NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が6月、無料メッセージアプリ「+(プラス)メッセージ」のiOS版をリリースした。電話番号だけで長文のメッセージや画像のやりとりができ、スタンプやグループトークにも対応する。既存のメッセージアプリを置き換えて使うメリットはあるのだろうか。
制限多いが期待大
iPhoneユーザが使うメッセージアプリの定番といえば、純正アプリやLINE、SNSのメッセージ機能といったところだろう。そこに新たに加わろうしているのが、大手3キャリアが共同で提供するメッセージアプリ「+(プラス)メッセージ」だ。アンドロイド端末向けには、今年の5月上旬からすでに配信が始まっており、6月下旬に アップストア(App Store)でiOS版の提供がスタートした。
+メッセージ
【開発】NTT DOCOMO, KDDI, SoftBank 【価格】無料
このアプリを一言で表すなら、「SMSの機能拡充」である。SMSは「ショートメッセージサービス」の略で、電話番号を使用するのが特徴だ。iPhoneのメッセージアプリでは、グリーンの吹き出しで件名がつかないものがSMSとなる。文字数によって3~30円の送信料がかかるほか、他社端末への送信は全角70字の文字制限がある。画像および動画の送受信もできず、現代のメッセージサービスとしては使い勝手が非常に悪い。
そこで、SMSの利便性を向上させ、電話番号のみでリッチなコミュニケーションを可能にするのが「プラスメッセージ」だ。文字制限は最大全角2730字まで引き上げられ、写真や動画、スタンプのやりとりにも対応。他社サービスと遜色ない仕上がりとなっている。本誌読者向けには、「アップルユーザ以外も使えるiメッセージ」と表現するとわかりやすいかもしれない。
現段階では認知度が低くまだ利用者が少ないうえ、LINEと比べて圧倒的な優位性がないため、乗り換える必要性を感じないのが正直なところだ。しかし、SNSやレビューの反応を見ると、意外と評価は悪くない。実際に使ってみると、初期設定が簡単、UIがシンプル、現段階ではスタンプがすべて無料など、たしかにメリットも多いのだ。不明な差出人からのメッセージは一目瞭然で、メニューから迷惑メッセージ報告も簡単にできる。
ITリテラシーが高くないユーザにとっては、キャリア製という安心感も大きいだろう。LINEは初期設定時にID登録、電話番号の連係が必須となるうえ、機種変更でデータを引き継ぐには、メールアドレスもしくはフェイスブック連係も必要となる。電話番号のみで設定が完了し、乗っ取りの危険性もほぼないプラスメッセージは、利用するハードルが低く安全性が高いサービスと言える。
一方で課題も多い。まず、UQモバイルやワイモバイル、MVNO(格安SIM)には現段階で対応していない。また、発信はできるが、通常の通話機能となるため、料金プランによっては通常の通話料金がかかる。リリース直後なので仕方がない面もあるが、ユーザの少なさも気になる。メッセージサービスは利用者への普及が鍵となるため、機能を拡充しつつ、3社が手を取りプロモーションを積極的に進めてほしいところだ。
ではなぜ、すでに他のメッセージアプリが普及しているにもかかわらず、3社は新しくプラスメッセージを提供することになったのか。ひとつは、ビジネスシーンでのニーズが考えられる。たとえば、LINEのIDを教えたくない仕事上の相手とのやりとりや、企業のDM配信、メッセージ上でのサポートサービスなどだ。つまり、既存のメッセージアプリを置き換えるというより、用途に応じてアプリを使い分けるようになる可能性がある。
また、将来的に決済機能が搭載されれば、ホテルやレストランのお店選びから予約、決済まで、トーク上でやりとりしながら済ませられるようになるかもしれない。プラスメッセージの競合はLINEではなく、企業向けアカウントサービスのLINE@に近いと言えそうだ。
好評の無料スタンプ
用意されているスタンプのデザインは悪くなく、どれも使い勝手がよいものばかり。LINEでは有料で配信されているようなクオリティのスタンプが、無料で配信されていることもあり、口コミでも好評のようだ。
マップで位置共有
用意されているスタンプのデザインは悪くなく、どれも使い勝手がよいものばかり。LINEでは有料で配信されているようなクオリティのスタンプが、無料で配信されていることもあり、口コミでも好評のようだ。
細かな通知設定
LINEとの大きな違いが、通知設定を細かくカスタマイズできるところ。1時間もしくは翌朝まで通知をオフにできるので、作業に集中したいときに便利。受信通知そのものをオフにすることも可能だ。
ボイスメッセージに対応
文字を打てないシチュエーションで役立つのが、ボイスメッセージ機能だ。トーク画面上の再生ボタンを押すと、音声が再生される。シニア世代やスマホを持ち始めた人など、キーを打つのが苦手なユーザにとっても便利な機能だ。
また、プラスメッセージは携帯電話事業者の業界団体GSMAで世界的に標準化されているメッセージサービス規格、RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)に準拠している。キャリアにとっては、従来のガラパゴスなSMSやキャリアメールの仕組みから脱し、世界の標準規格に対応する目的もあるとみられる。
現段階ではまだ存在感の薄いサービスだが、今でも十分楽しめるので、周りを誘って試してみてはいかがだろうか。