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最新規格は単なる「ワイヤレス」のためではない

Bluetooth 5.0こそがHomeKitブームの火付け役

著者: 氷川りそな

Bluetooth 5.0こそがHomeKitブームの火付け役

昨年秋に発売されたiPhone X/8を筆頭に、Apple TVやMacなども新製品リリースごとにBluetooth 5.0へ対応している。一体、Bluetoothの新規格をサポートするメリットはどこにあるのか。実は、その恩恵をもっとも受けるのはHomeKitアクセサリなのだ。

ケーブルはもう要らない

ここ数年でワイヤレスな生活が当たり前になってきた。インターネットへの接続はiPhoneなら4G/LTE、それ以外ならWi-Fiを使っているし、音楽を聴くときには外出先ならエアポッズ(AirPods)、自宅ではエアプレイ(AirPlay)経由でスピーカやアップルTVから再生する、充電だって最新のiPhoneシリーズはワイヤレスだ。こういった利便性に慣れてしまうと、ケーブルが必要だった過去には戻りたくないはずだ。

このように、今やスタンダードな立ち位置を確保しているワイヤレスソリューションだが、その魅力をさらに高めてくれるのがブルートゥースだ。そもそもこの規格はデータ量の多くない通信、たとえばキーボードやマウスといった入力機器をワイヤレス化したり、電話帳や連絡先のようなシンプルなデータを手軽に交換したりするための技術として誕生した。その後バージョンを重ねるにつれて転送速度を向上させてきたが、2009年に制定されたバージョン4で進化の方向性が大きく変わった。

ここで採用されたのが、従来と比較して大幅に省電力化を実現した「BLE(Bluetooth Low Ene rgy)」という規格だ。この改善により、ブルートゥースに対応する製品が急速に増えていった。マジックキーボード(Magic Keyboard)やアップルペンシル(Apple Pencil)のバッテリが長持ちしたり、アップルウォッチでデータを同期する際に消費電力が大幅に抑えられているのもBLEの恩恵だ。

Apple製品でBluetooth 5.0に対応しているのはApple TV 4K、iPhone 8/X、iMac Pro、MacBook Pro(2018)など。それ以外のモデルも新製品リリースごとに対応していくだろう。

日常を変える次の技術

最新版であるバージョン5では、この路線を踏襲しながら通信可能な距離を従来の4倍にあたる最大400メートルまでサポートした。また、従来のピアツーピア(1対1)だけでなく、複数同士(多対多)での接続を可能にする「メッシュ」方式でのペアリングも利用可能になった。また、IPv6でインターネット接続を可能にする「ISPS」プロファイルのサポートなどの対応も始まり、より柔軟性の高い運用が可能になっている。

このアップデートによって大きくメリットを享受するのは、ホームキット(HomeKit)に対応する製品だろう。この製品群はIoT(Internet of Things)とも呼ばれ、ネットワークに接続することで従来の家電製品以上の性能や付加価値を提供することができるのが特徴だが、これを実現するには電力消費の比較的高いWi−Fiや3G回線を使うか、ジグビー(Zigbee)など別の技術を使う必要があった。これがブルートゥースに集約されることでハードウェアの制約が下がり、より多くの製品がホームキット対応製品としてリリースされることが期待できる。

国内では対応製品が少なく、盛り上がりにはやや欠けているが、今後はグローバルな展開をする国外企業(特に中国系新興企業)が積極的に参入してくるチャンスがこのバージョン5の登場によって高まっている。購入する商品の仕様を確認するときに「ブルートゥース5対応」を確認するべきなのはアップル製品だけでなく電化製品全般、という時代がやってくるのはもう目と鼻の先だ。  

Bluetoothはバージョン3と4以降は仕様が異なるため互換性がない。このため多くの製品では両方の機能に対応する「デュアルモード」を搭載したハードウェアを使用している。

PhilipsのHueなどが採用する「Zigbee」は、省電力を実現しながら6万台以上のデバイスを接続できるという優れた規格だったが、現時点でも採用する製品が少なくHomeKit関連アクセサリも伸び悩んでいる。それだけにBlueooth 5にかける期待も大きい。