iPhoneの買い替えを考えてるユーザにとって、iPhone Xを買うべきか、8/8 Plusにすべきか、非常に悩ましいところです。ディスプレイやカメラ、サイズ感など具体的にどのように違うのでしょう? ここでは8や7シリーズと比較しながらiPhone Xのメリット/デメリットを解説します。
Display・オールスクリーンのメリット/デメリットって何?
10年以上費やしたデザイン
「10年以上もの間、私たちが考えてきたのは全面ディスプレイのiPhoneを作ることでした。そのビジョンを実現したのがiPhone Xです。(中略)iPhone Xは、iPhoneの新しい時代、デバイスがユーザ体験に完全に溶け込む時代の幕開けを告げるものになるでしょう」。そう語ったのは、アップル最高デザイン責任者のジョナサン・アイブです。
iPhone Xは対角5.8インチの「スーパーレティナ(Super Retina)HDディスプレイ」が全面に広がり、ホームボタンは姿を消しました。ディスプレイにはiPhone初のOLED(有機EL)を採用。圧倒的な解像度と高精細な表示、美しく正確な色表現と省電力を実現しています。
しかし、ディスプレイの一部はトゥルーデプス(TrueDepth)カメラシステムを避けるように変則的な形をするなど、これまでと異なる仕様に変更されています。また、大型化による画面割れも気になるところ。
アップルが10年以上費やして実現した未来のスマートフォンを一足先に体験するか、実用性を取って安定した仕上がりのiPhone 8/8プラスを取るか。まずは、ディスプレイの面からメリットとデメリットを見ていきましょう。
実寸サイズのiPhone X
iPhoneシリーズ最大となる5.8インチディスプレイのiPhone X。しかしベゼルを極限までなくし、オールスクリーンとなったことで、iPhone 8 Plusよりもコンパクトなサイズに収まりました。
オールスクリーンのメリットは?
HDRコンテンツを楽しもう
iPhone Xのオールスクリーンでは、iPhone 8/8プラスや従来のモデルとまったく異なった視覚体験を味わえます。iPhone史上最大となる5.8インチディスプレイの解像度は、iPhone 8プラスの1920×1080ピクセルを超え、2436×1125ピクセルのスーパーレティナHDディスプレイとなりました。
また、iPhone Xのコントラスト比は100万対1(iPhone 8は最大1400対1)と抜きん出た高さを実現しました。さらに、スマートフォンで最高レベルのシステムワイドのカラーマネジメントを備え、より深みのある美しい色と漆黒の黒が、写真やビデオをはじめとしたコンテンツの表現をぐっと高めてくれるでしょう。
また、ドルビービジョン(Dolby Vision)とHDR10をサポートしたことで、iTunesやネットフリックス(Netflix)などのHDR対応コンテンツを最大限楽しむことができます。iPhoneで映画やテレビ番組をよく見るのであれば、スーパーレティナHDディスプレイの恩恵を最大限受けることができます。
OLEDディスプレイは、液晶ディスプレイと違い、バックライトが不要なため、消費電力が抑えられる点も特徴的です。これにより、バッテリの駆動時間は、4.7インチディスプレイのiPhone 7と比べて最大2時間延長しています(詳細は30ページ)。大画面で高精細・高コントラストの美しいディスプレイと、省電力を実現したiPhone Xは、あらゆるコンテンツの体験を一段階上に引き上げてくれるスマートフォンなのです。
思わず自慢したくなる
技術的な側面ばかり取り上げましたが、何よりもiPhone Xはひと目でそれだとわかる先進的なデザインが魅力的です。iPhone 6/6プラス以降は前面のデザインの変化がほとんどなく、せっかく買い替えても、カバーを付けると違いが見えにくい状態でした。
だからこそ、iPhone Xならすぐに気づいてもらえますし、画面を見るたびに新鮮味を味わえるでしょう。iPhone Xが技術面でもデザイン面でも、ファンの所有欲をくすぐる1台であることは間違いありません。
没入感のあるオールスクリーン
iPhone Xのオールスクリーンは、デバイスとユーザ体験をシームレスにつなぎます。iPhone 8 Plusを超えるディスプレイサイズなので、コンテンツを大画面で楽しめるのがうれしいところ。外出先でも映画やテレビ番組をよく視聴する人におすすめです。
Apple Watchが先行して採用
OLEDディスプレイに馴染みがない人も多いかもしれませんが、実はApple製品ではiPhoneより先にApple Watchシリーズに採用されています。曲面を滑らかに曲がるディスプレイや黒の映える色表現は、iPhone Xだけでなく、Apple Watchでも体験できます。
ディスプレイ比率はよりワイドに
標準的な長方形として対角線の長さを測った場合の画面サイズは5.85インチですが、四隅に丸みを持ったディスプレイのため、実際の表示領域はこれより狭くなります。ディスプレイのアクペクト比率は約2.17:1で、近年のスマートフォンで流行中の2:1よりもやや縦長。iPhone 8/8 Plusは16:9なので、四隅や上部の一部が見切れるとはいえ、縦へのワイド感がより感じられる仕上がりとなっています。
もちろん耐水・防塵にも対応
iPhone 8/8 Plusと同様、iPhone XはIP67等級の防沫/耐水/防塵性能を備えています。iPhone 7/7 Plus以降のiPhoneシリーズには標準装備の仕様となっており、今やiPhoneは場所を選ばずどこでも安心して使えるデバイスになっています。
画面上部は左右に情報を表示
ディスプレイ上部中央にはTrueDepthカメラシステムがあるため、その部分は画面が見切れます。従来のiPhoneでは上部中央に時刻が表示されますが、iPhone Xのホーム画面では表示場所を左に移動。Wi-Fiや携帯電話通信の状態を示すアイコンは、右にまとめて表示される形に変更されました。
オールスクリーンのデメリットは?
コンテンツの一部が欠ける?
大画面で高精細なiPhone Xディスプレイですが、本体上部にはトゥルーデプスカメラシステムがあるため、画面の一部がそれらのセンサ類を避けるような変則的な形をしています。また四隅の曲面に合わせて、ディスプレイも角にまるみを帯びているのも特徴的です。
そこで気になるのが、コンテンツの一部が欠ける問題です。iPhone Xの製品画像を見ると、写真やゲームアプリの背景がトゥルーデプスカメラシステムにかかり、その部分が見切れていることがわかります。気分的な問題ではありますが、こだわりがあるコンテンツほど気になってしまうかもしれません。
変則的なディスプレイの形が、サードパーティ製アプリの操作に支障をきたす可能性はあるのでしょうか? アップルの開発者向けのガイドラインによると、四隅とトゥルーデプスカメラシステムを除いた「セーフエリア(Safe Area)」というガイドが追加されています。それによると、標準のシステム提供の要素を使った一般的なアプリであれば、簡単にレイアウトを調整できるようになっており、操作に問題は起きづらいようです。また、コンテンツ配信サービスによっては、アプリのUI(ユーザインターフェイス)次第で画面表示の見切れ問題も解消される可能性があります。
インターネット上ではさっそくiPhone Xのディスプレイに最適化したクリエイティブなアイデアがシェアされており、一部の開発者たちが盛り上がっています。コンテンツの見切れ問題は、意外とユーザ側の杞憂に終わるかもしれません。
画面割れが心配
ほかに考えられるデメリットといえば、オールスクリーン化による画面割れの問題です。アップルは「これまでスマートフォンに採用された中では最も耐久性のあるガラス」を採用していると発表しましたが、心配であればケースや保護フィルムを活用しましょう。
iPhone Xは前面と背面両方がガラス素材なので、汚れや指紋も気になるところ。撥油コーティングを施してあるため、日常の汚れは簡単に拭き取れますが、ステンレススチールと比べるとどうしても目立ってしまいます。気になる場合は、汚れのつきにくい素材のケースで保護しましょう。
iPhone X特有の画面レイアウト
ディスプレイの四隅とTrueDepthカメラシステム部分が、表示画面上では欠けています。とはいえ、四隅とTrueDepthカメラシステムを除いた箇所に、簡単にレイアウトを合わせられる仕組みが開発者向けに用意されているようです。加えて、「インタラクティブな操作を画面の最下部や角に配置しない」といった注意喚起もなされているため、アプリへの大きな影響はないと考えて構わないでしょう。
コンテンツの一部は非表示に
撮影した写真やビデオは、一部が非表示になるようです。ポートレートライティングなど、プロにも評価される機能がある一方で、このコンテンツが欠ける見せ方は、こだわりのある人ほど受け入れがたい仕様のようにも思います。素人でさほど気にならないのであれば、割り切って使うのもアリでしょう。
横向きの画面表示はどうなる?
開発者向けガイドラインにある「Safe Area」を確認すると、iPhoneを横に持ったときに画面下部にやや余白があることがわかります。これはホーム画面にアクセスするためのインジケータを邪魔しないためのもの。アプリ画面が縮小する印象を受けますが、標準的なレイアウトであれば画面いっぱいに表示されるようです。
AppleCare+も強気の価格
画面割れが心配であれば、iPhone X向けの保証である「AppleCare+ for iPhone X」に加入しましょう。ただし、OLEDディスプレイを採用していることもあり、価格は2万2800円と高額です。その代わり、加入しておけば、画面の損傷は3400円/回のサービス料で最大2回まで受けることができます。ちなみにiPhone 6sからiPhone 8までのAppleCare+は1万4800円(すべて税別)です。
iPhone 8のディスプレイの完成度は?
SEユーザは要チェック
オールスクリーンを採用したiPhone Xは非常に魅力的なデバイスですが、iPhone 8/8プラスのディスプレイでも、これまで以上に美しい視覚体験を十分に味わうことができます。
iPhone 8/8プラスには、iPhone 6s/7シリーズと同様のレティナHDディスプレイが採用されています。基本的なスペックは7シリーズから変更ありませんが、よりナチュラルな色の表現が可能になり、スペックの数値だけでは測りきれない進化を遂げています。レティナディスプレイを搭載したiPhone SEからの買い替えであれば、その色鮮やかな美しさを持つディスプレイに驚くはずです。
価格と照らし合わせると…
また、機種を選ぶうえで避けて通れないのが、購入価格の差です。iPhone Xは64GBモデルが11万2800円、256GBモデルは12万9800円とどちらも大台を突破。256GBモデルにいたっては、12.9インチiPadプロ(Wi-Fi版)の最上位モデルや、13インチMacBookエアを超える価格となりました。一方、iPhone 8であれば64GBモデルが7万8800円から用意されており、最新モデルでも比較的予算を抑えて購入できます(それでも高級スマートフォンの部類ですが…)。
消費税も加えてトータルすると、かなりの出費になりそうなiPhone X。奮発しても余りある魅力が詰まっているのは確かですが、普段使いであれば、iPhone 8/8プラスのスペックでも十分すぎるほど。iPhone Xの妥協で選ぶにはもったいない完成度です。
Xはアクセサリの新調が必要
iPhone X用の純正アクセサリには、シリコン製ケース(4800円)、レザーケース(5800円)、手帳型のレザーフォリオ(1万800円)が用意されています。一方、iPhone 8/8 PlusはiPhone 7/7 Plusの純正アクセサリをそのまま使うことができます。
完成されたディスプレイ
iPhone 8 Plus(左)とiPhone 7 Plusの比較です。iPhone Xのディスプレイは画期的ですが、iPhone 8/8 Plusのディスプレイも業界最高の色精度を誇ります。また、ディスプレイの見え方を環境光に合わせる「TrueToneディスプレイ」機能は、iPhone 7シリーズにはなく、iPhone 8/8 PlusとiPhone Xにのみ採用されています。
8シリーズにはゴールドもあり
iPhone Xの仕上げはシルバーとスペースグレイの2色。一方、iPhone 8/8 Plusではゴールドを含めた3色を展開。どちらもワイヤレス充電に対応したガラス素材のため、高級感のあるデバイスに仕上がっています。
使えるのはiPhone Xだけ! 「アニ文字」でリッチな会話を楽しもう
iPhone Xのみで使える新機能の1つに、顔の表情を絵文字キャラクターに反映する「アニ文字(Animoji)」があります。本体前面上部にあるTrueDepthカメラがA11 Bionicチップと連係して、50以上の異なる筋肉の動きを解析。その表情をパンダやブタ、ロボットなどのキャラクターに反映させることで、自分の表情や声をこれまで以上に豊かな表現で相手に伝えることができます。
この機能を使うには、iPhone Xの標準「メッセージ」アプリで[App Store]ボタンをタップして絵文字を選択。表情と声をカメラとマイクで読み取って、送信するだけです。
アニ文字がiPhone X購入の一番の理由になる人はあまりいないでしょうが、TrueDepthカメラとA11 Bionicチップを使った先進テクノロジーのおもしろさをカジュアルに体験できる機能ではあります。アニ文字でメッセージを送れば、iPhone Xを買った自慢になりますし、Appleの遊び心にノッてみるのも悪くないかもしれません。
最近はiOSアップデートのたびに絵文字が増えていますが、アニ文字ではまず12種類のキャラクターが対応します。犬やネコといったかわいい動物から、ユニコーンやロボットといった個性的なキャラクターまで選択可能。あえて人物絵を外していることから、変身願望をくすぐるチョイスにしているのでしょうか。
アニ文字は独立したアプリではなく、「メッセージ」アプリ内の機能の1つとして使えるようです。アニ文字を受け取った相手は、メッセージ画面上でボイス付きアニメーションを再生して楽しめます。