やっぱり今年は鳥デショ
一説によれば、人の老いと「花鳥風月」という言葉はリンクしているらしい。人は歳をとるとまず花を愛でるようになり、次に鳥のさえずりに耳を傾けるようになる。そして風や月を題材に詩歌を詠むのだとか。この「花鳥風月=老いの順番」説はいささか眉唾ものだが、イケイケドンドンだった若い頃に比べると、身も心もおっさんになるにつれ、好みが枯れていくのは間違いない。
よくいわれるように、演歌が沁みるようになり、般若心経を唱えてみたくなる。逆に、若い頃好きだった音楽が少し耳障りに感じるようにもなってきた。総じて動よりも静、生よりも死に、シンパシーを抱きがちになっている気がする。とうの昔に、人生の復路に突入しているワタクシとしては、そろそろ本格的に「花鳥風月」にハマってもいい頃だなと思ったのですが…。
実は「花」に関しては、以前この連載でも一度取り上げている。そのときは、花認識機能を持った図鑑アプリ「花しらべ」を紹介したのだが、その際ワタクシは「花よりも鳥認識がほしい。普段、町で見かける鳥の名前が気になってしかたない」と書いた。そうワタクシは花より団子ならぬ鳥派なのだ。
「花」には今ひとつハマりきれなかったが、ならば順番でいっても今回は「鳥」。しかも今年の干支が「鳥」 (正しくは「酉」だけど)とくれば、これはもう鳥アプリを取り上げるしかないデショ。
どこでも(一人)野鳥の会
そして選んだのが「動く 野鳥コレクション」である。その名のとおり、500本ものオリジナル野鳥動画を見ることができる図鑑アプリだ。これがあれば、いつでもどこでも手軽に野鳥観察(バードウォッチング)気分が味わえる。
ちなみに日本には約600種もの野鳥がいるらしい。また、バードウォッチング人口は100万人ともいわれ、アウトドアホビーの中でももっともポピュラーなものの1つになっている。
バードウォッチングの発祥の地は英国で、日本では1934年に「日本野鳥の会」を作った中西悟堂らによって提唱されたのが始まりだ。日本野鳥の会といえば、昭和世代にはNHK紅白歌合戦の印象が強い。観客が紅、白どちらに挙手したか、人数をカウントする役を担った日本野鳥の会のメンバーが、日頃の野鳥観察で鍛えた(?)視力と集中力を駆使して見事に数え上げる。そのパフォーマンスが当時お茶の間で話題を呼び、現在も続いている。もっとも日本野鳥の会が紅白に登場したのは6回だけで、あとは麻布大学野鳥研究部が務めているのだが。それはともかく日本野鳥の会が紅白に出たことで、バードウォッチングの認知度が飛躍的に高まったのである。
話をアプリに戻すと、今回のアプリに収められている動画は、1本1本はとても短いのだが、野鳥の生態が間近に感じられるものが多く、見応えがある。たとえば、繁華街で群れをなして騒音と糞害を撒き散らす憎きムクドリ。存在は知っているけど、いつも高所にいるので間近で見たことがない人も多いだろう。このムクドリが水辺で遊ぶ動画は秀逸だ。普段の悪いイメージと違って、意外に可愛気あるその姿に印象がガラリと変わるに違いない。
ほかにも、今やカフェができるほど人気のフクロウも当然見ることができるが、ワタクシのお気に入りは「渓流の宝石」とも呼ばれるカワセミだ。コバルトブルーとオレンジの配色がとにかく美しい。フォルムもいい。特に、500系新幹線のノースデザインにも酷似する長いくちばしがカッコイイ。できれば飼いたいぐらいだが、野鳥の捕獲、飼育は法律で禁止されている。ここはやはり、アプリで我慢しておこう。
カード形式のユーザインターフェイスを採用。コレクションしていくことで、図鑑として充実していく成長型アプリ。カードには、主に日本で見られる野鳥の動画が、データとともに収録されている。ほかでは見られないユニークな動画が多く、鳥好きにはたまらないだろう。ダウンロードは無料だが、アプリ内課金あり。