカメラを体験したい人にとっては、XRは魅力的なデバイスではないでしょうか。

背面はシングルカメラ

背面カメラは、1200万画素の広角レンズひとつのシングル構成です。光学式手ぶれ補正、最大5倍のデジタルズーム、最大60fpsの4Kビデオ撮影に対応します。

性能が上がった前面カメラ

前面のインカメラは、iPhone XS/XS Maxと同じ進化したTrueDepthカメラです。ポートレートモードの深度コントロール機能や、ビデオの新しい手ぶれ補正機能などが追加されています。

ポートレートモード

レンズはシングル構成ですが、被写界深度をコントロールできるポートレートモードを搭載しています。ただし、ポートレートライティングの「ステージ照明」と「ステージ照明(モノ)」はXRでは使用できず、3つのエフェクトから選ぶ形となっています。また、人物以外はポートレートモードで撮影できません。

背面カメラの主なスペック比較

スペック表で比較しても進化が見えますが、それ以上にiPhone XS/XS Max/XRでは、ソフトウェア側の処理によってカメラ性能が著しく向上しています。機械学習が入る前のiPhone 7シリーズ以前のユーザは、特にカメラの進化を体感できるでしょう。

iPhone XRのカメラ性能を徹底比較!

ズーム機能

XRには望遠レンズが搭載されていないため、デジタルズームは最大5倍まで。一方、デュアルレンズのiPhone X/8 Plus/7 Plusは、2倍の光学式ズームと最大10倍のデジタルズームに対応します。ズームを多用する場合、XRのカメラ性能では物足りないかもしれません。

ポートレートモード

シングルレンズのiPhone XRですが、ポートレートモードを搭載しているうえ、撮影後に被写界深度を変更できる深度コントロール機能にも対応します。XRはシングルカメラのためアルゴリズムで背景をぼかしていますが、旧モデルのポートレートモードと比べても遜色ない仕上がりです。

スマートHDR

A12 Bionicチップの高度な処理によって、明部から暗部までをより精細に再現する「スマートHDR(ハイダイナミックレンジ)」は、XS/XS Max/XRのみで使える新機能です。iPhone XRでも美しいHDR写真が撮影できました。また、カメラセンサはiPhone Xより深く、より大きなピクセルを採用しているため、XRのほうが画角が広くなっているようです。

TrueDepthカメラ

前面のTrueDepthカメラは、撮り比べると明らかにXRのほうが肌のくすみが飛んで、色味が白く美肌に写りました。公式発表はありませんが、もしかしたら昨今のセルフィーブームを反映させ、前面カメラにのみ美肌加工をかけたのかもしれません。