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iPadで“思考センス”を育てる「Think! Think!」

著者: 山田井ユウキ

iPadで“思考センス”を育てる「Think! Think!」

「学力」とは何か。知識、計算力、記憶力……学力を構成する力はさまざまあるが、その根幹となる能力は何なのだろう。そして、それを子どもたちに身につけさせるためには、どうすればいいのだろう。明確な答えのないこの難題に、数多くの教育者が挑み続けてきた。

iOSデバイスでリリースされている教材アプリ「シンクシンク(Think! Think!)」を開発した株式会社花まるラボの代表取締役・川島慶氏も、そんな挑戦者の1人だ。東京大学在学中から花まる学習会で児童教育に携わり、同塾を運営する株式会社こうゆう代表の高濱正伸氏とともに、算数脳パズル「なぞぺー」シリーズを執筆。以降、10年間教育事業一筋でやってきた。

Think! Think!(シンクシンク)

【発売】花まるラボ

【価格】無料

【場所】App Store>教育

【URL】https://think2app.hanamarulab.com/

空間認識や平面図形などの問題を通じて、子どもの「思考センス」を育むことができる教材アプリ。代表の川島氏を中心とする東大卒精鋭チームによる8000題以上の高品質な問題に、子どもたちはスマートフォンやタブレットでチャレンジすることができる。全世界を対象とした「Google Play Awards 2017」のKids部門では、国内アプリとして初めてファイナリストに選出された。

シンクシンクの開発に取り組むきっかけとなったのは、児童養護施設での学習支援の経験だったと川島氏はいう。経済的・文化的に恵まれた子どもたちがいる一方で、家庭環境などの影響からそもそも意欲を持てない子どもたちもたくさんいることを知り、この「意欲格差社会」をどうにかしたいと考えるようになった。

そこで川島氏が開発したのが、楽しみながら学習できる教材・シンクシンクだった。学生時代に執筆した「なぞぺー」シリーズをヒントに、最初は紙で作成し、実際に国内外の教室で活用したところ、生徒や保護者から大きな反響があった。「これならいける」と手応えを感じた川島氏は、2014年に花まるラボを起ち上げて、本格的にシンクシンクの開発に着手することにした。

8000題以上の問題が無料で楽しめる

「Think! Think!」には、8000題以上の高品質な問題が収録されている。問題を作成するのは、算数脳パズル「なぞぺー」シリーズの執筆を手掛け、花まる学習会「思考力特別講座」のカリキュラムを考案した川島慶氏率いる東大卒精鋭チームだ。問題数は無料とは思えないスピードで増え続けている。

デジタルならではの「動き」で子どもの理解が進む

図を使った問題は、「動き」が見えることでより理解が早まる。「Think! Think!」はデジタル媒体の特性を活かし、回答がアニメーションで提示される。予想した答えが合っているかどうかが実際の動きで確認できるため、子どもたちにとってもイメージしやすいのだ。

意欲格差を是正し、すべての子どもたちの学力を伸ばしてあげたい。そんな理念で起業した川島氏がまず着目したのは、「思考センス」だ。思考センスとは「物事の表面を見るのではなく、その背景や本質が何なのかを想像し、自ら解決策を見出す力」のこと。「一を聞いて十を知る力」と言い換えてもいい。この思考センスの有無で、同じ学習量でも身につく学力はまったく違ってくると川島氏は考えた。では、思考センスを身につけるにはどうすればいいのか。

「思考センスを鍛えるための土台となるのは、“空間認識力”だと考えました。今まで見てきた子どもたちの中で、ものすごくできる子というのは、立体の裏側を想像したりする空間認識力が優れていたのです」

空間認識力とは、「イメージする力」である。この力を鍛えることで、問題をさまざまな角度から捉え、抽象化する能力−−すなわち思考センスの育成につながるのだという。こうした考えを教材開発のベースとして、シンクシンクが生み出された。

シンクシンクでは、特に10歳までに飛躍的に伸びるとされている「空間認識」「平面図形」に特化した問題が多く収録されている。たとえば、展開図を組み立てて箱になるかどうかを想像する問題や、いくつかの点を結んで正方形が作れるかどうかを考える問題、ブロックが壁の穴を通り抜けられるかどうかを予想する問題などである。どれもクイズ感覚で楽しく挑戦することができ、それでいて思考センスが養える良問ばかり。「なぞぺー」シリーズの執筆で培った川島氏率いるチームならではだ。

デジタル媒体の特性を生かした動きのある演出も面白い。風船が割れたり、ブロックが穴を通り抜ける感覚の気持ちよさはゲーム的で癖になり、つい「もう一問」と続けたくなるよう工夫されている。

当初、月額1600円で提供していたシンクシンクだが、現在は無料化している。収益化のためにプレミアムプランの提供も想定しているが、無料でもかなりのボリュームだ。すべての子どもたちが平等に学べる社会?それも夢物語ではないのかもしれない。

「空間認識」「平面図形」「試行錯誤」の各分野に優先的に取り組めるカリキュラムを提供

「Think! Think!」では、思考センスを効率的に養うため、10歳までに大きく伸ばすことができる「空間認識」「平面図形」、また、すべての問題に取り組む基本的な姿勢「試行錯誤」を優先的に取り組めるカリキュラムが提供されている。展開図を組み立てて立方体になるかどうかを想像する問題や、点の中から正方形となる4つの頂点を探す問題など、バラエティに富んだ良問が数多く揃っている。

ゲーム的要素が盛りだくさん!子どもが楽しく続けられる

メダルやポイント、ランキングなどゲーム的な要素が満載なのも「Think! Think!」の特徴だ。楽しくなければ続かないということは、教育現場に長く関わってきた川島氏が特に実感していること。期間限定の特別問題などもあり、常に子どもたちがワクワクできる仕掛けを作り出している。

思考力特別講座の看板教材の1つアプリ内では月例大会も開催!

「Think! Think!」は「花まる学習会」の思考力特別講座でも使われている。同講座は2015年4月に開講した思考力育成特化型の特別講座で、20倍以上の倍率という狭き門。「Think! Think!」は思考力プリント、プログラミング、囲碁、作問といった同講座の思考力教材の中でも看板教材の1つ。また、アプリ内では、毎月10日から1週間、月例大会を実施、3カ月に1度はワールドカップを開催している。いくつかの問題がミックスされて出題されるので、自分の実力を試すことができる。

株式会社花まるラボ

代表取締役:川島慶