バタフライ構造のキーボードで、正常に入力できないキーが出てきたというユーザからの報告が相次いでいる。異物やゴミの影響を受けやすいのがバタフライ構造の弱点。それを踏まえて使うことにより対処できるトラブルだが、故障してしまうと修理費用が高額になる。AppleCareで備えておくべきか、ユーザの悩みどころになっている。
構造的欠陥か、弱点か
「バタフライ構造のキーボードの耐久性は許容できる範囲か?」。MacBookシリーズのユーザの間で、そんな議論が交わされている。
キーボードはMacの中で故障が起こりやすいパーツの1つである。ユーザが毎日触れるパーツだから故障するのは仕方ない。しかし、1年と経たずに正常に入力できないキーが出てきたというユーザからの報告がアップルのサポートフォーラムなどに寄せられている。
症状は、まずキーを押したときに何かが引っかかっているような高音のノイズが発生したり、ほかのキーとは異なるタイプ感になる。そのうち1回のタイプで同じ文字が二度入力されたり、押しても入力されないといった症状が起こり始める。ジーニアスに相談したユーザによると、多くのケースでキーの間に入り込んだ微細な異物やたまったゴミが原因になっており、普段からこまめにケアしておくことで大きなトラブルを避けられる。
バタフライ構造のキーボードは、わずかな指の動きで素早く、快適にタイプできる。ただ、キーストロークが浅いため、従来のキーボードより異物などの影響を受けやすい。議論に参加するユーザの多くは、構造的な欠陥ではなく、バタフライ構造の弱点として受け止めている。
問題は、故障してしまったときである。正常に動作しなくなったキーの交換がトップケース全体の交換になってしまう。MacBookプロのスペースキーが動作しなくなった技術ライターのケーシー・ジョンストン氏の場合、パーツ費用だけで約700ドル(約7万9000円)だった。1つのキーに異物が入り込んだことによる故障から大がかりな交換になっていては、キーボードを多用する人なら将来的にMacBookを買い替えられるぐらい修理費用が積み上がってしまうかもしれない。故障する可能性の高いパーツだからこそ、故障しても費用をかけずに、また修理でユーザがMacBookを使えない期間が短期間で済むようにデザインしてほしい、というのが多くのユーザの声である。
このタイミングでキーボードの問題の議論が広がったのは、2016年秋に発売されたMacBookプロの1年間の製品保証が切れ始めたからだ。不調を覚えるキーがあったら保証期間中にジーニアスに相談しておくべきであり、キーボードをよく使う人はアップルケアを購入しておいたほうが安心である。キーのトラブルを恐れながらキーを叩いていたら生産性にも影響する。
ノートPCでもセキュリティのためにログインのパスワードを設定しておくのが一般的になってから、キーボードは単なる入力デバイスではなくなった。たとえるなら、家のロックの鍵穴。押したキーの文字が正常に入力されないようなことになったら中に入れない。
アップルの解決策は?
ジョン・グルーバー氏やマルコ・アーメント氏といったユーザコミュニティのオピニオンリーダーも、このキーボードの問題に言及しており、アップルにもユーザの声が届いているはずである。そもそもバタフライ構造の修理しにくさをアップルが認識していなかったとは考えにくい。それでも同社は、MacのポストPC化を進める薄いキーボードを採用した。
この問題は「MacBookの進化の痛み」という見方もできる。バタフライ構造に進化させたとはいえ、基本的にPC時代のままのキーボードがポストPC化に進むMacBookに残っている。ポストPCデバイスとしてゼロからデザインされたiPadには、本体にハードウェアキーボードはなく、キーボードカバーもゴミや異物にまったく影響されない設計になっている。トラックパッドやタッチバーとともにMacの操作が進化し、いずれMacBookからPC時代の名残りの欠点を抱えたキーボードがなくなる日が来るかもしれない。少なくとも、次のデザインで、よりPCらしいキーボードに巻き戻すような解決策をアップルが講じるとは考えにくい。(文/山下洋一)
保証とサポートがMacの購入日から3年間に延長されるMacBookシリーズのAppleCareは、MacBook/MacBook Airが2万3800円、13インチMacBook Proが2万5800円、15インチMacBook Proが3万5800円だ(すべて税別)。
Appleはサポートページで、エアダスターを使ったバタフライ構造のキーボードのお手入れ方法を解説している。キーが不調になってからではなく、予防のために日頃からすき間に入り込みそうなゴミを落としておくのがおすすめ。【URL】https://support.apple.com/ja-jp/HT205662
アンテナゲート問題のときにトラブルを歌ったことで話題になったジョナサン・マン氏が、機能しなくなったスペースキーを歌ったYouTube動画「I Am Pressing The Spacebar and Nothing Is Happening」を公開した。【URL】https://www.youtube.com/watch?v=FdS3tjEIqUA