Macが壊れちゃう!
最近のMacのストレージで主流となったSSDは、基板上にあるNANDフラッシュメモリにデータを読み書きしています。しかし、このNANDフラッシュは構造的に書き込み可能なデータ量の上限があり、それを超えるとSSDは故障してしまいます。この耐久性を表す指標の1つがTBW(Total Byte Written:総書き込み容量)で、MacシリーズのTBWは公表されていませんが、たとえばウエスタンデジタルの「WD Blue SSD」の250GBモデルでは100TBWとなっています。この数値は理論上はHDDより高く、数十GBのデータを絶え間なく4~5年書き込んでも余裕ですが、SSDの空き容量が極端に少なくなると同じ場所の書き込みが多くなるのでエラーの発生確率は高くなります。
また、macOSでは、メインメモリ(RAM)の空き容量が少なくなると、ストレージ内にスワップファイル(仮想メモリ)を自動で作成します。メモリよりは低速ですが、読み書きが比較的高速なSSD上にスワップファイルを展開することでパフォーマンスの低下を防いでいるのですが、ストレージの空き容量が少なくなってくると、このスワップファイルを生成することができずにメモリ不足の状態に陥ります。その結果として動作が遅くなってしまい、作業にも支障をきたします。
ユーザのパフォーマンスも落ちる
一方で、最近は足りないストレージを補うためにファイルをクラウドに逃がすという流れが普及し始めています。とはいえ、現状ではクラウドストレージの価格はローカルストレージの価格と比べて必ずしもリーズナブルとは言えません。たとえば、アイクラウド(iCloud)のストレージプランは一番大きなサイズで1TBで月額1300円(原稿執筆時点)で、1年で1万5600円、5年で7万8000円となります。これは4TBのHDDを2台搭載した評価が高いRAIDストレージを買ってもお釣りがくる費用なのです。
さらに、ストレージの空き容量が少ない状態だとMacのパフォーマンスが低下し、それを使う人間側のパフォーマンスも低下します。操作の待ち時間が増えたり、メンテナンスのための時間が増えたりするのは生産性を下げますし、空き容量のやりくりという本来必要としない「作業のための作業」すら発生してしまいます。さらに、これらの理由で作業を中断されることで、集中力も削がれてしまうのです。
こうしたいずれのトラブルも、不要なファイルが増えたりシステムが肥大化してしまった「メタボMac」特有の現象です。思い当たるところがあったら、いったん自分の使い方や設定を見直して、Macのダイエットが必要です。
メタボMacの特徴はコレだ!
メタボMacは壊れやすくなる
Macのストレージの空き容量が少ない状態で使い続けていると、ある日突然Macが起動しないような重大なエラーが発生することがあります。しかもSSDの性質上、HDDのように異音の発生や書き込み速度の低下といった予兆を感じさせずに破損して“突然死”してしまうことも起こりうるのです…。しかも、HDDと比べると書き込まれたデータの復旧は困難という問題もあるので、日頃からのデータバックアップの必要性と同時に、ムダなファイルを保存しないなどの対策が必要です。
メタボMacはお金がかかる
当たり前ですが、Macのストレージが大容量なモデルになるほど本体価格が高くなります。SSDは大容量なほうがパフォーマンスが高いという利点もありますが、費用もまた格段に増してしまいます。さらに、初期コストだけでなくバックアップのための外付けHDDの容量や各種クラウドサービスのプランも大きなものになるため、比例してランニングコストも高くなる傾向があります。ただし、こちらのコストはこれから紹介するストレージダイエットによって抑えることが可能です。
メタボMacは動作が遅くなる
Macでは足りなくなったメモリを補うために、起動ボリューム上に仮想メモリ(スワップファイル)を数GB単位で展開する仕組みになっています。しかし、ストレージの空き容量が極端に少なくなると、この機能が使えなくなってしまい、そのせいで動作がガクッと遅くなります。同時に複数のソフトを起ち上げないといった対症療法もありますが、あくまでもその場しのぎになってしまうため、基本的にはスワップファイルが作られても問題ないほどの十分な空き容量を確保しておくことが先決です。
メタボMacは作業速度が下がる
机の上が汚いと人間の作業効率が上がらないのと同じように、Macもファイルがごちゃごちゃして内蔵ストレージの空き容量が少ない状態では、作業パフォーマンスが低下してしまう傾向が見られます。もちろん、この理由はMac側にも人間側にもありますが、本来は生産性を上げるためのMacで作業速度を下げてしまってストレスが溜まってしまうのは本末転倒。まずはストレージを快適な状態に保つ必要があります。ストレージのやりくりのために時間をとられ、さらに集中力まで下げられてしまっては しょうがありません。
メタボMacは不具合が多くなる
以前の環境から何度もアップデートを重ねることで注ぎ足し注ぎ足し使ってきた、いわば“秘伝のタレ”状態になってしまったOSは、不要な設定ファイルや非対応になってしまった機能拡張が残っていることが多く、ふとした拍子で動作の不具合を引き起こすこともあります。トラブルになった場合、根本となる原因はなんなのかを突き止めることも難しいですし、システム自体が肥大化してしまうという問題もあります。こうなってしまわないように、OSの再インストールなどで、不要な設定ファイルなどをリフレッシュする必要があるでしょう。
メタボMacはソフトが動かなくなる
Macの内蔵ストレージの中に画像ファイルや動画ファイルを必要以上に高い解像度で保存したり、圧縮しないファイル形式で保存したりすると、ストレージの空き容量があっという間に不足してしまいます。さらに、これらの大きいサイズのファイルを取り扱うとソフトの動作が遅くなったり、最悪の場合メモリ不足でMacが動作しなくなったり、ファイル自体を破損してしまうことも起こりうるでしょう。ノートブックを中心とした、マシンパワーより機動性が求められるモバイル環境では特に発生しやすいので、注意が必要です。
メタボMacはパケ死しやすい
特にMacBookシリーズなどをモバイル環境で使っている場合、うっかり大容量のファイルをクラウドサービスと同期させてしまったりすると、あっという間にモバイルデバイスのデータ通信の上限容量に達してしまいます。いわゆる「パケ死」の状態で、次の月になるまで通信制限のかかった遅い状態で我慢するか、割高な追加容量を購入するハメになります。経験したことがある人ならわかりますが、これは非常に大きなストレスになります。通信の設定を見直したり、ムダに大きなファイルを扱わないなどの対策が必要です。