スマホじゃできない!
この「RX100M6」は、ソニーが発売している人気高級コンパクトデジカメシリーズの最新モデルです。「RX100」シリーズは、少しずつ特徴の異なる旧モデルのほとんどが販売されているという珍しいプロダクトで、共通して搭載された1インチの大型センサと一眼並みの豊富な機能により、アマチュアからプロにまで幅広いファンが存在します。
「M6」最大の特徴は、最大ズームが200ミリと大幅に拡張された点。前モデルの「M5」が70ミリ、シリーズ中の最高でも100ミリだったので、一気に倍以上のズームが可能になっています。最近はiPhoneを筆頭にスマホのカメラが高画質化し、コンデジは全体的に苦境となっていますが、これ程のズームを備えたスマホはまだ存在しません(iPhone Xの標準レンズが28ミリ、望遠レンズでも57ミリ相当)。スマホ撮影全盛の時代だからこそ、あえて別にカメラを持ち歩く意味を最大限に追求した開発コンセプトが明確に感じられます。最大ズーム時は大きくレンズが飛び出すものの、本体はシリーズの従来機同様非常にコンパクト。バッグにも無理なく入れて携帯できるサイズです。
実際に撮影してみると、24~200ミリというズーム幅はアングルの自由度が非常に高く、便利さと撮影の楽しさを同時に味わえます。最大ズーム時でF4と、前モデルに比べて多少レンズが暗くなっていますが、暗部に強いソニー製センサの強みが活かされており、ある程度ISO感度を上げてもあまりノイズが気になりません。
写りは隅々まで非常にシャープで、月の写真などは、筆者所有の一眼カメラで撮影したものより解像感が良く驚愕しました。「単焦点レンズで味わいのあるボケを出す」といった用途以外では、過半数のユーザにとって普段使いとして「一眼でなくて十分」と思わせるポテンシャルを持っています。フィルムの時代から30年以上カメラを触っている筆者にとっても、歴代上位に入るレベルで満足度の高いカメラです。
細部まで低ノイズで明瞭
筆者自宅2Fのベランダから、手持ちで200mm望遠で月を撮影した例(JPEG等倍でトリミング、その他未加工)。細部まで非常にシャープに描写されており、暗部のノイズも気にならない程度です。
圧倒的な携帯性
レンズ収納時のサイズ・重量は従来機とほぼ同じで、最大の200mmズームに設定すると大胆にレンズが飛び出す仕掛け。それでも、同程度の焦点距離を持つ一眼よりも圧倒的にコンパクトで、普段の持ち歩きも苦になりません。
プロ機並みの動画機能
「RX100」シリーズは、前々モデルの「M4」以降で4K撮影にも対応するなど、動画機能も非常に充実。本製品では、新たに暗い所から明るい所までの情報を豊富に収録できる「ハイブリッドログガンマ」によるHDR(ハイダイナミックレンジ)撮影も可能になりました。普及が進んでいる対応テレビで視聴すると、黒つぶれや白飛びのない、非常に自然で美しい映像を堪能できます。また、前モデルにも搭載されていた最大40倍のスロー機能は、200ミリズームとの組み合わせで利用価値が大幅にアップ。動物やスポーツの撮影では、コンデジの範囲を超えた表現が可能です。
本製品は14万円台とコンデジとしては高価ですが、こうしたプロ機レベルの動画機能を備えた製品としては「最安」と見ることもできます。連続撮影時間が短い点(4Kの場合5分程度、HDで最大30分)を除けば、高画質なビデオカメラとしても家庭用以上の実力を持っています。
同シリーズ向けには、Macなどパソコン向けのユーティリティ「イメージング・エッジ(Imaging Edge)」や、iOSアプリの「プレイ・メモリーズ・モバイル(Play Memories Mobile)」が用意されており、リモート操作や写真の転送などが行えます。イメージング・エッジでは、Macの大きな画面で映像を確認しつつ、ソフト上からシャッターを切れるので、細部の確認や手ぶれの対策が重要なマクロ撮影などにはとても重宝します。また、プレイ・メモリーズ・モバイルでは、製品本体のWi−Fi機能を使ってiPhoneにワイヤレスで画像を転送できるので、出先で撮った写真をすぐSNSに投稿できます。
「RX100」シリーズは旧モデルも販売され続けているため、レンズの明るさや価格という観点で旧モデルを買う選択肢も存在します。それを踏まえたうえでも、高画質・高機能を維持しながら200ミリズームを備えた「M6」は非常に魅力的。いつでも「作品」を撮れるレベルのツールを携帯したい人は、一度触れてみてください。
被写体に肉薄できるズーム機能
同じ場所から、最大ズームの200mm、前機種の最大値70mm相当、ワイド端の24mm(iPhoneの標準レンズ28mmに近い)で撮影した例(全て未加工のJPEG撮って出し)。iPhone撮影では難しい、被写体にぐっと迫った撮影が行え、運動会などの撮影にも十分に対応できます。
Macなどからリモート操作
Mac用ユーティリティ「Imaging Edge」やiOSアプリ「Play Memories Mobile」を使うと、USBやWi-FI経由で、リアルタイムで画像を確認しながらリモート撮影が可能です。
プロ向け機材に迫る動画機能
4K撮影した動画から切り出したショット。写真同様非常にシャープで、大型テレビでの鑑賞にも十分に耐える画質。ハイブリッドログガンマによるHDR撮影、40倍スローといった、高価なプロ向け機材並みの機能も豊富に搭載されています。
[SPEC]
[デジタルスチルカメラ]DSC-RX100M6
【発売】ソニー
【Size】約101.6(W)×58.1(H)×42.8(D)mm(通常)
【価格】14万9990円(ソニーストア価格)
【URL】https://www.sony.jp/cyber-shot/products/DSC-RX100M6/
【主なスペック】
【重量】約274g(本体のみ) 【イメージセンサ】センサタイプ:1.0型(13.2mm x 8.8mm) Exmor RS CMOSセンサ、総画素数:約2100万画素、有効画素数:約2010万画素 【レンズ】レンズタイプ:ZEISSバリオ・ゾナーT*レンズ(レンズ構成:12群15枚(AAレンズを4枚含む非球面レンズ8枚)) F値(開放):F2.8(ワイド端時) -4.5(テレ端時)、虹彩絞り:7枚 【カメラ】フォーカスモード:オートフォーカス(AF-S)、オートフォーカス(AF-A)、オートフォーカス(AF-C)、ダイレクトマニュアルフォーカス、マニュアルフォーカス など
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大須賀 淳
テクノロジーを遊びつくす映像作家・音楽家。【URL】https://junoosuga.com