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2017年のAppleは、 どうなる?【Apple Watch/Service/Siri/Campus編】

著者: 山下洋一

2017年のAppleは、 どうなる?【Apple Watch/Service/Siri/Campus編】

【Apple Watch】モバイルデータ対応とヘルスケア強化に注目

スマートウォッチ市場

スマートウォッチに人々が興奮した2015年が終わり、2016年中頃からスマートウォッチメーカーは厳しい現実に直面した。多くが販売台数を落とし、グーグルはアンドロイドウェア2.0のリリースを延期した。そうした中、アップルは大きなシェアを維持し続けている。フォームファクタの厳しい制約の中でも、今使える技術でアップルウォッチを便利なデバイスに仕上げており、GPSや防水機能を搭載してフィットネス向けに強化したシリーズ2も好評を得ている。今日のスマートウォッチで可能なことをもっとも活用できるのがフィットネスであり、そこを巧みに狙ったアップルの戦略勝ちだったとも言える。

アップルが「もっともパーソナルなデバイス」と言うように、アップルウォッチは大きな可能性を秘める。だが、その開花は、チップセット、ディスプレイ、バッテリなど、あらゆる技術の成長と共にある。全体的には二年目の落ち込みとなったスマートウォッチが再成長するカギとして、アナリストの多くがモバイルデータ対応を挙げる。スマートフォンからの独立によって、スマートウォッチの可能性が広がる。ただし電力の問題など実装のハードルは高い。モバイルデータ対応の前に、アップルウォッチ単体で再生できる音楽を増やすストレージの拡大というステップを踏むかもしれない。もう1つ、アップルが力を注ぐヘルス関連のデータ収集として睡眠トラッキングが実現するかも今年の注目点になる。

飛び交う次世代製品の噂

次世代アップルウォッチのスペックや搭載機能については、特許や買収の情報から、マイクロLEDの採用やフロントカメラの搭載、マルチ機能バンドなどさまざまな予想が飛び交っている。

 

【Service】オリジナル映像コンテンツの製作開始が始まる?

フォーチュン100規模に成長

iPhone、iPad、Macが数字を落とした中、2016年度はサービスの成長が際立っていた。売上高は前年度比22%増の243億ドルで、iPhoneに次ぐ事業へ。このまま成長すれば2017年度にはサービスだけでフォーチュン100入りを達成する。

アップルはこれまでハードウェアから収益を上げる企業と見なされ、サービスは軽視されていたが、、昨年は数多くのアナリストがサービスの伸びから同社を評価した。スマートフォン市場が飽和し、買い替えサイクルが長期化する中で、サービスは新たな収益源になるほか、他のプラットフォームへの乗り換えを抑止する。アップルのサービスの伸びは「アップルの体験」がユーザに評価され、ユーザが定着していることを示している。加えて、アップルのサービスは利益率が高い。各種ハードとの相乗効果が快適な体験を生み出し、ハロー効果も重なって効率的にユーザを獲得できるためマーケティング費用を抑えられるからだ。

そうしたチャンスはパートナーや開発者、アーティストにももたらされている。昨年、任天堂がアップストア限定で「スーパーマリオラン」をリリースし、同社の携帯ゲーム本格参入を成功させたのは記憶に新しい。

2017年にはアップルがオリジナル映像コンテンツを提供する計画があり、テレビや映画の世界にも同社のサービス効果がより深く浸透することが予想される。

2000万人を超えたストア

アップルのサービスの稼ぎ頭はアップストア、そして18カ月で契約者数が2000万人を超えたアップルミュージック、ほかにはアップルペイ、iTunesストア、アップルケアなどがある。

 

【Siri】英ボーカルIQ社を買収、その対話技術が隠し球?

Siriの会話力が飛躍的に向上

昨年はグーグルやマイクロソフト、アマゾンなどが人工知能(AI)の活用を猛烈にアピールしたのに対し、アップルはやや控えめだった。AIを重視していることに変わりはないが、AIは優れた製品やサービスを実現するためのテクノロジーの1つというのが同社の姿勢である。とはいえ、AIの効果を実感できる製品やサービスはまだ少なく、Siriの成長ペースは遅い。新たなデジタルアシスタントデバイスとして急成長しているスマートスピーカにアップルは進出していない。

一方で、ここ数年アップルはAI関連の買収を積極的に繰り返しており、同社は将来性が期待されるテクノロジーと優れた人材を数多く揃えている。中でも注目されているのが一昨年に買収した英ボーカルIQ。同社は自己学習型の対話技術を開発している。人との会話を通じて学習し、コンテキストを理解した自然なやりとりを可能にする。たとえば、「駐車場があって、子連れOKのネットが使える中華レストランを探して」というような複雑な文章にも正確に答えられる。「やっぱりイタリアンで」というような変更にも、残りの条件を踏まえて答える。

人同士が会話で意思疎通するように、対話を通じて自然にシリがユーザを理解するレベルに成長してこそ、音声が本当の意味でインターフェイスとして機能するようになる。それが実現したら、スマートスピーカのような画面のないデバイスや車向けプラットフォームへの展開も開けてくる。

価値が高まるAirPods

iOSデバイスと接続してSiriを利用できるエアポッズ。Siriとの会話だけでiOSデバイスを制御できるようになったらSiriとのインターフェイスとしてエアポッズの価値が高まりそうだ。

 

【Campus】働き方改革に一石を投じる

http://www.cupertino.org/

キャンパス2で働き方に改革

いよいよアップルの新キャンパスが完成する。クパチーノ市が公開している情報によると、第1四半期に社屋の建築や道路の整備が完了し、第2四半期に造園作業も終わる。

アップルキャンパス2は、ガラス張りの巨大なリングのようなメインビルから「スペースシップ」とも呼ばれるが、実際には宇宙船のような雰囲気ではない。建造物と自然空間の融合が持ち味だ。設計を手がけたフォスター・アンド・パートナーズによると、デザインの始まりはドーナッツ型のビルではなかった。スティーブ・ジョブズ氏が幼少時代に過ごしたカリフォルニアの風景を思わせる場所を望み、大きな公園とビルというアイデアを形にした。

シリコンバレーの社屋というと、充実した社食やカフェ、くつろげるリビングスペース、ジムなど、住み込めるような環境で知られる。ところが、そんな快適な内部とは対照的に、建築的な特色はなく、外から見たら殺風景なオフィスビルばかりである。悪く言うと、周囲の環境から遮断され、社員がそれぞれの生活を忘れてオーバーワークしてしまうようなオフィスだ。

社屋の中心に大きな公園があり、自然環境と融合したキャンパス2はコミュニティ色が強く、アップルの目指す事業やグループの垣根を越えた交流が深まりそうだ。近年アップルは環境対策やプライバシー保護など、社会的な問題において自らの行動でソリューションを示しているが、キャンパス2で働き方の改革にも一石を投じそうだ。

自然空間との融合がテーマ

全体の広さは東京ドーム約5.5個分の約26万平方メートル、必要な電力をすべて再生可能エネルギーで賄い、一年の大半を自然の空調で過ごせるなど、環境対策のモデル都市のようなキャンパスだ。