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腹落ち感が生み出す研修の価値

著者: 福田弘徳

腹落ち感が生み出す研修の価値

新人研修に関わる機会が増え、新入社員とのコミュニケーションなどを通して、新人研修に必要な要素は何であるかを考える時間が増えた。企業の新人研修は人事部を中心に、さまざまなプログラムが企画され、膨大なインプットが行われるものだ。企業理念や業界知識、商品情報、ビジネスマナー、現場に出るまでに必要な知識や技術を一定期間で一気に吸収してもらう。まだスポンジ状態の新入社員に、どのような水を注ぐのかが、将来の担い手である新入社員の育成に大きな影響を与えることになる。

一方で、研修を通して学んできたことを発表したり、グループで討議したりするなど、プレゼンやレポート作成などのアウトプットの場面も多い。アウトプットの機会は、自分自身の考えをまとめたり、わかりやすく伝えることを習得したり、研修を企画するうえでも外せないポイントだ。

ビジネスの現場でもっとも重要なアウトプットである「成果の質」を上げるために、このインプットとアウトプットの一連の活動の中で、あまり気づかれていない点がある。それは、インプットとアウトプットの間を行き来する思考のプロセスだ。

新しく知り得た情報や習得した技術を相手にわかりやすく伝えるためには、まず自分の言葉にしなければならない。言い換えれば「腹落ち感」が大事ということだ。インプットされた情報が自分自身の中で納得できるまで消化され、自分の言葉で説明できる状態まで到達することで、初めて相手に伝わるアウトプットが実現できるのである。

新人研修に関していえば、研修の目的や実施する背景を理解し、自分自身がどうあるべきかを具体的に描ける状態になることである。よって、そうした要素を新人研修に盛り込まなければならない。研修内容を盛り沢山にしてインプットを増やしたり、レポート作成などのアウトプットの機会を増やしたりするだけではダメである。他人と対話したり、自分の考えをまとめながら話すような時間を用意することこそが、腹落ち感を生み出すためにもっとも大事なことなのだ。 企業の中ではさまざまな研修が行われているが、成果に通じるかどうかは、すべてこの腹落ち感が醸成できているかどうかにかかっている。

モバイル活用の現場でよくある話だが、iPadの配付時に行われる使用方法やアプリの操作説明のような研修も、iPadが業務の中でどう使われるか以上に、iPadを使ってどんな成果を生み出そうとしているのか、iPadの導入目的をしっかり共有することが大事である。iPadの操作方法よりも、なぜその業務プロセスをモバイルで行う必要があるのかを考えることが、モバイルの利活用を促進するきっかけとなる。配付されたiPadの操作方法やアプリの機能を理解すること以前に、iPadを利用する目的や業務上の課題を伝えることが、研修の一番最初に行われるべきことなのだ。

このように、iPad活用の研修目的がしっかり伝えられ、利用者一人一人がその目的に腹落ち感を得られると、モバイル活用の本質を考えるきっかけが自ずと生まれる。結果、自然とiPadの利活用が促進され、ビジネス成果の質を高めることにつながるだろう。

さて、皆さんの研修では、腹落ち感を生み出せているだろうか。日々の業務で良質なアウトプットが生み出されているだろうか。これまでのiPadの利活用を再定義(Redefine)し、新たなモビリティを実現するうえでも、現場の「腹落ち感」についてこの機会に考えてみてほしい。

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Hironori Fukuda

企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。【URL】www.too.com/apple