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アフィリエイト終了でアプリ関連ビジネスに激震?

Search Ads日本版開始がもたらすアプリ広告の変革

著者: 栗原亮

Search Ads日本版開始がもたらすアプリ広告の変革

Appleのアプリ配信プラットフォームである「App Store」が2008年7月に登場してから今年で10周年を迎えた。現在200万本以上のアプリが配信されているが、ユーザが目的のアプリに辿り着くための「アプリ広告」のあり方が大きく変わりつつある。

10年目のアプリ広告改革

アップルは、同社が提供するアフィリエイトプログラムの内容を改訂し、2018年10月1日からはiOSアプリとMacソフト、アプリ内課金などのコンテンツが同プログラムの報酬対象から外されることを発表した。ただし、ストアで販売される音楽や映画、ブックなどは従来どおり報酬の対象となっている。

「アフィリエイト(成果報酬型広告)」と聞くとややネガティブなイメージを抱く人もいるようだが、本来は多くの人にメリットがある優れた広告配信の仕組みだ。プログラムに登録した人(アフィリエイター)は、自分のブログなどでアプリやコンテンツを紹介し、それをクリックしてインストールしたユーザからの売り上げに応じて、ASP(アフィリエイトサービス会社)を通じて数%の報酬がアフィリエイターに支払われる。そして広告主であるアプリ開発者も、自分のアプリを多くのユーザに届けられる。まさに「四方良し」のシステムで、開始当初はその収益性の高さから多くのアプリ紹介メディアが立ち上がった。

ところが、アプリ市場の拡大とともに、大規模な広告費を投入できる大手の開発会社が参入を始める。個人開発者やインディーズの開発者はほとんど太刀打ちできなくなり、無料アプリの普及もあってアプリ紹介メディアの多くを窮地へと追いやった。次第に「ブースト」と呼ばれる手法でランキングの掲載順位を操作する開発会社が登場したり、読者からはわからない形で宣伝レビュー記事を掲載する「ステマ(ステルスマーケティング)」が台頭。WEBでは質の低い記事が量産され、アップストア自体のランキングやレビューすら信用できないという認識が広まってしまったのだ。アップルもASPの変更やアップストアのインターフェイスの刷新でこの問題に対応しており、今回の改革もそうした流れの一環とみなすのが自然だろう。

「iTunesアフィリエイトプログラム」は、WEBサイトやアプリから張られたリンクのうち、一定の条件を満たす売り上げに対してコミッション(報酬)が与えられる仕組み。紹介する側にも読む側にもメリットがあったが、ランキング不正操作などの弊害が指摘されていた。【URL】https://www.apple.com/jp/itunes/affiliates/

すべてはユーザ体験のために

しかし、アップルがアフィリエイトという広告手法を手放したことで質の低いアプリ紹介サイトが淘汰されたとしても、一般ユーザが自分の欲しい優良なアプリを探しにくいという現状には変わりなく、アップル自身もそれを望んでいるわけではないだろう。

前述のアップストアのインターフェイス刷新では、アプリ紹介から「ゲーム」タブを独立させたり、ストーリー性を重視した「Today」タブが採用された。これは不正の温床であったランキング主体のアプリ紹介からの脱却を意味する。

「検索」タブにも新たな動きが見られた。「アプリ名」や「キーワード」に関連したアプリを検索結果のページでレコメンドする検索連動型広告の「サーチアド(Search Ads)」の適用範囲国を大幅に拡大したのだ。サーチアドの広告メニューには大手開発会社向けのアドバンストと、機能は制約されるが広告予算が5000ドル(約55万4000円)未満の開発会社や個人開発者向けのベーシックがあり、日本国内でも7月と8月に相次いで開始される。

広告配信先がアップストア内という制約はあるものの、ユーザのアクションにもつながりやすいのでアプリ開発者にとってありがたい改革だろう。ユーザにとっても検索キーワードに関連するアプリをこれまでよりも見つけやすくなるなどのメリットが生じるはずだ。アップルはアプリ広告という分野においても、ユーザ体験の向上を常に考えていることが窺える。

「Search Ads」は、App Store内の検索連動型広告のプラットフォーム。入力したキーワードと連動したアプリが表示されるという仕組みで、2016年10月に米国で開始された。その後対象国が広がり、2018年7月26日からSearch Ads Advancedが、8月23日からはSearch Ads Basicが日本でも利用可能となる。【URL】https://searchads.apple.com/jp/

Search Adsは検索結果の一番上にアプリが表示される。広告と識別できるよう背景色と[広告]や[Ad]のバッジが表示される。Advancedではアプリ開発者はターゲットユーザの年齢、性別、地域といった属性を細かく指定して配信できる。