よく聞く「○〇変革」。企業でも教育の現場でも、今までに経験したことのない課題に取り組むため、既存の業務やプロセス、コミュニケーションを見直し、新しい価値を生み出すことを目的に「変革」という言葉が使われる。変革とは物事を変えて新しくすること。最近では、デジタルトランスフォーメーションといった言葉にも置き換えられ、組織やビジネスの変革を推進している企業は多い。
変革の達成基準を一様に決めることは難しい。しかし、既存概念を打ち壊し、なんらかの行動変容を行う必要がある。行動変容にも段階があるが、ポイントは「以前のやり方のほうが良かった」といったように逆戻りを起こさず、いかに新しい変化を継続できるか。新しいものを取り入れるときには、必ず何かを止める必要があることを忘れてはいけない。
企業内のコミュニケーション手段にも変革が起きている。これまで電話とメールが中心だったクライアントやパートナーとのやりとりが、スラックやチャットワークのようなチャットを中心に行われることが増えてきた。しかし、スラック上で「メールを送ったので確認してください」といった無駄なコミュニケーションが業務のボトルネックとなり、生産性を下げている大きな要因にもなっている。スラックでコミュニケーションの変革を始めたのであれば、極力他の手段でのコミュニケーションを避けなければ、チャットの即時性やコラボレーションの有用性の効果は現れないだろう。
変革には意志が必要である。そのためには、目の前の仕事や課題に対して疑問を持つことが大事だ。「Why?(なぜ?)」を追求することこそが、変革の第一歩となる。また、変革とは一時的なものではなく、常に変わり続けて、新たな価値を提供し続けることでもある。「Why?(なぜ?)」を追求し、問い続け、自分たちのビジネスや取り組みの原点に立ち返ることこそが、ブレない意志を作り上げるのである。
1台のiPadが起こす変化は、もしかしたら小さなものかもしれない。しかし、そのiPadを通して人によって成し遂げられる業務変化は、一つ一つがビジネスにつながっており、そこから生まれる変革の可能性は無限大である。
私事だが、そろそろ自身にも変化が必要な時期がやってきた。約3年間の本誌の連載を通して、現場でのモビリティの導入、活用のアイデアをお届けしてきた。モビリティはただモバイルデバイスを使うことではなく、モバイル中心の働き方や学び方などの「状態」を示す言葉である。モビリティによる変革は、今までの業務やプロセスを大きく変えるものである。そこに求められることは、自分たちが「ありたい姿」をどれだけ描けているかであり、そこに向かって進んでいくためのマインドセットが大事である。単にデバイスを導入することでは、決して変革は起こせない。なぜこの業務手順なのか? もっとほかに手法はないのか? その解決手段としてモバイルを活用すること。この思考のプロセスを繰り返し、考え抜くことこそがモビリティの浸透につながる。
企業や教育機関でのアップル製品導入は、これから先もまだまだ加速することだろう。これから導入の検討を始める人も、利活用に悩んでいる人も、市場の流れに身を任せるのではなく、「Why?(なぜ?)」iPadなのか、Macなのかを考えながら、導入検討を進めてほしい。そして、変化を楽しみ、自分自身が想像する「ありたい姿」を目指してほしい。最後に読者の皆様に、感謝の意を表しつつ、またどこかでお目にかかれることを楽しみにしている。