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[2014 ? 2015]売り上げ上昇も急成長の痛みが表面化

[2014 ? 2015]売り上げ上昇も急成長の痛みが表面化

アプリが社会の変革を後押し

2014年には、年間売上高が好調だった前年からさらに50%の伸びとなる150億ドルを達成しました。ダウンロード数ではグーグル・プレイに大きな差をつけられましたが、売上高はアップストアが70%も上回り(App Annie調査)、アンドロイドに傾きかけた開発者を「iOS優先」に呼び戻しました。

この頃から女性ユーザがスマートフォン市場に大きな影響を及ぼすようになります。たとえば、SNS、写真やビデオ共有、ビデオストリーミングといったモバイルでよく利用されるサービスは女性が多い傾向があります。

カテゴリ別では、ビデオストリーミングが開花の時期を迎えました。「Netflix」が欧州に市場を拡大、また米国でケーブルTVサービスを解約し、オンラインサービスで必要なコンテンツを選んで視るいわゆる“コードカッター”が増えました。MLBやNFLなど米国でメジャースポーツがオンライン戦略を重視し始めたのもストリーミングの成長を後押ししました。

また、シェアリング経済がグローバル規模で成長し、旅行・交通カテゴリで、配車サービスの「Uber」や「Lyft」、民泊仲介の「Airbnb」などが売上上位に食い込みました。

同年6月時点でアップストアのアプリ数は120万本と目覚ましい成長を遂げましたが、短期間の巨大化は混乱も生み出しました。大量のアプリの中で新しいアプリが存在感を示しにくくなり、開発者のビジネスチャンスとユーザの発見の歯車がうまく噛み合わなくなってきました。また、承認と拒否が繰り返されたり、長期化することがある審査にも開発者から不満の声が上がりました。

そうした問題を根本的に解決するため、12月にフィル・シラーがアップストアの統括責任者に就きました。それまで異なるマネジメントになっていたアップストアの審査および開発者リレーションとストア運営を統合し、ユーザと開発者の双方の利益につながる改革を行いました。

iOSユーザの方が積極的に消費する傾向は今も変わらず、2017年時点でも消費支出のシェアはApp Storeが66%、Google Playが34%です。iOSユーザの方がスマートフォンやタブレットをより活用しているのがわかります。(出典:App Annie)

新たな成長カテゴリの登場

2015年2月にはアップストアに登録できるアプリの最大サイズが2GBから4GBに引き上げられ、レティナ・ディスプレイなどゲームにメリットが大きい変更がありました。ゲームは市場の成熟化が見え始めていましたが、日本を含むアジア地域でコアゲーム・アプリが伸び、新たな成長へと向かい始めました。

その前年にアップルは「ヘルスキット(Health Kit)」を発表、そして2015年4月にアップルウォッチを発売。フィットネスやヘルス関連のアプリ市場が成長する環境が整いました。また、米国でアップルペイを開始し、個人のファイナンスハブとしてスマートフォンの重要性が高まります。

App Storeをデータで読み解く

エリア別の消費支出では、アジア・太平洋地域が60%近くを占めるようになりました。

世界を動かしたベストアプリ

2014

Adobe Capture CC

【開発】Adobe 【価格】無料

【場所】App Store>仕事効率化

クリエイティブツールの大手ベンダーであるアドビ システムズがモバイル分野に参入を開始しました。この年からデスクトップ版の移植ではなく「制作補助」を目的とした数々のアプリをリリースし始めています。このアプリも撮影した写真をそのままAdobe Illustratorで使えるベクターデータに変換するという新しいタイプのツールでした。

2015

Workflow

【開発】Apple 【価格】無料

【場所】App Store>仕事効率化

インストール済みのアプリのさまざまな操作を組み合わせて自動化できるツールとして評価が高かったのがこの「Workflow」です。その使いやすさに着目したアップルが買収、ついにはiOS 12で「ショートカット」として標準機能となりました。

 

Duet Display

【開発】Duet, Inc. 【価格】2400円

【場所】App Store>仕事効率化

iPadをMacのサブディスプレイとして使えるユーティリティも登場しました。持て余しがちなiPadの広い画面を有効利用したいというニーズに応えるものでした。

 

Adobe Lightroom CC

【開発】Adobe 【価格】無料

【場所】App Store>写真/ビデオ/p>

iOSデバイスに搭載されるカメラの性能向上に伴って、写真編集アプリもより専門性が求められるようになりました。iOS 10でiPhoneが採用したRAW撮影に対応したアプリの1つがAdobe Lightroom CCです。

 

Autodesk SketchBook

【開発】Autodesk Inc. 【価格】無料

【場所】App Store>エンターテイメント

Apple Pencilの登場でiPad Proや一部のiPadにおいて筆圧やペンの傾斜など、より現実に近い描写が可能となり、ドローイングアプリの「Autodesk Skechbook」が注目を集めました。創作の可能性は加速度的に広がり、新しい表現を試みるアーティストも数多く輩出されるようになっています。

収益性の高い巨大マーケットに成長

2014年には米国を中心にApple Payのサービスが開始され、「ファイナンス」という新しいアプリ市場が本格的に起ち上がりました。翌2015年には「Hulu」「Spotify」「HBO NOW」といったエンターテインメントアプリが消費支出のトップ5にランキング入りします。音楽や映像などのストリーミングプラットフォームとしてのApp Storeが注目され始めた記念すべき年と言えるでしょう。