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Swift Playgroundsでロボットを動かそう!

著者: 氷川りそな

Swift Playgroundsでロボットを動かそう!

昨年のWWDCで発表され、大きく話題を呼んだiPad用プログラミング学習アプリ「Swift Playgrounds」がアップデート。新機能として6つのベンダーのロボットや電子楽器など外部電子デバイスの制御に対応した。学習のしやすさでも定評のある同アプリだが、新機能の使い心地はどんなものなのか。

ドローンの先駆者であり、業界をリードするParrotは小型モデルの「Mambo(写真)」や「Airborne」「Rolling Spider」といった人気ラインアップが対応する。離陸や着陸はもちろん、転回、宙返り、ホバリングといったドローン特有の動作をプログラミングできめ細かく制御することができる。

Swift Playgrounds

【発売】Apple

【価格】無料

【場所】Mac App Store>教育

【備考】iPad版のみ提供

Parrot Mambo MiniDrone

【発売】Parrot

【価格】1万5000円(税別)

【URL】https://goo.gl/5cPqQy

期待以上の成長曲線

アップルが昨年のWWDCで発表したiPad向けのアプリ「スウィフト・プレイグラウンズ(Swift Playgrounds)」が教育市場で高い注目を集めている。これは、同社が開発・推進を進めている次世代のプログラミング言語「スウィフト(Swift)」のコードを実際に自分で試しながらインタラクティブに体験することができる学生、および初心者向けの学習アプリだ。

その中で提供されている「コードを学ぼう(Learn to Code)」といったコンテンツは、単なる言語としてのスウィフトの学習にとどまらず、開発するうえで欠かせない「プログラミング的思考」といった素養をゲーム感覚で学べる仕組みになっている。こうしたコンテンツをアップル自ら提供しているのも大きなポイントといえる。

このように非常に高い評価を受けるスウィフト・プレイグラウンズは、6月5日にバージョンが1.5へとアップデートされた。その目玉となる新機能としてスウィフト用に提供されたフレームワークによってロボットやドローン、電子楽器といった外部デバイスのコントロールに対応することが発表された。

このアップデートの魅力を高めているのは、対応するベンダーの製品群に間違いない。中でも注目度が高いのはレゴの「マインドストーム」が参入を表明したことだろう。自由に組み立てができるブロック状の玩具、レゴにモータやセンサを加えてロボットや機械を作ることができるマインドストームは、教育市場だけでなくエンジニアリングの研修や製品のプロトタイプ作りにも用いられるほどの信頼と実績があるブランドの1つだからだ。

またレゴのほかにも、さまざまなセンサを内蔵したボール型のスフィロ(Sphero)のロボット「スフィロ」や、小型のドローンとして高い人気を誇るパロット(Parrot)の「マンボ」「エアボーン」「ローリングスパイダー」、関節にモータを持ち歩行やダンスが可能なUBTECHのロボット「ジムロボット」、ライトやスピーカを内蔵し障害物センサも持つワンダーワークショップ(Wonder Workshop)の走行ロボット「ダッシュ」、さらに押したり握ったりといった感覚に反応するダイナミックタッチインターフェイスを搭載したスクーグ(Skoogmusic)の電子楽器「スクーグ」といったデバイスも対応するなど、最初から選択肢が豊富なのも魅力的である。

加えて、今回対応したすべてが「すでに市場にあるもの」でなおかつ「プログラミング環境がすでに提供されている」製品だということは大きな特徴だ。既存のハードウェアユーザが、買い直すことなくスウィフト・プレイグラウンズを導入するだけで試せるメリットは大きく、これは筆者としても高く評価したいポイントといえる。

また、各製品は独自のプラットフォームでプログラミング環境を提供しているにも関わらず、新たにスウィフト向けに制御用フレームワークを提供するという意義も大きい。これはアップルがスウィフトをより汎用的なプログラミング言語として拡充しようという意気込みの表れでもあり、それに賛同するベンダーがすでに動き始めているという現実が、このアプリの可能性の高さを如実に表しているとも言えるだろう。

Swift Playgroundsのメニュータブに[アクセサリ]項目が追加されている。

学習用コンテンツ「Parrot Education」の画面。直感的な操作が可能である。

誰にでもすすめたい楽しさ

実際にスウィフト・プレイグラウンズ1.5のレビューもしてみよう。アプリを起動すると、画面下のタブバーには従来までの項目に加えて新たに[アクセサリ]が増えている。ここをタップして選択すると、対応したデバイス向けの学習マテリアルやテンプレート(自由にコードを書いてデバイスを操作するモード)といったものが表示される仕組みだ。

今回はパロットのドローン「マンボ」を用意し、学習用コンテンツである「パロット・エデュケーション(Parrot Education)」を開いてみた。基本的なデザインは「コードを学ぼう」シリーズを踏襲しており、最初はドローの離着陸や静止といったごく基本的な動作から始まり、ガズ(上昇・下降)やピッチ(前進・後退)、ロール(左右移動)、ヨー(旋回)などのドローン操作に欠かせない操作を扱うコマンドを徐々に覚えていく。

コードの実行は、スウィフト・プレイグラウンズの画面上からすぐに接続することができ、実機の動作を通して正しく動いたかどうかをチェックするスタイルが取られている。操作用のアプリを別途ダウンロードせずに使えるあたりも、徹底した作り込みを感じる仕上がりだ。

パロット・エデュケーションを進めていくと、今まで学んだコマンドを応用して複雑な操作を行う問題が増えてくる。また、特定の繰り返しや複数の動作を束ねて再利用できるようにする「関数」の作成など、プログラミングならではの醍醐味を活用できるものも出題される。こういったプログラミング的思考は「コードを学ぼう」といったほかのコンテンツで学んだ経験を活かせるのもスウィフト・プレイグラウンズの利点だ。

ドローンの操作はこれ以外にもフリップ(宙返り)や速度、アクセサリのグラバー(物を掴める小さなアーム)やカメラ撮影といったハードウェア制御を学んだり、さらにはiPadの加速度センサから得られるフィードバックをコマンドとして使う応用編まで提供される。これだけでもかなりの「やりこみ要素」が詰め込まれており、このコンテンツをすべてクリアできるようになればドローンの制御もプログラミングの腕前もかなり上達するのは間違いないだろう。

このようにかなりの完成度の高さを見せているスウィフト・プレイグラウンズだが、デバイスを持っていないユーザ向けに画面上でテストできるシミュレーションモードが搭載されていないのは残念に感じた。しかし、これも「実機を使ってデバッグをする」という習慣を身につけるという意図だとすれば、正しいアプローチなのだろう。

トータルで見てもこれだけやさしく、かつ効率的にプログラミングを学ぶ環境というはほかに類を見ない。この秋にはスウィフト4.0にも対応するというこの学習アプリ、これから始める初心者向けとしては老若男女問わずおすすめできるクオリティだと評価したい。

Swift Playgrounds対応デバイス例

LEGO MINDSTORM EDUCATION EV3

【発売】LEGO

【価格】5万3040円(税別)

【URL】https://education.lego.com/

ブロッグ玩具としても高い知名度を誇るLEGO。ロボット制御可能な「MINDSTORMS」は20年近い歴史を持っており、モータだけなく光センサやタッチ、回転、音量、温度センサといったオプションも用意されている。現在のEV3バージョンにはUSBやマイクロSDスロットなども備わっており、そのスペックの高さから子どもから趣味人、さらにはプロユースまで幅広い層に支持されている巨大なプラットフォームを形成している。

Sphero SPRK+ Robot

【発売】Sphero

【価格】1万6800円(税別)

【URL】https://goo.gl/2xQCRj

単に転がるだけでなく、方向やスピード、色といった制御ができるボール型ロボットで、子ども向けのプログラミング教材として高い人気を誇っている。Swiftでは内蔵する各種センサを使って、ぶつかったときのアクションなども制御できるようになるなど、より細かな動きまでSwfitを使って操作できるようになる。

UBTECH Jimu Robot Meebot kit

【発売】UBTECH

【価格】1万4800円(税別)

【URL】https://goo.gl/s4VSjV

手足や腰に相当する部分、合計6カ所にロボティックサーボモータが組み込まれた子ども向けロボット。歩行させるだけでなくウェーブや踊りといった動作もプログラム可能。パーツは約200個ある「連結ピース」を組み合わせて構成されており、つなぎ変えることで人型以外の動物にも形状を変えて動かすことができる。

Skoog 2.0

【発売】Skoogmusic

【価格】3万6000円(税別)

【URL】https://goo.gl/YBipY3

「障がいがある子どもたちも楽器が演奏できるように」というコンセプトで作られた、新しいカタチと可能性を秘めた電子楽器。デバイスの触覚センサは押されたときの強さや時間といった複数の情報が取得できるため、これを条件にコードを変化させることで単なる楽器ではなく、発展的な作曲ツールとしても活用できるようになる。