Mac業界の最新動向はもちろん、読者の皆様にいち早くお伝えしたい重要な情報、
日々の取材活動や編集作業を通して感じた雑感などを読みやすいスタイルで提供します。

Mac Fan メールマガジン

掲載日:

人とAIをつなぐSiriという存在

人とAIをつなぐSiriという存在

AIがぶつかる壁

グーグルは、5月に開催した開発者カンファレンスで「デュープレックス」というテクノロジーを公表した。オンライン予約システムを持たないレストランやヘアサロンに、グーグル・アシスタントがユーザの代わりに電話をして予約を取るというものだ。電話をとった店のスタッフが、自分が機械と話しているとは気づかないほど、臨機応変で自然な会話だった。

AIブームが叫ばれる昨今、並行して急成長しているスマートスピーカにおいて、ワンランク上のタスクをこなせるという意味では、デュープレックスならすぐにでも有能なアシスタントになってくれそうだ。しかし、デュープレックスが自然に会話できるのは、店の予約のような会話のパターンを予想しやすいケースのみだ。グーグルは、自然な会話がAIと人とのインターフェイスになり得る未来の可能性を示したが、AIがまだ人と自由に会話できない現状も露わにした。

AIとのインターフェイス

アップルはSiriに関して、iOSデバイスでユーザのことを学んだSiriがユーザのために提案する「Siriサジェスチョン」と、「Siriショートカット」という新しいワークフローを機能を組み合わせたアクションの自動化を発表した。

たとえば、駅を出たときにいつも行くカフェで飲み物を注文するショートカットがロック画面に表示される。または「帰宅する」と一言告げるだけで、自動的に「今から帰る」メッセージが送信され、通勤時にいつも聞いているポットキャストの準備が整うというようなことが可能になる。AIはより良い体験を実現するための技術のひとつとするアップルのアプローチがよく活かされた機能である。

ショートカットのポイントは、すべてのユーザが自動化の恩恵を受けられることだ。自動化というとMacの「オートメータ」やiOSの「ワークフロー」がある。選択したファイルをまとめて変換するなど、時短ソリューションとしてパワーユーザに人気のあるツールだ。だが、ワークフローを組むのが難しくて一般ユーザの利用は少ない。

そこでアップルは、iOS 12の自動化機能ではワークフローを自作できるだけではなく、アプリが対応したら、ユーザがアプリからワンタップで簡単にショートカットを作成できる仕組みも用意した。さらにSiriサジェスチョンで、ユーザが必要とするであろうショートカットをSiriが提案するようにした。パワーユーザを満足させられるぐらいパワフルかつ柔軟で、普通のユーザでも役立つショートカットを活用できるぐらい簡単でもある。

ショートカットはAIの革新的な技術ではなく、iOSデバイスユーザがSiriをより便利に活用できるようにする機能に過ぎない。だが、そのインパクトは大きい。1986年にアップルがマッキントッシュを発表したとき、グラフィカルインターフェイス(GUI)はすでに存在していた技術だった。しかし、普通の人々がコンピュータを操作できるようにアップルが提供したから、人々とコンピュータの関係が大きく変化した。

この秋から、iOSデバイスでアプリを開くのではなく、ショートカットによってユーザがもっと直接的に目的のアクションやタスクを完了できる機会が増えていくだろう。今はまだ実感できないが、iOS 12の自動化機能はAIとユーザを結ぶ新しいヒューマンインターフェイスである。

便利な反面難しさも

ショートカット・アプリを使って、ショートカットをカスタマイズ。音声コマンドを割り当てたら、Siriに頼んでアクションを起こせるようになるが、ワークフローを組むのはプログラミングのような難しさがある。

ショートカットを活用

アポイントメントの時間に遅れそうになったときに、相手にメッセージを送るショートカットをシリが提案。自分でショートカットを作れなくても、AIやアプリ開発者の助けによって、誰でもショートカットを活用できる。