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ソフトバンク回線のMVNO登場でPhoneユーザはどう動くべきか?

著者: 栗原亮

ソフトバンク回線のMVNO登場でPhoneユーザはどう動くべきか?

2017年2月1日、MVNO(仮想移動体通信事業者)の日本通信はソフトバンクとの相互接続が合意に至り、3月22日よりソフトバンク回線を利用した初の本格的な「格安SIM」サービスを提供開始した。これまでドコモ、au回線が主流であった格安SIM業界の新たな動きは、iPhoneユーザにどのようなメリットをもたらすのだろうか。

一部のユーザにメリット

大手キャリアの通信料金に比べ、大幅に低価格なプランを提供することから注目を集めている「格安SIM」。キャリアから通信回線を借り受けるMVNO(仮想移動体通信事業者)の数もサービスの種類も飛躍的に増えたことで、この数年で市場は活況を呈している。

ところが、再販型サービスを含めて600以上ともいわれるMVNOのうち、格安SIM回線として利用されているのはドコモ回線がほとんどだ。そのほかのキャリアはというと、au回線ですら事業者は数社にとどまり、ソフトバンクに至っては一部の例外を除いて格安SIMを提供するMVNOはこれまで事実上存在しなかったといってもよい。ソフトバンクとしては同社の回線を利用するグループ会社の低価格通信サービス「ワイモバイル」があるため、MVNOとの接続に対して消極的であったともいわれている。

もちろん、総務省のSIMロック解除に関するガイドライン改定によって、2015年5月に発売されたモデル、具体的にいうとiPhone 6s、6sプラス以降はソフトバンク版であっても購入から181日が経過すればSIMロック解除の手続きを踏むことで格安SIMに移行できる。だが、それより前のモデルではSIMロックは解除できず、結果的に一部のソフトバンク版iPhoneユーザは回線を選択する自由が制限されていたのが実情だ。

今回、日本通信から発表されたソフトバンクとの相互接続の合意は、こうした状況を打開することになり、iPhone 6、6プラス以前のユーザもSIMロックがかかったままで格安SIMを選べるようになった。

そして、このことは格安SIM業界全体にとっても大きな転機をもたらすとみられる。主要3キャリアが揃ってSIMロックをしたまま格安SIMが選べるようになったことで、現在よりも多くの後発事業者が参入しやすい環境が生まれ、さらなる市場競争がもたらされることが予想されるからだ。

データ専用SIMで開始

とはいえ、日本通信の「bモバイル」やU−NEXTの「U−mobile」は、データ通信SIMのみの提供で、音声通話付きSIMの提供開始時期については現時点では未定だ。なお、今回の合意に至るまでも協議が数年にわたり難航し、日本通信が総務省に対して申し立てを行ってきたという経緯も踏まえると、ほかのキャリアの格安SIM並みの環境が整うには、もうしばらく時間を要するかもしれない。

また、料金面に関しても、ワイモバイルが旧モデルのiPhone 5sとはいえ音声通話込みでかなり低価格なプランを提供しているのを考えると、日本通信やU−NEXTがそれを上回るアドバンテージを得るとはにわかに考えにくい。もちろん、ユーザの選択肢が増えたことは歓迎すべき事態であり、業界の変革に向けた第一歩であるのは間違いないだろう。

b-mobile S 開幕SIMの提供プランは4タイプ、開始当初は音声通話やSMSをサポートしない。U-mobile Sについてもほぼ同じプラン構成となっている。

日本通信自体はすでに法人市場にシフトしている。ソフトバンク回線の接続にこだわったのは、業務用の「2SIMルータ」などドコモのバックアップ回線が必要だったという同社の事情が関係しているとの見方もある。

ソフトバンクグループのヤフーが運営する「ワイモバイル」は、iPhone 5s限定だがキャンペーン価格が格安SIM並みのプランを提供しており、実質的にはMVNOとしての役割を担ってきた経緯がある。また、店舗や店頭窓口を設置するなどサポート面での優位性もある。

日本通信によると、ドコモのMVNO浸透率15.5%を想定した場合、ソフトバンク回線のMVNO SIMの潜在需要は427万になると見積もっている。だが、この数値にはワイモバイルの利用数は含まれていないほか、実際にMVNO利用者を獲得できるかは不透明だ。