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“廉価版”ではないiPhone XRの驚きの実力

“廉価版”ではないiPhone XRの驚きの実力

こちらが実は本命か

「今年のiPhoneはXS/XS Maxがメインモデルで、iPhone XRは廉価版」。そのように捉える人が多いかもしれません。確かに端末の価格を見ればXS/XS  Maxのほうが高価であることからXRがワンランク下であることは間違いないのですが、

「廉価版」という響きがそれに相応しいかは考えものです。というのも、iPhone XRはiPhone Xでアップルが実現した最先端の技術や機能をふんだんに搭載しており、XS/XS Max同様にiPhone Xの後継機種と呼ぶにふさわしい実力を兼ね備えているからです。

iPhone XRを一目見て気づくのは、XS/XS Maxと同じオールスクリーンのデザイン。XRには3Dタッチが搭載されていないものの、基本的な操作はiPhone Xを引き継いでいます。また、A12バイオニックチップやフェイスIDが可能なトゥルーデプスカメラの搭載、ボケ効果や深度コントロールが可能な背面カメラ、そしてワイヤレス充電やiOS12の先進的な機能も使えるなど、アップルが提供する革新が詰まっているのです。

もちろん、価格がXS/XS Maxより抑えられていることからスペック上の違いは存在します。たとえば、XSとXRはサイズや重量がほぼ同じですが、フレームにステンレススチール製を採用するXSシリーズに対して、XRはアルミニウム製です。また、XRは有機ELディスプレイの「スーパーレティナ(Super Retina)」ではなく、先進的な液晶パネルを採用した「リキッドレティナHD(Liquid Retina HD)」ディスプレイを搭載。さらに、XRの背面には12MPの広角カメラが1つしか備わっていません。ただし、ここで重要なのはスペックの細かな違いではなく、そこに体験の違いを見出すかどうかです。iPhone XRもiPhone Xの後継機種であることから日常的にiPhoneを使ったり、写真やビデオ、ゲームといったコンテンツを楽しんだりするときでも、十分満足できる仕上がりになっています。そしてXRだけの特徴として、6色のカラーラインアップがあることも忘れてはいけません。見方を変えれば、XS/XS Maxよりも安価に最先端のスマートフォン体験できる、大変コストパフォーマンスに優れたモデルともいえます。予約開始は10月19日、発売は10月26日から。XSシリーズにするか、XRするか。iPhone XRの真価を理解したうえで見極めましょう。

 

デザイン

全6色のカラーバリエーション! 7層の着色プロセスで背面まで美しい

本体サイズの違い

一見すると XSと同じに見えるXRですが、両モデルには微妙なデザインやサイズ、マテリアルに違いがあります。

まずはXRのサイズは、高さ7.3ミリ、幅4.8ミリ、厚さ0.6ミリと、わずかながらXSよりも大きくなっています。重量もXRのほうが17グラムほどわずかに重くなっていますが、使用中に煩わしさを感じるほどではありません。

また、ボタンやコネクタの配置は、本体の右側面にサイドボタン、左側面に音量ボタンとサウンドオン/オフボタン、底部にライトニングコネクタと両モデルに違いはありません。しかしよく見ると電波感度を良くするためにフレーム部分に入れてあるアンテナラインが、XSシリーズでは左右側面の上下と、上部、底部の計6カ所にあるのに対し、XRではXと同じ左右側面の上下4カ所にしかありません。iPhoneをケースに入れずに使う人によっては、デザイン的にも気になる部分ではないでしょうか。

XRの良さは、選べるボディカラーにもあります。全6色とカラバリ豊富なのは、XSシリーズにはないXRの大きなメリットといってよいでしょう。

カラバリは全6色

ゴールド、スペースグレイ、シルバーの3色展開のXSシリーズと異なり、iPhone XRは(PRODUCT)RED、イエロー、ホワイト、ブラック、ブルー、コーラルからカラーを選べます。カラバリが豊富なのが、XRの大きな特徴の1つといえるでしょう。

iPhone XSより少し大きいサイズ

iPhone Xとまったく同じ大きさのXSに対して、iPhone XRは高さ7.3mm、幅4.8mm、厚さ0.6mmとわずかに大きいサイズ感です。重量もXSが177g、XRが194gと若干重くなっています。

アルミニウム製フレームを採用

ボディの素材についても、医療用と同等のステンレススチールをフレームを採用しているXSシリーズに対して、XRには航空宇宙産業レベルのアルミニウム製フレームが使われています。

アンテナ線は上下4箇所に

電波感度を良くするためにフレーム部分に入れてあるアンテナラインが、XSシリーズでは左右側面の上下と、上部、底部の計6カ所にあります。一方、XRではiPhone Xと同じ左右側面の上下4カ所にしかありません。

 

ディスプレイ

液晶なのにフルスクリーン! 新開発のリキッドディスプレイ搭載

新開発のディスプレイ

XSシリーズとXRで決定的に違うのが、ディスプレイです。ディスプレイサイズはXSの5.8インチに対して、XRは6.1インチとわずかに大きいのですが、ピクセル数はXSの2436×1125に対して、XRは1792×828と少なくなります。ピクセル密度もXSシリーズはXと同じ458ppiですが、XRは326ppiとiPhone 7や8と同じとなっています。

また、XRに採用されているディスプレイは、XSシリーズの有機EL(OLED)ではなく、従来どおりのIPS方式の液晶パネル。画質が劣るのでは? と心配する人がいるかもしれません。確かに黒色の締まりやコントラストに大きな違いがあります。コントラスト比が100万対1のXSシリーズと比べると、XRでは1400対1と低くなっています。

ただし、最大輝度やトゥルートーン(TrueTone)、広色域ディスプレイ(P3)対応などに関してはXSシリーズと同じことからもわかるように、XRのディスプレイは従来のIPS方式の液晶パネルより格段に高品質に仕上がっています。

XSシリーズとのスペック比較

XSシリーズとXRのディスプレイ仕様の比較表です。コントラスト比に大きな差があることがわかります。

解像度はやや劣る

サイズだけでなくピクセル数や密度もXSシリーズとは異なります。従来のホームボタンを搭載したiPhone 6/6sや7、8と比べれば、前面のほとんどがディスプレイになったことで大きく感じるはずです。

Plusモデルよりも大きい

従来のPlusモデルと比べると、本体サイズは小さくなっていますが、ディスプレイサイズは大きくなっています。

Liquid Retinaディスプレイ搭載

iPhone 8シリーズと同様、IPS方式の液晶パネルを採用しているXR。「Liquid Retina HD」ディスプレイでは、最先端のテクノロジーによって、液晶ディスプレイのオールスクリーン化に成功しました。

 

カメラ

一眼レフ並みのシングルカメラ

ポートレートモード対応

XRの背面カメラは、XSシリーズのようにデュアルレンズではなく、iPhone 8や7のようなシングルレンズタイプです。しかし、センサ解像度やレンズの絞り値などの数値は、XSシリーズの広角側レンズと同じ。ただし、光学式手ぶれ補正は搭載しているものの、XSシリーズのように2倍の光学ズームはなく、デジタルズームも最大5倍までとなっています。ビデオ撮影時の光学ズームもXSシリーズの最大6倍に対して半分の最大3倍です。

こうした違いはあるものの、ボケ効果や深度コントロールが使えるポートレートモードを搭載。5種類のポートレートライティングが使えるXSシリーズに対して、XRでは自然光とスタジオ照明、輪郭強調照明の3種類しか使えない点をどう判断するかがポイントです。一方、前面カメラではXSシリーズ同様の5種類のポートレートライティングが使えます。

レンズは背面(広角側)1つ

背面レンズは広角側1つですが、光学式手ぶれ補正やフォーカスピクセル、絞り値、6枚からなるレンズ構成などはiPhone XSシリーズの広角レンズとまったく同じです。

前面カメラは同スペック

フロントカメラのTrueDepthカメラは、XSシリーズとまったく同じ構造でFace IDを使った顔認証処理にも使われています。スペック的にもまったく同じです。

 

Haptic Touch

3Dタッチ廃止で新たな操作感を実現

新しい操作方法

XRには、スクリーンを押さえる強さによって異なる操作を行う「3Dタッチ(3D touch)」が搭載されていません。その代わりに、本体を長押しすることで擬似的なクリック感を提供する「ハプティックタッチ(Haptic Touch)」が搭載されています。スクリーンを押す「ピーク(Peek)」と、さらに強く押し込む「ポップ(Pop)」の2段階の操作を用いなくても、ハプティックタッチで同等の操作ができるようになっています。

スペシャルイベントで紹介されたのは、ロック画面に表示しているカメラアイコンからカメラの撮影画面に切り替える操作だけでしたが、そのほかにも3Dタッチで行う作業がハプティックタッチで実行できるようになっているようです。

「コストダウンのためだけでなく、そもそも利用する人が少なかったため3Dタッチを廃止した」との意見もありますが、XSシリーズには3Dタッチが搭載されています。そこからもわかるように、ハードウェア構成の違いにより3Dタッチとハプティックタッチの実装を使い分けたといえるでしょう。この原稿を書いている時点では、まだiPhone XRは発売前なので具体的なことはいえませんが、これまで3Dタッチで行っていた操作の多くが、XRではハプティックタッチで実行できるようになっているはずです。

3D touchに代わる操作方法

長押しなど一定時間タップした状態にすると振動でクリック感を提供するのがHaptic Touchの機能です。

カーソル移動も可能

3D touchで行っていたキーボードパットを使ったカーソル移動なども、Haptic touchでできるようになっているようです。

長押しでカメラ起動

ロック画面の右下にあるカメラボタンからHaptic touchを使ってカメラの撮影画面に切り替えできます。

 

その他

防沫/耐水性能とSIM

耐水・防塵性能はXSが上

XSシリーズはIEC規格60529に基づくIP68等級で、最大水深2メートルで最大30分間の耐水性能がありますが、XRはIEC規格60529にもとづくIP67等級で、最大水深1メートルで最大30分間の耐水性能です。

また、搭載しているバッテリ容量も若干異なります。仕様ではiPhone XSはiPhone Xより最大30分、XS Maxは最大1.5時間長いと記されていますが、XRはiPhone 8プラスより最大1.5時間長いようです。

また、XSシリーズの新機能として話題になっているデュアルSIMは、XRにも搭載されているようです。現状eSIMに対応している国内キャリアはまだ存在しませんが、近いうちにサポートが開始される可能性もあります。将来的にデュアルSIMを使いたいユーザにとっては、XSシリーズとXRどちらを選んでも問題ないでしょう。

デュアルSIM対応

仕様にはiPhone XRでもDSDS(Dual SIM Dual Standby)が使ると記載があります。しかし、iPhoneでeSIMサポートを表明している企業の中に、日本国内のキャリアの名前は発表時にはありませんでした。

バッテリが長持ち

搭載しているバッテリ容量もXSシリーズとXRで異なるため、バッテリ駆動時間にも違いが生じています。通話やインターネット利用など操作の内容による最大時間も異なります。見てのとおり差はわずかですが、XRはXSよりバッテリの持ちが良いようです。