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デジタル変革”にもっとも大切な目的の明確化と共有

著者: 福田弘徳

デジタル変革”にもっとも大切な目的の明確化と共有

人工知能(AI)の台頭により、我々の仕事はどんどんテクノロジーによって今後置き換えられていくことが予測される。今まで担当者の豊富な経験や知識を拠り所に行ってきたアナログな業務はAIの台頭によりどんどん省力化・省人化が加速するだろうし、現場のクリエイティブな場面でもAIが高付加価値な提案をしてくれる日もそう遠くはないだろう。

そうした背景を受け、デジタルトランスフォーメーション(デジタルによる変革)を推進する必要性が日本国内でもITベンダーやSIerを中心に騒がれており、企業においてもITシステムによって既存の業務プロセスやワークフロー、自社製品・サービス、そしてビジネスモデルを変革することが求められている。そのため、導入するITシステムが本当に必要なのかを見極める重要性がこれまで以上に増しており、デジタルトランスフォーメーションを推進する人の存在が組織内には不可欠だ。では、ITシステムを提案する側、ITシステムを導入する(提案される)側の両側面から、どのような姿勢でデジタルトランスフォーメーションと向き合うべきかを考えてみたい。

まず、提案側として心懸けるべきなのは、常にその顧客の「課題」が何なのかを考え、その課題解決の先にある「目的」を明確にすることである。ITシステムの導入は企業の経営そのもの。それが故に、ITシステムの導入は経営課題の解決に直結していなければならないし、その顧客のビジネスの成功にコミットしなければならない。提案側の自分たちが一番のユーザであるということを自信を持って言えるぐらいに、導入先の製品・サービスを理解し、使いこなしていることが理想的な状態だ。

一方で、導入側にも求められることは多い。よく散見されるのが、自分たちの業務上の課題について考え抜かれていない企業があることだ。提案側にしてみれば、顧客の課題を定義し、その課題を解決するためのソリューションを検討することはタダではない。単に製品・サービスを購入するだけの話であればインターネットでクリックするだけで済んでしまうが、実際に今の企業が直面する課題は複雑に入り組んでおり、製品・サービスの比較検討・導入だけでは課題解決には結びつかない。

よってITベンダーやSIerは、提案する製品・サービスの機能や導入する価値を伝えるだけに留まらず、その顧客の課題を一緒に考え抜き、解決策を提案することで対価を得ようと尽力している。そのため、ITシステムの導入を成功に結びつけたいのであれば、提案を受ける企業側も課題定義や目的定義を真剣に行うべきだろう。

以前、こんな提案先企業の情報システム担当者がいた。彼はiPhone導入を検討していたのだが、現状の社内システムへのセキュアな接続や運用管理だけではなく、従業員のITリテラシーや働き方をも考慮し、iPhoneの利便性を最大限に活かす管理基盤の構築を考えていた。その一方で、「組織内へのMac導入を検討しているので、いろいろ提案してほしい」といった漠然とした相談事を持ち込んでくる担当者もいた。どちらの企業がスムースかつスマートに導入を成功に導けるかは言うまでもないだろう。

これからのIT導入は、一枚岩で成し遂げられるものでは決してない。組織内のデジタルトランスフォーメーションを加速させ、それぞれの企業が事業を継続していくためには、ITシステムの導入側、提案側のそれぞれが協働して課題解決に向き合い、目的を共有することが大事だ。今後も嫌が応なくデジタル化は進展し、課題や目的を定義することがいっそう難しい世の中になる。そうした状況下の中でも、今の段階から協働してデジタルトランスメーションを起こす下地を作っておければ、未来は決して怖いものではないだろう。

©VLADGRIN

Hironori Fukuda

企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。【URL】www.too.com/apple