Apple Watch Series 3のGPS+セルラーモデルは、単体でのモバイル通信機能を搭載。9月22日発売後、オンラインストアでは出荷まで数週間待ちとなるなど、品薄状態が続いている。実際の使い心地はどうか、セルラーモデルを手に入れる価値はあるのか。約3週間の検証をとおして、気になるポイントを深掘りする。
Apple Watch Series 3
【価格】GPS+Cellularモデル:4万5800円~、GPSモデル:3万6800円~(いずれも税別)
Apple Watch Series 3には、モバイル通信できるセルラーモデルと、その機能がないGPSモデルがある。セルラーモデルは、デジタルクラウン(リュウズ)が赤くカラーリングされているのが特徴だ。LTE・3G通信圏内であれば、ウォッチ単体で通話やSiriの利用、通知の受け取りなどが可能。
ストレスからの解放
実機検証の前にセルラーモデルの新機能についておさらいしよう。最大の特徴は、連係したiPhoneがそばにない環境でも、利用できる機能が増えたことだ。通知の受信や音声通話、Siriなどがウォッチ単体で使えるため、iPhoneを持ち歩かない身軽な状態でちょっとした外出ができるようになった。
ウォッチは本体のサイズが小さく、iPhoneのようにナノSIM(nano SIM)を搭載できないため、SIMカードの情報を読み書きできるeSIMを本体に埋め込んでいる。通信用のアンテナは、ディスプレイ自体を使って送受信するデザインを業界で初めて開発。旧世代とほぼ同じサイズのまま、LTE・3G通信を実現した。
しかし常にモバイル通信を行うわけではなく、連係したiPhoneが近くにあればブルートゥース接続され、ブルートゥースがオフの場合はWi−Fi接続となる。この点は旧シリーズと同じ仕様だ。つまりiPhoneがそばにあれば、モバイル通信に切り替わる機会は少ないと考えてよい。
通信のステータスは、ウォッチのコントロールセンターで確認できる。モバイル通信中には、通信アイコンがグリーンに変わり、受信感度が4段階で表示されるのでわかりやすい。
iPhoneを持たない状況が少ない人にとっては、セルラーモデルはメリットを感じにくいかもしれない。しかし真の価値は、ユーザが通信環境を気にせずとも、ウォッチを自由に使えるようになる点にある。
ウォッチは毎日装着する身近な端末であるぶん、通信環境によってできることが左右されるとストレスが大きい。まさにユーザがデバイスに振り回されている状況だ。しかしウォッチ単体でできる操作が増えれば、iPhoneとの距離感に関係なく、自然にシームレスな体験が可能となる。セルラーモデルによって、iPhoneとの連係を考慮するストレスから解放されるのだ。その安心感こそが、セルラーモデルがもたらす真の価値といえよう。
単体で使える安心感
セルラーモデルのコンセプトは素晴らしいが、実際の使い心地はどうか。約3週間試したが、やはり普段の生活にはiPhoneが欠かせない。モバイル通信を使う機会はそれほど多くないのが実情だ。
セルラーモデルの威力を発揮したのは散歩時だった。筆者は仕事の合間にコンビニへの買い物がてら散歩することがある。そのときiPhoneは持っていかない。時間にして数分~数十分程度だが、帰宅後に通知を知り、それが外出時に済ませられる用事だったりするとがっくり来ていたものだ。
しかしセルラーモデルなら、重要な通知やメッセージもウォッチ単体で受け取れる。ワイヤレスイヤフォンを装着して出かければ、安心して通話も可能だ(イヤフォンなしでもウォッチのスピーカで通話できるが、話の内容が漏れるのは恥ずかしい)。
ランニングでもモバイル通信を試したが、ラン中は通知が届いても画面を注視できない。しかしリアルタイムで通知を確認できる安心感があり、やはり心理的なメリットが大きかった。
10月中には、アップルミュージックのストリーミング再生に対応する。アップルウォッチセルラーモデルは、体に装着するiPodとして、ワークアウトでのより豊かな音楽体験をも可能にするだろう。(文/らいら)
Apple Watch単体で利用できる主な機能
ウォッチ単体で可能となる機能をシリーズごとに比較した。エントリーモデルのシリーズ1は、iPhone併用が前提となる仕様だ。この表はあくまでウォッチ単体で実現できる機能をまとめたものであり、連係したiPhoneが近くにあれば利用できる機能も多いことに注意したい。